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#114.みんなの歌詞と予選


 演習の時間になった。

 ピエール先生に、僕たちの班の出し物は、リリアンの歌に決まった、と伝え、みんなで歌詞を考えたものを発表することにした。


 「みんな、ありがとうございます。」

 リリアンは頭を下げた。

 そして、リリアンは母親から伝授されたであろう、収納魔法を使い、キーボードを取り出した。


 「【ブレゾラン娘】の時に使っていた、ピアノです。普段はダンスがメインですが、小ユニットの時はバンドを作って、ピアノをやってました。これで引き語りもできるので、みんなの歌詞をやってみましょう。」

 リリアンの言葉に僕たちは、それぞれの歌詞を見せ合った。


 僕はシロンとユキナと一緒に散歩したときに思い浮かんだ歌詞を見せた。

 


 「♪重いアクセルを全開にして、一歩踏み出し。

  走り出そう、風のように。

  空の彼方を目指す。

 

  さあみてごらん、空の色が変わってきただろう。君の好きな色の空に。

  さあみてごらん、星が、君のことを必要とする、人々の星が輝くよ。


  旅に出てみよう。苦しい時こそ旅に出よう。

  広い空の彼方には、君の味方が待っている。♪」


 みんなから拍手がある。

 「いいね。翔太朗君!!俺ゾクゾクした。」

 アンソニーが言う。


 「うん、純粋でひたむきな翔太朗君にぴったりでしたね。」

 リリアンが僕が歌った歌詞を、早速譜面に起こしてくれる。

 そして、リリアンが改めてピアノを弾いてみる。


 「うん。行けそうだね。」

 リリアンのピアノ伴奏をつけると、こんなにも豪華になるのかと嬉しくなる。


 「さてと、次は、翔太朗君が披露してくれたので、男性陣から行こうかな。」


 リリアンの合図で、男性陣が考えてきた歌詞を披露する。


 「よっしゃー!元気よく行くぞ!!」

 アンソニーが立ち上がる。


 「タイトルは、商売全力疾走!!」


 「♪男たるもの、全力で挑め!!

   商売、仕事、汗水たらして、動くのさ~


   下を向いて、くよくよしても、始まらない。

   誰かにののしられ、やめようとしても、諦めるなよ。


   この町の夕日を見よ、この町の空を見よ!!

   燃えている、燃えている炎のごとく、

   男を見せろ、ど根性

   

   ああ~ああ~、全力商売!!ど根性!!♪」


 根性に満ちた、気迫の歌が鳴り響く。


 「気迫に満ちているな。全力勘が伝わってくる!!」

 「ありがとうございます!!」

 ピエール先生の声にアンソニーは応える。


 「でも、これをリリアンが歌うとなると無理がありそうな。」

 ルカが思ったことを言う。


 「確かにそうですね。リリアンにボーカルとして、出てもらうのですから・・・・・・。」

 ミランダもルカに同情する。

 確かに男ぐさい、演歌チックな歌をリリアンが歌うとなると、もう少し、やわらかい歌詞が必要かもしれない。


 「甘いな、アンソニーよ、僕の歌を聞きたまえ!!」

 ルーベルトが立ち上がる。


 「タイトル、勇気の心」

 ルーベルトがタイトルコールを行い、歌う。


 「♪少年よ、立ち上がれ、騎士たる心をもって

   少年よ、前へ進め、勇気の心もって


   怖い時は祈ればいい、

   怖い時は友が付いてる、


   勇気を出して変えよう、君の人生がばら色となるように。

   勇気を出して変えよう、この町の光が照らすように。


   少年よ、前を向け、

   少年よ、立ち上がれ、

   勇気の心をもって ♪」


 さすがというような、野太い声が響き渡る。

 

 「歌も貴族のたしなみだからね。」

 ルーベルトは毅然として、ふるまう。

 だがその歌詞には炎のような熱いメッセージが込められていた。


 みんなの拍手も喝さいとなる。


 「素晴らしいですわ。ルーベルト!!」

 ミランダも拍手で迎える。


 「ああ、どうしよう。僕もこういう雰囲気の曲なのになあ。同じ騎士をテーマにした歌なんですけど。」

 ルカが少し不安になりながら、立ち上がる。


 「男性陣の発表が終わったから、次は女性陣、行ってみるか!!この勢いで、ルカ、行ってみるかい?」

 ピエール先生に促され、ルカが歌詞を披露する。


 「聞いてください、祈り。」

 ルカが緊張気味に言った。


 「♪今日もあなたは出てゆく、遠き国への戦地に。

   あなたは出てゆく、後姿を見送る私、


   次はいつ帰ってくるの?

   もう、会えないかもしれない。

   次はいつ帰ってくるの?

