#111.リリアン推しの人々
なんということだ。茨から脱出できない。
「ご主人様、しっかり。」
「今出してあげます。」
鷲の姿のままでいたシロンとユキナ、空を飛び、間一髪で、茨をかわし、僕のもとへ駆け寄ってくる。
僕を引っ張ろうとするが、なかなか難しい。茨の棘も刺さってきており、無理やり引っ張るとかなりダメージを受けてしまう。
リリアンの父親が、それに気づいたのか、シロンとユキナにも茨の攻撃が来ている。
必死に空を飛びながらかわし続けるシロンとユキナ。
このまま飲み込まれてしまうのか。
「そうです。そうです。その調子です。」
ジュダはリリアンの父親を支持しているようだ。
だんだんと、茨がシロンとユキナを遠ざけていく。
「畜生!!」
僕はもがこうとするが抜け出せない。
「やめて、お父様!!お母様!!」
リリアンの声。リリアンは茨の攻撃を振り切り、僕のもとへ行こうとする。
「翔太朗君、しっかり。捕まって!!」
リリアンが手を伸ばす。
「おやめなさい、リリアン!!」
「なんで助けるんだ!!敵を始末しているのだぞ!!」
リリアンの両親は声をそろえる。
「私は幸せに生きているの、今、この翔太朗君たちと一緒に。本当に楽しいの。だから、どうして、どうして、お父様も、お母様も、かつてのあなたの敵の言うことを聞いているのどうして!?」
リリアンは涙ながらに両親に向かって言った。
リリアンの言葉は少し両親に届いたようで。攻撃がピタッと止まった。
ただじっと立ち止まる両親。
「何をしているのです。早く最愛の娘さんの敵を始末しなさい。」
ジュダは攻撃を止めたことに対して、感情を表している。
「翔太朗君、大丈夫か。」
茨に挟まれている僕に駆け寄ってくれたのはルーベルトだった。
ルーベルトは炎の魔法で、僕の周辺の茨を焼き切ってくれた。
「リリアンを信じて、攻撃がやんだ瞬間に炎の魔法で、これを脱出したんだ。」
ルーベルトは言った。
ルーベルトは僕の手を引っ張り上げ、茨から出してくれた。周辺の茨は炎の魔法の影響で弱くなっていたため、すぐに出ることができた。
「ありがとう。助かったよ。」
僕はルーベルトにお礼を言った。
「ありがとうございます。ルーベルト様。」
「へえ、アンタいいとこあるじゃん。」
ユキナ、そしてシロンがルーベルトを見直したかのように言う。
「仲間を助けることは当然のことだよ。」
ルーベルトは言った。
「しかし、あの、魂を操る術、【スピリットブレーン】は厄介だな。それに、ジュダも相当強い。だから翔太朗君。話があるんだ。新しい魔法を生み出す力がある翔太朗君に少しね。僕の炎の魔法を見ている君、リリアンの、僕たちの学級の級長である君にしかできない話がね。」
ルーベルトは、僕に向かって話を進める。
僕は少し驚いた。
ルーベルトの話には条理がある。きわめて論理的だ。
だけれども、ルーベルトの作戦は、僕は躊躇したかった。
「君にしかできないんだ。級長の君が、近衛隊長の君がやるしかない。」
ルーベルトは僕に向かって言った。
「ご主人様。この状況なら致し方ないと思います。それに・・・・・・。」
ユキナは少しためらったが、
「ご両親はすでに亡くなった方です。今ここにいることがおかしいのです。」
言葉を詰まらせるように言った。どこか躊躇する様子だが、ユキナのその考えだとほかにいい作戦は無いようだ。
「そうよ。リリアンもわかってくれる。きっと大丈夫。ここからまずは脱出しないと、あいつら、またリリアンを利用しに来るわ。」
シロンの言葉も説得力はあるが、やはり僕のことをよくわかっている、シロンだ。最後は少し涙目だ。
「行くしかないか。」
「「はい。」」
シロンとユキナは頷く。
「翔太朗君、すまない。僕は他のメンバーの茨を取り除くに行く。」
そういって、ルーベルトは茨の上を走りだし、ほかのメンバーの救出へ急ぐ。
僕は、リリアンと、そのご両親を見つめる。
確かに僕にとっても、この作戦は痛い。愛されて育ったのならなおさら。
だが迷いはない。行くしかなかった。
「おっと、いけませんな。」
ジュダが僕とルーベルトの動きに気付く。
「さらに強く、【スピリットブレーン】を唱えなくては・・・・・・。威力を強めてと・・・・・。」
ジュダが【スピリットブレーン】の威力を強めたからだろうか。
リリアンの父親が、再び攻撃を始めた。
茨がこちらに向かってくる。
敵兵も、ルーベルトと僕に向かってくる。
「「そこまでだ!!」」
茨の下、洋館の入り口から声がした。
同じような服装の帝国兵がかなりいた。
「我々は、帝国兵の正規軍。ゲラルド=ラゼットと、その娘ブルーナ=ラゼット、ジュダ=サルマン、お前たちに逮捕状が出ている。横領や、政治法違反、そして今回の前政権運営に対しての不当な請求事情を聞かせてもらう。」
帝国の正規軍、僕たちの味方だった。
「そうだ、リリアン様を返せ!!」
「リリアンちゃーん!!」
リリアンコールが聞こえる。一体。
「なるほど、さすがは帝国のアイドルだな、リリアン推しの人々がこの状況を察知して、助けに来てくれたようだ。」
ふと横を見るとカミラさんが笑っていた。
「すまなかったな翔太朗殿。ルーベルトの炎の魔法で助けられた。」
「はい。まるで熱狂的ですね。リリアン。」
「私の女王の就任の時と同じようです。」
カミラさんの他にミランダと八重が僕の横に立っていた。
どうやら、彼女たちもルーベルトに助けられたようで、僕の援護に来てくれた。
「一体どうやってリリアンの居場所を、その押しの人々は突き止めたのでしょうか。」
「おそらく、ギエルが連行していくのを見られたのだろう。それで一気に広まって。調査になったわけだ。もともとこの国は、こういうデモや政治の動きに関心のある人々が多いのだろうよ。政権が代わるたびにいろいろ問題が起きるからな。」
カミラさんは僕の質問に答える。
「ギエル、貴様、しくじりやがって。」
ゲラルドは大きな声でギエルをしかりつける。
「は、はい、申し訳ありません。」
「まあ、いいってことよ。とにかく、こいつらを道連れにするまでだ。」
ゲラルドと、ギエルは、雇った敵兵たちに指示を出し、鎮圧するように指示した。
すぐに敵兵が、リリアン推しの人々の元へ向かう。
「翔太朗殿、私たちも行くぞ!!」
僕はカミラさんの方を見た。
「ルーベルトから作戦は聞いています。私も反対したのですが、カミラさんからこれしかないと言われ、私も協力します。」
ミランダと八重はそろって頷く。
「そうだな。立ち止まってはいられない。行くしかない・・・・・・。」
「「はい。」」
みんなは声をそろえた。
「行こう、皆。リリアンとそのご両親を救うために。」
僕たちは、一気に茨を駆け上がり、リリアンの両親のもとへ向かった。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
最近なかなか更新できずに申し訳ありません。
頑張って続きを書きますので、続きが気になる方は、ブックマーク登録と高評価、そして、いいね!をよろしくお願いいたします。




