#119.カミラの過去と時計塔の鐘
<改訂履歴>
・以下の文章を削除して、前後の文を修正しました。
『そう、これで、一緒にウィンター地方に旅行した、女性陣全員から告白を受けた。』
※変更事由:すみません、マリアからの告白エピソードがまだでした。失礼しました。(2022/6/11)
別荘に戻ると、リリアンが朝食の準備をしてくれていた。
温かいパンに、スクランブルエッグ、サラダにコンソメスープ。
どれもが一級品だった。
「いつも、ありがとう。」
僕はリリアンに声をかける。
「ううん。だって、これくらいしかみんなの役に立てないし・・・・・。」
決まって、そんな感じのセリフが返ってくるが、いやいや。十分それが役に立っているのだ。
「リリアンも自信持ったら・・・・・・。」
ミランダが声をかける。
「そうなのかな。」
もちろんそうだ。料理や錬金術はものすごく上手い。
素晴らしい味だった。
「そういえば、今日の翔太朗君は昨日よりも元気になっていてよかった。」
リリアンは話題を変えて言った。
まあ、ミランダやシロンとユキナのおかげなのだが。
改めてみると、リリアンは元アイドルというプロポーションと、家庭的という、本当にすごい女性だ。
一緒の学級に居て本当に良かったと思う。
彼女の魅力に気づけたのだ。
もちろん、ルカやほかの皆もそうだ。
さて、食事を終えると、カミラさんが立ち上がった。
「翔太朗殿、体が訛るから、修業だ。一緒に立ち会え。」
カミラさんが、外へ行くぞという合図だったので、僕は指示されたとおりに外へ出る。
外へ出ると、カミラさんと二人きりだ。
「他の皆は良いのですか?」
僕はカミラさんに問いかけるが。
「いいのさ。今日は翔太朗殿と鍛錬だ。近衛隊長としてのな。」
カミラさんはそういうと、前へ前へと進んでいく。
やってきたのは、昨日ルカと一緒に出掛けた湖の傍だった。
ルカと一緒に居たのは、昨日の出来事なのだが、なんだろう。かなり前だった気がする。
リリアンにシロンとユキナ、さらにミランダが、こうして僕に思いを告げたのだった。
「さあ、始めるぞ!!」
カミラさんは僕の方を向いた。
こうして、一緒に修業や鍛錬をするのはほぼ毎日のようにやっているが、それよりもセントアリアのいろいろな行事で得る刺激の方が最近、とても強かった。
カミラさんの『炎の鉄拳』の魔法は、周りの雪を溶かしていくような勢いだ。
いやむしろ、周りの木々についていた、雪は溶けており、そのまま木々の肌が現れていた。
鍛錬や修行が慣れていくにつれ、炎の勢いが増してきている。
それにこたえるように僕も応戦していく。
風魔法で、一気に、炎の威力を弱めて、こちらも拳を入れていく。
風魔法は、さらに火の粉が飛ぶように促して、遠くの雪も少し溶けていく。
炎の魔法は、当然、水の魔法が有効だ。
湖の傍へ促すように、カミラさんの拳を受け止めて・・・・・・。
湖を背にして、湖のギリギリのところまでやってきた。
「『ウォータサイクロン』!!」
風と水の複合魔法を打ち込む。
カミラさんの炎の威力が弱くなったところで、試合終了。
「ははは。強くなったな。翔太朗殿。」
カミラさんはため息をつく。
「でもな。翔太朗殿。私だから、いいが本番は最後まで油断するなよ。」
カミラさんはそう言って、手を広げる。
するとこれまでのカミラさんが使ったことがなかった魔法陣が現れた。
湖の水が水の球になって、勢いよくこちらへ襲ってくる。
だが、パーン!!
