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#116.年越しの予定


 セントアリア王国の聖夜祭が終われば、この国は、一気に新しい年を迎える準備を行う。

 セディア魔道学院も、聖夜祭から、年末年始の間は冬期休暇となる。


 この冬休み。新しい年まであと数日と迫ったころ。

 僕と八重、ミランダ、マリア、ルカ、リリアン、そしてカミラさん、さらにシロンとユキナ。

 つまり、僕たちの学級の男性二人を除く、僕以外の女性メンバーで、ウィンター地方行の馬車に乗り込んでいた。


 「ドキドキワクワクですね。」

 ミランダが僕に向かって言う。

 「ああ、すごく楽しみ。ありがとうね、ルカ、誘ってくれて。」

 僕は、ルカに向かってお礼を言った。

 周りが女性陣だけというのが緊張するが、女性陣達はそれを気にすることもなく、僕に向かって積極的にさっきから話しかけてくる。


 「いえいえ、来てくれてありがとう。みんなにウィンター地方を紹介出来て、何よりだよ。」



 ことの発端は聖夜祭終了後、冬休みに突入するということで、みんなの冬休みの予定を聞いた。

 「俺は、家族と旅行に出かけるかな。毎年恒例のバローズ商会の忘年会を兼ねて、今年の打ち上げだ。」

 アンソニーは商会の仲間や親せきと集まるらしい。

 「僕も同じような理由だな。父上、母上の両実家と挨拶をして、みんなで新年を祝うかな。後は、父上の師団に参加して、訓練するかな。恒例の、親子、家族水入らずの時だな。ダコタとも会うのは少し気になるのだが。」

 ルーベルトも同じように言い、最後のダコタと会うところは少し気が重そうになった。


 「そうだなあ。僕は年末年始は一応実家に帰る予定だけど・・・・・。あまり集まらないなあ。兄弟が多いし、誰かが休めて挨拶ができても、別の誰かは年末年始にかけて、仕事だからなあ。ちょっと挨拶をしたら、ウィンター家の離れで、ゆっくりトレーニングでもするかな。ある意味、毎年恒例なんだ。実家に帰るたびに、ウィンター家の離れで、1人ゆっくり過ごすの。」

 ルカの家はウィンター地方の領主。兄弟はその周辺を守る兵士たち。年末年始は関係なく忙しいのは納得だ。


 「離れがあるのか、いいなぁ。」

 アンソニーはルカに向かって言った。


 「うん。とてもいいところだよ。僕の兄弟は女の子は僕一人だからね。兄さんたちに振り回されず。ゆっくり過ごせる。実家に帰るたびにそれをしている。」

 ルカは、今年も無事にできたようで、安心している。


 「ルカも女の子なのですね。」

 リリアンが言った。確かに一人称は僕だし、男の子の性格をしているが。


 「ははは。そうだね。」

 ルカは安心しきったような顔で言う。


 「私は、まだ未定です。お父様とお母様の仕事次第。みんなの休暇が合えば旅行やお母様の実家の方挨拶に行きますが・・・・・。」

 ふぅっ、とため息をつくミランダ。

 確かに、ミランダのご両親、アルベルトさんとパメラさんは宮廷につかえる魔導士団の師団長だ。こちらも年末年始は関係ないようだ。

 この様子だと今回の年末年始、つまり冬休みもみんなの休暇が合わなそうな雰囲気だ。

 どうやらモナリオ家はこの埋め合わせをするのに、夏にまとめて休暇を取っているらしい。


 さて、そうなると年末年始の予定もなく、何もすることがないのは僕と八重、マリア、そしてリリアンさらに高確率でミランダだ。

 マリアもドラゴンに育てられたが、山奥に帰る予定はなさそうだった。

 「むしろ、何かあったら、お母様が一気に飛んできます。何かあったら迎えに行くから、人間たちと楽しく暮らせと言われてまして。それに、ドラゴンは私たちと比べて長寿ですから、時の流れの感覚が早く感じるようで。ドラゴンのお祭りやイベントは数年に一度の場合がほとんどでした。」

 なるほど、確かにそれは納得できる。

 おそらく、マリアの育ての母親のエドラさんからすれば、僕たちにとっての年に一度の行事は毎月行われているように感じるのだろう。


 僕も帰る実家は無いに等しい。八重も同じだ。さらにこの時期は王族の仕事はあまりないらしい。王宮に居ても一人、従者の人達と寂しく新年を迎えることになるらしい。

 リリアンもご両親が亡くなり、帝国から亡命してきたのだから、一人寂しくということだろう。


 そして、モナリオ邸に戻ってみれば、案の定、パメラさん、アルベルトさんは年末年始も仕事が入っていた。



 そんな時だった。

 「ウィンター領に一緒に行かない?兄さんたちも仕事でさ、僕一人離れでゆっくりするのもあれだし。アンソニーとルーベルトは予定があるので、女子会でもしない?それに僕たちは近衛兵なのだから、八重姫様も一緒にお守りする兼、視察とかで。」