   涙をこらえて、見送る。


   祈ることしかできない私。

   あなたが無事でありますように。

   祈ることしかできない私。

   どうか、もう一度会えますように。♪」


 感動した。感動して、涙が出てきた。

 騎士の家族や恋人の思う歌か。


 「ジーンときたよ、ルカ。」

 僕は、感動しながら、ルカに言った。


 「あ、ありがとう翔太朗君。」

 ルカは首を振りながら珍しく照れたように言った。


 「に、兄さんたちがいろいろな任務に行くところをいつも見送っていたからな。」

 ルカは、焦りながら、首を振りながら、そう言った。


 「そうだよね。お兄さんたち、すごくカッコいいもんね。」

 僕はルカに言った。

 「そ、そうだよ。兄さんたちは、僕の憧れさ~。」

 ルカは目をそらしながら、半分安心したかのように、言った。


 そういって、深呼吸して、ルカは自分の席に戻った。


 「ルカって、意外と乙女なんですね。」

 ミランダはルカの耳もとで、内緒話をする。

 一気にルカは顔が真っ赤になる。


 「そ、そんなわけないよ。」

 ルカは首を振る。


 「お兄さんたちの祈りの歌でもあるし、翔太朗君に対しての祈りの歌でもあるというのがバレバレだよ~。」

 マリアがさらに内緒話をするかのように、女子トークで盛り上がる。


 「まあ、翔太朗様は、あんな感じで、気付きませんでしたが・・・・。」

 ミランダが僕の方を見つめている。


 「ん?どうしました?ミラ様。」


 「何でもないですよ~。」

 ミランダは、少しそっぽを向いて見せる。


 次はマリアの番だ。

 クレヨン、というタイトルでマリアが歌う。


 「♪クレヨンを取り出して、この世界のすべてを描いてみよう。

   海や山、空と雲、そして雨上がりの虹。


   君と一緒に、描きたい。

   見たものと感じたものを。

   君と一緒に、冒険したい。

   この世界中のすべてを。


   私は、自由になったんだ。

   君と出会って、自由に。


   すべての色のクレヨンで、このすべてを描こう。♪」


 おお、素晴らしい。

 「マリアはずっと、ドラゴンに育てられたからなぁ。人と接する機会が増えるとこのように考えるわけか。」

 「はい、そうですね。魔道学院に来て、感じたことを歌ってみました。」

 マリアは、恥ずかしそうに笑いながら、頭を下げる。

 確かに、マリアの音楽は、どこか懐かしい、クラッシック音楽という感じだった。


 「マリアも、やはり、翔太朗様を意識されたのですね。」

 ミランダがマリアに向かってウィンクする。


 「は、はい。そ、そんなんじゃ、無いですけど、そんな感じです。はい。」

 マリアが、少しおどおどするが、全て歌い終わり笑顔になっていた。



 次は八重の番。

 「おお、王女様のプロデュースですな。」

 アンソニーは得意げになって、八重の方を見る。


 「あの、皆様より、下手なので、あまり気にしないでくださいね。」


 「♪お日様が、迎えてる。光の木漏れ日が。

   君を迎えに来るよ。ドキドキな一日を。


   今日は誰に出会うだろう。

   今日は、何を食べるだろう。


   今日は私と話そう、こっちを向いて、お願い。


   学校でも、君を見てる。

   食事する時、授業の時。

   君の後ろから、君を見つめてる。



   Have a nice day 今日という日が。

   素晴らしい一日であるように。

   Have a nice day 今日という日が。

   素敵な出会いで満ちているように。♪」


 ノリノリなテーマで、こちらも手拍子をした。

 「やるじゃん八重、こんなノリノリな曲ができたよ!!」

 僕は、素直に彼女を褒める。

  

 「あの、皆がとても元気だから。その・・・・・・。」

 確かに八重はまだこちらに来たばかり、僕たちの班が少しでも元気な印象を彼女に与えられて、よかったかもしれない。



  最後はミランダの番だ。

  「はあ、八重がハードルを上げてしまった。八重と同じ感じで、元気よく行きます!!」


  「♪おはようと声をかける。

    大好きな君に。

    

    おはようと声をかける。

    少しでも届きますように。


    楽しみにしていたこの日。

    あなたはどうですか。

    

    私はとても楽しみにしていたんだ。


    二人で、出かけよう。

    今日は、その約束をしていた日。


    どこへ行きたい、何したい。

    すべて私に教えてよ。


    頑張るから、君のために。

    君を夢中にするために。


    ドキドキなデートが始まるよ。

    一緒に行こう、一緒に食べよ、一緒に・・・・・・。これからも仲良く。♪」

 


