#117.秘密の場所とクッキー作り
ルカの離れに僕たちは荷物を置いて、ゆっくりし始めた。
すると、ルカがやってきて。
「翔太朗君はウィンター地方、初めてだよね。」
ルカが笑顔で尋ねる。
「そうだけど。」
「そうしたら、日が明るいので案内するよ。」
ルカは僕に言うが。
「そしたら、皆を呼んでこないとだよね。」
僕は言ったが。
「あたしは、パスで。」
「私も。」
「私ももう少しゆっくりしたいです。」
そんな声が多く。
「と、言うことだ。翔太朗殿、ルカ。二人で行ってこい。」
とカミラさんに言われてしまい。
「二人で良いの?」
と僕はみんなとルカに向かって言ったが、全員満場一致でこくりと頷く。
「そういうことみたいだから、翔太朗君。二人で出かけよっか。」
ルカがそう言ったので、僕は頷き、ウィンター家の離れ、つまり別荘を出て行く。
別荘から丘を下って町へ行くと思ったが、ルカは町とは反対方向、丘の上の林の中へと案内する。
「こっちだよ。」
ルカは僕に手招きをする。
「折角だから、2人きりということなので、僕のお気に入りの場所に案内するね。」
ルカは、そういって、林の中へと僕を案内する。
あたり一面は雪に覆われている。
そこまで積もってはいないが、銀世界が印象的だ。
ルカは、木の幹を叩いて雪を落とす。
少し白い木の幹。
セントアリアや風ノ里では見ない木だった。
「これが、父上の言っていた、白樺の木。珍しいよね。標高が高いところや寒いところに生息している気だから。少し珍しいよね。」
僕は頷く。珍しい景色でとても綺麗だ。
その白樺林を抜けると、湖が広がる。
冬の湖。少し湖面が凍っている箇所がある。
「あまり湖面に行かない方がいいよ。すぐに氷が割れるからね。」
とルカに言われたので、僕はルカのいう通りにした。
湖の景色はとても綺麗だった。
「ここは僕が剣の稽古をよくしていたところなんだ。小さいころからのお気に入りの場所。剣の稽古はもちろん、女性らしくいられる唯一の場所かな。」
湖の氷と、太陽の光が照らされ、さらに美しく輝く。
夏場の青い湖も最高の景色なのだろう。だけれども。
「冬場の湖もとても綺麗だ。林を抜けたところにある、素敵な場所だね。人も来ないで静かだし。」
「ありがとう。そういってもらえると嬉しいな。」
ルカは僕に向かって言った。
「翔太朗君・・・・・・。」
ルカは僕に向かって声をかける。顔を赤くしながら。
「この場所の力を借りて、女の子として、僕は君に話がしたいんだ。」
普段は兄たちの影響で、男性のようにふるまうルカ。だが、ここにいるルカはまさしく女性だった。
ルカは勇気を振り絞る。そして。
「翔太朗君、僕は、翔太朗君のことが好きです。僕と、ううん。私とお付き合いしてほしい。」
ルカの言葉に、僕は耳を疑う。
息を飲む。そして。
「えっ!!」
僕は驚いた。初めてだ。人からそんな風に言われるのは。つまり人から告白されるのは。
「その、ありがとう。ルカ。でも、ごめん、僕、あまり恋愛というもの、好きな人がいるということが全然わからない。風ノ里に居たときも、僕は独りぼっちだったし。こっちの大陸に来てからも、僕は魔法の修業に必死で・・・・・。」
僕は、正直な気持ちを伝えた。
「そうなんだね。そしたら、これから一緒に、ドキドキすることを一緒にやっていけばいいよ。二人で一緒に思い出を作りたいな。」
ルカは優しく微笑む。
「その、ありがとう。でも、ごめんすぐに、お返事できないや。」
僕の正直な気持ちをルカに話す。
「もちろんだよ。というか、お返事は、年が明けるまで待つことになっているから。年内、残り少ないけれど、考えてくれると嬉しいな。」
ルカからの言葉に、僕は安堵する。
「ありがとう。本当にごめん、ルカ。」
僕はルカに頭を下げる。僕にもう少し恋の知識があればいいのにと後悔している。
「いいよ。こっちこそ、ありがとう。じゃあ、戻ろっか。」
ルカが手を差し伸べてくれた。
僕はルカの手をつないで、林の中を戻り、泊っている、ウィンター家の別荘へと戻ってきた。
「じゃ、僕は、外で、剣の修業をしてくるから、ゆっくりしててね。わからないことがあれば、いつでも聞いて。」
ルカはそう言って、僕を別荘まで送り届けた後、そそくさと、さっきまで居た湖の方へ戻っていった。
僕も追いかけようとしたが、別荘の玄関の扉が開き。
「翔太朗君、戻ってきたんだ。少し手伝ってくれる。」
リリアンに呼び止められ、僕は別荘に入っていった。
リリアンに連れてこられたのは、別荘の中のキッチンだ。
卵、牛乳、小麦粉、砂糖と、いろいろな材料が並べられている。
「ここ、食べ物ないから、みんなでおやつということで、クッキーを作ろうと思うんだけど、翔太朗君も一緒に手伝ってほしいな。」
リリアンの言葉に、僕は頷く。