 ルカがモナリオ邸にやってきた。要件は何かと思うと、開口一番にミランダとリリアンに告げた。

 「すごく嬉しい、ありがとうルカ。勿論行くよ。」

 リリアンははしゃいだように言う。

 「いいですね。女子会楽しそうですね。ただ、翔太朗様が一人になってしまうかと。」

 ミランダは僕の方を見ながら言った。


 「いや、もちろん翔太朗君も来てほしいんだよね。」

 ルカが恥ずかしそうに言った。


 「ミランダ、リリアンちょっといいかな。ああ、そうだ。シロンちゃんとユキナちゃんもいるならこっちに来てもらえると。翔太朗君は悪いけど、ここで待っててもらえる。」

 ルカはミランダ、さらにシロンとユキナを呼び出す。

 僕はルカに言われたとおりに、待つことにした。


みんなで内緒話をしている間、僕は待っていた。


「なるほど、いいですわね。」

 ミランダの声。

「恨みっこなしですよ。」

リリアンの声。

「絶対に負けないんだから!!」

シロンの声。

「私、頑張ります。」

そして最後にユキナの声。


 全員が頷く。どうやら満場一致の意思疎通ができたのだろう。


 「そういえばカミラも同じでしたね。私から伝えておきます。」

 ミランダがそう言った。



 かくして僕たちは、ウィンター地方に向かうことになった。


 そして、ウィンター地方へ向かう馬車に今この状況があるわけである。


 馬車は少し休憩をしながら、王都から北東。ウィンター地方へと歩みを進めた。

 少し雪が降り始める。


 「ここら辺は、雪が多い場所なんだよね。そこまで豪雪地帯というわけではないんだけど、必ず毎年雪が降る場所。」

 ルカが解説をしている。

 そして。


 「さあ、ついたよ。ウィンター地方の中心地。州都とでもいうのかな。名前の通り、ウィンターの町。」

 馬車を降り立つと、雪の中にあるからなのだろうか、優しい明りとレンガ造りの街並みが視界に入ってきた。

 町の中心には大きな時計塔があり、時刻を知らせてくれている。


 温かい街並みだった。

 「温かそうな街並みだね。」

 僕はルカに向かって、町の感想を言ってみた。

 「まあ、ここの場所は寒いからね。冬の方の対策がどうしても重要になるかな。夏も涼しくていいところなんだけどね。ウィンター地方は標高が高く、この町も、高原地帯にあるんだよ。」

 なるほど、高原地帯なら確かに夏は涼しそうだ。


 ルカに案内されて入った場所は。おそらく、この町で時計塔の次に大きな建物だった。

 「ここが僕の実家。」

 なるほど。流石はこの地方の領主だ。モナリオ家に負けず劣らず大きな家だ。

 だが、雪が多い場所なのだろう、家の作りという面ではモナリオ家の屋敷よりも頑丈な作りだった。


 ルカの実家に案内される。

 「お帰りなさいませ。お嬢様。」

 ルカの家の執事が案内してくれる。


 大広間に案内されるとルカの父親がやってきた。


 「父上、ただいま戻りました。年末の挨拶ということで、どうぞ良い新年をお迎えください。」

 「うむ。ルカ、ありがとうな。すまないな。兄たちはみんな仕事ということで、出払っている。どうかルカだけでも、ゆっくりしていってほしい。いつもの離れの準備ができているからな。」

 ルカの父親は優しくルカに語り掛ける。

 彼女こそ、男勝りな人物で、一人称は僕だが、父親から見ればたったひとりの可愛い娘なのだろう。

 この実家にいる間はそれが垣間見える。


 「久しいな。『鷲眼の術』の少年。そしてルカと同じ学級の諸君、よくぞ参られた。歓迎するぞ。我がウィンター地方で銅貨日頃の疲れを癒してほしい。」

 父親は柔らかな笑みを浮かべる。

 魔道武術大会の、モナリオ家での舞踏会以来だ。


 そして、父親は八重の方へと歩み寄る。そして膝まずく。

 「ご挨拶が遅れまして大変申し訳ありません。女王様。我が屋敷へ、我がセントアリア王国、ウィンター地方へようこそお越しくださいました。領主の、アイザック=ウィンターでございます。どうぞ、ルカと学級の皆様と心行くまでお越しください。」


 ルカの父親、アイザックさんは、八重に深々と頭を下げた。


 「ありがとうございます。ここの地方のことはルカからよく聞いています。素敵な場所ですね。私は雪を見るのは初めてなので、すごく。胸が躍っています。」

 八重は挨拶を述べる。


 「もったいなきお言葉でございます。雪の景色をどうぞ心行くまでお楽しみください。しかし雪はとても重く、そして滑りやすいものでもあります。お体に注意してください。そして、次回は夏にまたお越しください。湖の青い景色、白樺林などの自然がたくさんある場所でもございますので。」

 ルカの父親は、頭をあげ、執事に、僕たちを離れに案内させた。


 ルカの家の離れ、つまり別荘は、この町の丘の上にあった。

 木で作られたロッジで、やはりこちらも明るい雰囲気のライトがともされていた。

 「どうぞ、お入りください。足りないものがありましたら、ご連絡ください。」

 執事に案内されると、すでに家の中は準備してくれたようで、温かそうな暖炉とさらに温かそうなベッドがいくつか完備されていた。


 家の窓、そしてバルコニーからは、州都ウィンターの町が一望できた。


 「すごい。すごいよ、ルカ。本当にありがとうね。」

 ミランダが窓からのぞく景色に喜んでいる。

 「ほんと、まるで鷲に戻って、飛んでいるみたい。」

 シロンが続けて言う。


 「気に入ってくれてよかったよ。さて。みんな。準備は良いかな。」

 ルカは僕以外の人物。つまり女性陣達、一人一人の目を見回していった。


 「よし!!それじゃ、始めようか。」

 ルカの号令のがかかる。


 「「「おーっ!!!!」」」

 ルカの号令の下、女性陣達が拳を突き上げる。


 「お、おーっ!!!!」

 僕も、ワンテンポ遅れて拳を突き上げた。


 一体どういう年越しを送るのだろう。楽しみだ。

 


今回も、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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