と、水の球は僕に襲ってくる、数メートル手前で割れてしまった。
「水属性魔法。しかもこういう、遠距離攻撃の魔法。カミラさんが使うの、初めて見ました。」
僕は水属性魔法を使うカミラさんを見た。
「そうだな。これを自分以外の人に見せたのは、翔太朗殿、お前が初めてだ。」
カミラさんは言った。
「前に、言ったよな。私の実家は海に面していて、父も漁師だったって。そして、ずっと私の実家は漁師の家系だった。」
確かに聞いたことがある。漁師の家だって。
まさかさっき、水の球が破裂したのは・・・・・・。
「・・・・・苦手なんですね。水魔法。」
僕はカミラさんに恐る恐る聞いた。
「・・・ああ。少しな。」
カミラさんはそれに答える。
「漁師、海に出るので、水魔法は出来て当然というような感じでな。小さい頃は、ずっと水魔法の修業をしていた。だが、周りの兄弟。近所の子供たちと大きく習得が遅れてな。私は、ほかの属性の魔法、つまり、炎の魔法を習得する方が得意だったんだ。だから気付いてしまった。『水魔法が苦手』ということにな。」
カミラさんはそう言いながら、昔を振りかえるように言った。
「それが、実家ともめごとになって、ついに、私は家を飛び出した。そうして、冒険者として活躍して、モナリオ家の執事長のアレックスに拾われた。だが、家を飛び出してから、水魔法は少し習得が遅いということも気づいてしまった。だから両親も根気強く育ててくれたということを初めて知った。だが、それに気づくのはとてもじゃないが遅かった。」
なるほど、そんなことがあったのか。
確かに、そうなのかもしれない、『苦手』というかは、『少し習得が遅い』という方が、ニュアンスとしては間違っていない。先ほどの水の球の魔法も、もう少し距離が近ければ、ことごとく命中していただろう。
カミラさんの話に、いろいろと頷ける。僕と似たような部分がある。
「その後、ご実家とは・・・・・。」
僕はカミラさんに聞いてみた。
「家を飛び出したことについて、素直に謝りに行きたいと思うようになった。つい最近な。」
少しほっとする。カミラさんの目も笑っている。だが、少し緊張もしている。
「その最近というのはな。翔太朗殿、お前と出会ってからなんだ。」
カミラさんが改めて僕の方を向く。
「家族に捨てられ、しかし、それでもひたむきに、ひたむきに修業をして、皆に認められるように、頑張っている。この学級の、いいや、この世界人々の大半は、家族に愛されて育つ。私も、『水魔法が苦手』というだけで、本当のところは、兄弟や近所の友達とはだれとでも仲良くして、分け隔てなく接してくれた。しかし、翔太朗殿は話を聞いていて、とても違う。本当はとてもつらいのに、それでも、何かきっかけをつかもうとするのは立派なことだ。だからみんな、好きになるのだろう。私もだ・・・・。」
カミラさんの言葉に少し、息を飲む。
僕はそんな、モナリオ家の皆と出会えて嬉しいし、それに応えようとしていただけなのに・・・・・。
「僕はただ、今がとても楽しいだけです。モナリオ家の皆さんと出会えてうれしいし・・・・・。」
「ああ。わかっているさ。私の実家に行くときは、翔太朗殿、お前も一緒だ。いいや、一緒に来てほしい。私も、お前のことが好きだ。」
カミラさんの言葉に衝撃を受ける。
「そ、そんな、ありがとうございます。でも。」
カミラさんは僕の肩に手を置く。
「ああ。事情は分かっているさ。それに、私は、ずっと年上だ。ただ、実家に謝りに行くときに一緒に行ってくれればそれでいいさ。誰と生きるかは、君のすべてにかかわることだ。ゆっくり決めるといい。」
カミラさんは肩から手を放す。
「さあ、戻るぞ。翔太朗殿。」
そういって、僕たちは再び、ウィンター家の別荘へ戻っていった。
別荘に戻り、昼食を済ませると八重からお話が合った。
「翔太朗君。私とお出かけしませんか。ウィンター地方をいろいろと見てみたいのです。」
八重の誘いに断り切れなかった。
当然だが、この時も周りに誰もいなかった。
八重とともに、ウィンター地方の街の中へと入っていく。
「久しぶりだね。こうして二人でお出かけをするのは・・・・・。」
八重は僕に向かって言う。
確かにそうだ。
むしろセントアリアでこうして二人で出かけるのは初めてだろう。
基本的に八重が行くところは全て、城の人間が付いているし、僕たちの学級の皆も近衛兵として付いていった。
そして、今日も近衛兵ということで、半分八重の護衛のようなものなのだが、僕たちは同じ学級の仲間でもある。そこまで緊張はない。
町の中は年越しということで、少しにぎわっている。
「どこに行こうか。」
僕は八重に聞いてみる。
今さらだが、風ノ里からの唯一の友達だ。
あまり無理して敬語を使う必要はない。公の場を覗いてはだが。
「そうだね。一通り、これがウィンター地方というのを見てみたい。こっちに視察に行くことはなかったから。」
八重がそういうので、ウィンター地方を見ることに。
確か、ここは工房とかが有名だったよな。
辺りを見回すと、いろいろと工房が立ち並ぶ通りが存在したので、そこへ行ってみる。
その中の一つに、ガラス細工が置かれている。
ガラス工房か。ガラス細工の他にも、食器などが置かれている。
「もしや姫様では。」
ガラス工房の職人が僕たちに気付く。