 これもノリノリな曲。純粋なピュアな女の子の歌詞だった。

 「やるね。みんな。」

 僕は、素直に声をかける。


 「まあ、頑張ってみました。その。」

 ミランダが頬を赤らめながら言う。


 「皆さん、私のために、ありがとうございます。私も歌詞を書いてみたくなりました。」

 リリアンが言った。


 「しかし、女性陣はみんな、純粋な女の子の恋の歌の気がするなあ。」

 ルーベルトが言う。

 「いいんじゃないの、素直な女の子の気持ちが聞けてうれしいし、やっぱり、こういう歌詞をかけるのは女の子だからだよね。俺なんか。」

 アンソニーは言った。



 「まあ、こういうジャンルに歌詞がみんな偏った要因は・・・・・。」

 ミランダが僕の方を見る。


 「どうしたのです。ミラ様、何かありましたか?」

 「いいえ、何でもないのです。」

 僕の問いに、ミランダが、少しため息をつく。


 ため息をついた後、表情を元に戻した。

 ―少しは気付いてください。翔太朗様。みんな、翔太朗様のことが・・・・・・。―

 ミランダは心の中で、何度も何度もこう思っただろう。



 「さて、問題は誰の歌詞で、リリアンは校内予選に出るかだな。それに、出るとしたら、皆、1番だけの歌詞なので、2番も用意しないとだな。」

 ピエール先生は言った。


  「まあ、出るのはリリアンなんだし、リリアンに決めてもらおうよ。」

  僕は素直に言った。


  「そしたら、翔太朗君と、八重姫様の歌詞の2曲で予選は出たいです。メドレーという形で、2番に関してはまた後で、皆さんに作って欲しいです。そして、聖夜祭は、私の歌詞も入れた、3曲のメドレーで行きます。」

 リリアンは言った。

 僕は、驚いた。


 「えっ、僕の歌詞で良いの。」

 リリアンに向かって、僕は言った。


 「はい。翔太朗君の歌詞がいいです。八重姫様のは純粋にノリがよかったので。」

 そういって、リリアンは、楽譜を少し書き換えて、僕の歌詞と八重の歌詞のメドレーができるようにアレンジを始めた。


 なんだか、とても光栄なことだ。


 早速リリアンは練習に取り掛かった。

 そして、数日後、セディア魔道学院内で、聖夜祭の出場を決める予選が行われた。


 出場するどのメンバーも、パフォーマンスに気合が入っている。

 リリアンに客席から見ててほしいと言われているが、舞台袖にいるリリアンは緊張しているのだろうか。


 「大丈夫ですよ、翔太朗様。リリアンは緊張してません。」

 ミランダは言った。

 「ああ、もともとは帝国でいろいろなステージに立ったんだ。こんな所なんて、序の口だろう。」

 ルーベルトもさらに続ける。


 そうして、リリアンの番がやってきた。

 「それでは聞いてください。2曲のメドレーです。」

 リリアンはそうして、ピアノの弾き語りを始める。

 元アイドルを彷彿とさせる。伸びやかな歌声が会場に響き渡る。

 さすがは元アイドル。どんどん彼女の魅力に会場は引き込まれているようだ。


 リリアンの発表は、大いに盛り上がり、会場から拍手喝采で終わった。


 「リリアン、お疲れ様。すごかったよ。」

 僕は、舞台を終えたリリアンに、笑顔で出迎えた。


 「はい。私ももう一度、ステージで歌えて幸せでした。聖夜祭に出られなくても、満足です。悔いはないです。」

 リリアンは笑顔でやり遂げた顔をして答える。



 そして、全てのプログラムが終了した。


 「それでは、お待ちかね、結果発表です。セディア魔道学院の推薦枠は3つ、つまり、上位3組が、聖夜祭の特設ステージに出場できます。お名前をお呼びいたします。」

 ポールさんの発表にドキドキする。


 「1組目・・・・・・・・・・・。」

 呼ばれたのはリリアンの名前ではなかった。

 「2組目・・・・・・・・・・・。」

 二組目も呼ばれなかった。


 次で呼ばれなければここで予選落ちとなる。

 「3組目・・・・・・・・・。」


 「1年第5班のリリアン=ウォッカさんです。」

 ポールさんの声がする。

 やった、やった。リリアンが選ばれた。


 「すごい、おめでとう!!リリアン!!」

 「やったー!!」


 「さすがは元アイドルだよ。信じてたぞ。」

 僕たちは素直に喜んだ。


 「みんな、みんな、ありがとうございます。聖夜祭。頑張ります。」

 リリアンは涙を流した。

 僕たちも同じだった。もう一度、リリアンの歌が聞ける。それが楽しみだった。

 


今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

少しでも続きが気になるという方は、是非、ブックマーク登録、いいね、高評価をお願いいたします。

次回の更新も少し遅くなるかもしれませんが、頑張って更新していきますので、楽しみにしていただけますと幸いです。

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