「いいけど、料理とかはすごく久しぶりだからな。しかもお菓子はあんまり・・・・・。」
自身がなさそうに僕は言う。
確かに、風ノ里では強制的に食事を作らさせられていたが、モナリオ家に来てから、ポンと料理をしなくなった。しかも、お菓子はあまり作ったことがない。ましてや、東の大陸のクッキーだなんて。
「大丈夫。教えるから。それに、料理の基礎は出来てるはずだし。」
リリアンがウィンクしながら、言った。
「まあ、いいけど、あまり期待しないでね。」
僕はリリアンに向かって言うと。
「ふふふ。ありがとう。」
再び、リリアンがウィンク。
そうして、僕たちはクッキー作りに取り掛かる。
まずは、生地を作る。
「とりあえず、卵と牛乳とバターを混ぜて。そうそう、やっぱりうまいね。翔太朗君。」
リリアンに教えながらも生地が完成する。後はしばらく寝かすだけだ。
リリアンの方は同じような調理法だが、チョコレートを混ぜたもの、そして、イチゴジャムと、メープルシロップ、さらに、ブルーべリーのジャムを混ぜた、いろいろな味のクッキーの生地をそれぞれ作った。
「すごいね。リリアン、短時間で、いろいろな生地ができたね。」
「翔太朗君が、手伝ってくれたからだよ。」
そうして、しばらく生地を寝かし、寝かした生地を薄く伸ばして。いろんな形に型抜きを実施した。
生地を余すところなく、使い、オーブンに入れた。
数分後、こんがり焼けた、おいしそうな香りのするクッキーが出来上がった。
不思議なことに、この別荘のキッチンはクッキーを作っている間、僕とリリアンしか居なかった。
「とりあえず、みんなが来てから食べる分は取っておいて、先に試食がてら二人でお茶しましょう。」
そういって、リリアンは焼けたクッキーの中から、何個かクッキーを取り出して、僕とリリアン用に、お皿に分けた。
そうして、リリアンは収納魔法から、ハーブを取り出し、クッキーとともに、さらに甘い香りのするハーブティーを淹れてくれた。
「「いただきます!!」」
僕たちはそう言って、クッキーと紅茶を堪能した。
リリアンと二人で作ったクッキーはとてもおいしく食べることができた。
「すごくおいしい、ありがとう。リリアン。」
「翔太朗君が手伝ってくれたからだよ。」
ゆっくりと過ごす午後のひと時。
本当に素敵だ。
クッキーを食べ終える。
「どうだったかな。翔太朗君。」
リリアンが聞いてくる。
「ああ、とてもおいしかったよ。すごくゆっくりできた。」
そういいながら、僕は席を立とうとした。
「まって。」
リリアンが僕に言う。
そして、リリアンは僕のところに来た。
彼女は、僕の背中に腕を回し、そのまま僕の体に抱き着いてくる。
それと同時に、彼女の大きな胸が、僕の体に当たってくる。
彼女の胸はとても柔らかい。女の人の、そこは、とても柔らかくて、癒されるものだった。
「しーっ。」
リリアンが僕の目をみて、人差し指を口に当てる。
彼女の着ている服のボタンをはずし、胸の谷間を覗かせる。着ている下着も僕の視界から確認できる。
まずい、下着が、ブラが、見えてる。見えないふりをしないとまずい。
だけれども、リリアンは僕の目に彼女の下着と、胸の谷間が、僕の視界に入っていることを知っているかのようだった。
「驚かして、ごめんね。私も、翔太朗君のこと、大好きなの。付き合ってほしいし、結婚したい。」
リリアンの衝撃の告白に僕は唖然とする。
「えっ、そうなの、でも、僕・・・・・。」
さっき、ルカから告白されたしな。まさか、一日に2人の女性から告白されるなんて。
どうしたらいいのだろう。
「しーっ。」
リリアンは今度は僕の口に、人差し指を当てる。
「ふふふ。翔太朗君が何が言いたいのかは、実は知ってるよ。ゆっくり考えていいの。翔太朗君にとってはあまりにも突然だったし。だからね、私も、新年の最初の日、元日に、翔太朗君の気持ちを知りたいな。」
リリアンは微笑んだ。
そして、彼女は腕を僕の背中から離したのだった。
「そ、その・・・・・。ありがとう。リリアン。」
少し気持ちが楽になったが、それ以上に何か、僕の体温はかなり上がっていた。
少し落ち着いて、僕は、クッキーと紅茶の食器を片付けようとしたが。
「あ、まって。片づけは私がやっておく。翔太朗君は部屋に戻ってて。」
そういいながら、リリアンは僕の背中を押し、部屋に戻るよう促されてしまった。
「あ、そうなの、ありがとう、リリアン。ごめんね。」
「いいの。いいの。気にしないで。その代わり、気持ちのお返事楽しみにしてるね。」
リリアンは微笑んだ。
僕の体は少しだけ熱く。さらに、心はドキドキしていた。
今回も最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。
少しでも続きが気になる方は、是非、ブックマーク登録と、高評価をお願いいたします。