「はい。こんにちは。」
僕と八重は職人に頭を下げる。
「これはようこそいらっしゃいました。見て行ってください。」
職人は工房の中を案内してくれる。
案内された工房の中には作業台がいくつかある。
レンガ造りの内装で、大きな釜戸のようなものが置いてある。
「ここで基本は炎でガラスを溶かしながら作成していきます。細かい作業をするときはこちらを使いますね。」
なるほど、金属でできた、丈夫な作業台に、炎の魔法を使って、見えるところで実施するのか。
「ガラスは炎が命ですからね。」
職人はそう言って、工房の中、いろいろな試作品を含めた、自分の作品を見せてくれた。
どれも、本当に綺麗な作品だ。吸い込まれそう。
「吸い込まれそうだね。八重。」
僕は素直に感想を言う。
「はい。とても綺麗です。鮮やかで、美しくて。」
八重は少し、無邪気になる。このセントアリアに来てから、ずっと緊張気味だったのだろう。
少し息抜きができたのだろうか。
「いや~どうもありがとうございました。またぜひお越しください。」
職人に見送られ、ガラス工房を後にする。
ほかの工房にも立ち寄り、工房の前に展示されている、作品に見とれては、職人たちに姫と近衛隊長と気づかれ、中を案内される繰り返しだった。
やがて、僕たちは、町の中心部。時計塔にたどり着く。
「すごく大きいね。」
八重が無邪気に笑う。
「そうだね。圧倒される。本当にすごい。」
その時、時計塔の扉が開く。
「これは、これは、姫様。ようこそお越しくださいました。」
八重は人気者だった。
それもそうだ。即位式で八重の顔はセントアリア全国に知れ渡っている。
「今掃除を終えたばかりです。そして、これから、時刻を告げる鐘を鳴らすのですが、傍でご覧になられますか。」
時計塔の管理人は、老人の男性だったが、これまた威勢のいい人物だった。
「ぜひお願いします。」
八重は二つ返事で、頭を下げた。
「おお、それはよかった。さあさあ、こちらです。そちらの方は魔道武術大会に出場していた。『鷲眼の術』の近衛隊長様ですね。貴方様もどうぞ。」
僕のことも知っているようで、とても嬉しかった。
「ありがとうございます。僕のことも知っててくれて嬉しいです。」
少し照れながら、言った。
「何を申しますか。年寄りになると、こう、水晶玉で見る。ライブ中継がとても楽しみで楽しみで。今年の魔道武術大会も最高でしたよ。来年は姫様も参加されるということで、是非優勝を。」
そういいながら、老人は時計塔の中へ入っていく。
僕たちもそれに続く。
螺旋階段を登っていく。階段の中心には時計の原動力にでもなるのだろう、大きな歯車が、常に動いていた。
それを囲うかのように螺旋階段は存在している。
そうして、螺旋階段を登り終えるとそこには大きな鐘があった。
「大きな音、大丈夫だろうか。」
僕は少し不安になる。町中に知らせる鐘だ。かなり大きな音がする。
「大丈夫ですよ。綺麗な音です。」
確かにそうだ。遠くに居ても綺麗な鐘の音が、時刻を告げてくれていたではないか。
そのきれいな音を期待する。
「では、行きますよ。」
老人は時計の時刻を確認して、鐘を鳴らした。
確かに傍に居ると大きな音だったが、とても綺麗な響きだった。
「いつもお一人で、掃除だったり、鐘を鳴らしているのですか。」
八重は老人に聞く。
「とんでもない、交代でやっているよ。儂の体も持たないですしね。儂の担当の日にようこそおいでくださった。さあさあ、あちらに行ってみなされ、この町が見渡せますよ。そろそろ、夕日が見れる頃ですかな。」
老人に言われた通り、外が見える場所へ移動する。
そこはとてつもない絶景だった。
「綺麗。」
僕はつぶやく。
「綺麗。とっても。」
八重も同じように、言った。
そして、八重は深呼吸をする。
「私、翔太朗君のこと。好き。一緒に、この国を守っていきたい。私と結婚を前提にお付き合いしてほしいです。」
八重は一気に言った。言った後、僕に思いを告げた後、顔が真っ赤になっていた。
「ありがとう。八重。でも、ごめん、返事はまだできないや。」
僕は、正直な気持ちを伝えた。
ずっと前から、風ノ里の時から一緒にいるからだろうか。僕は何も緊張せずに、八重に伝えることができた。
「うん。そうだと思う。翔太朗君は思いっきり悩んでいいよ。でも、私は変わらない。ずっと、風ノ里の時から、私のことをわかってくれていた。そんな翔太朗君に応えたかった。ただ、それだけ。ただ、それだけのことなんだけど、心が震える。」
八重はまだ、ドキドキしている。
「ありがとう。僕も、八重がこの先も、ずっと一緒にいてくれることに安心しています。そこは変わらないから、どんなことがあっても、八重の近衛兵で、近衛隊長で居させてほしい。」
僕は、素直に、自分の気持ちを伝えることができた。
そして、今までの告白されたリアクションの中で、一番素直になれた気がする。
「もちろん。」
八重も素直に頷いた。
お互いに、ありがとう、とお礼を言って、老人に見送られ、時計塔を後にした。
そろそろ、夕食の時間だろう。
僕と八重は急いで、ウィンター家の別荘に戻っていった。
今回も最後まで、ご覧いただき、ありがとうございました。
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