#11.さらば吉田トン吉
忍者学校の新学期が始まった。といっても、三度目の留年なので、僕は何歳か年下の子たちと一緒に忍者学校最終学年を学ぶことになる。
心強いことに、八重とは同じクラスになった。
しかし、落ちこぼれコンビ、ということで、何歳か下の子たちではあるが、僕と八重は、案の定、いじめを受けることになってしまった。
それでも気にしなかった。
落ちこぼれ同士、というか、薬草園の泉の一件以来僕らは仲良くなっていた。
家族やクラスメイトに何を言われても、気にせず。
そして、家路に一緒について、一家全員分のご飯を一緒に作ることもできた。
しばらくは、吉田家と岩月家のご飯が全く一緒という日々が続いた。
相変わらず、お互いの両親や一族の人からは、まずい。まずい。という酷評を食らったが、お互いの味見をしたが別にまずくはなく、むしろおいしかった。
八重には素直においしいと述べる。
同じように、八重も僕が作ったものに関して、おいしいと言ってくれた。
そして、トン吉爺さんもおいしいといって、食べてくれた。
そして、忍者学校の、体力テストの日。
僕も、八重もテストに臨んだが。
「翔太朗、八重。やはり糞落ちこぼれだな。お前たち二人がやはり最下位だ。」
担任教師はそう言った。
担任教師に、糞、と言われた。そして、他のクラスメイトもそれを笑っている。
さらにいじめは激しさを増した。
しかし、学校から帰れば読書の時間と、トン吉爺さんの修業が待っている。
薬草園の一件以来、八重もトン吉爺さんが見てくれるようになったため、試験落第直後は、修業はとても苦痛だったが、今はとても楽しいようだ。
それに、僕だって、あの突風を自由自在に呼び出すことができれば、きっと鷲だって、僕に契約してくれるはずだし、里のみんなからも見直してくれるはずだ。
だが、そんなうまくはいかなかった。
「術の印の結びが遅いぞ。翔太朗。」
「忍具はこうだ。もっと力はいらないのかい。」
トン吉爺さんは、その繰り返しで、いつまでたっても上達がなく。
ついには、トン吉爺さんもため息をついてしまった。
「このままだと、落第して、本当に一族の奴隷とされてしまうのう・・・・・。どうしたものか・・・・。」
トン吉爺さんも悩む日々が続いた。
そのまま3か月が経過した。
夏。もうすぐ、忍者学校は夏休みに入る。
忍者学校の一学期の期末試験も実施されたが、試験の結果は学術はよくできたが、忍術、体術、その他実技科目は、最下位だった。八重も僕と同じ結果だった。
忍者学校に入学してから、ずっとそんな感じだ。
兄の龍太朗は全科目で、主席だったのに。
はあ、薬づくりとか、料理作りとかは試験科目にないのかと思う。
トン吉爺さんはあきらめず、僕に修業をつけてくれた。
今日も八重と一緒に修業をする。
今日のトン吉爺さんは、少し顔色が悪かった。
いや、薬草園の一件以来、トン吉爺さんの雰囲気が変わったが、今日は特に顔色が悪い。
「しょ、翔太朗、や、八重、今日の修業は、手裏剣だ。こうやって。」
しかし、トン吉爺さんの手裏剣は的に届かなかった。
いつも、僕が的に届かないのに・・・・・・。
いつもは、トン吉爺さんは的に届いて見本を見せてくれるのに。
そう思っていた。
僕と八重は、そういって、手裏剣の修業を始めた。
修業を始めて、数時間が経過したころ、それは起こった。
「うっ、うっ、しょ、翔太朗。や、八重・・・・。」
トン吉爺さんが苦しみ始めた。
胸を押さえている。
これはただ事ではない。
まずい。急いで人力車を手配して、トン吉爺さんを病院へ運ぶ。
人力車の人も手伝ってくれて、何とかトン吉爺さんを人力車に乗せることができた。
風ノ里の病院へたどり着く。
「あら、翔太朗君、どうしたの。」
看護師さんが声をかけてくれた。この里の人は僕を知っている人がほとんどだ。
病院の人たちもやはり、公平に接しようとしてくれるのか、優しい人たちばかりだった。
「看護師さん、すぐに来て。」
病院の前に止まっている人力車、僕たちがトン吉爺さんを乗せて運んだ人力車に案内した。
看護師さんはトン吉を見た。
「トン吉さん、トン吉さん。しっかりして。大変だ。」
トン吉爺さんは、病院の奥へと運ばれていった。
数時間がさらに経過。
僕は、両親と叔父、従兄を含む吉田一族全員と屋敷の人たちに連絡した。
治療室から、医師と看護師が暗い顔して僕らの一族の前に現れた。
吉田トン吉。心不全のため死去。享年74。
すぐに葬儀が行われた。
隠居の身、そして、予言の術が外れることもあり、ほら吹き爺さんと呼ばれていたこともあったが、外交官、外務卿としての功績、その人柄を慕う人の割合が大きかったのだろう。
比較的小さめの葬儀会場で実施したが、その会場は満員であり、かなりの人が参列していた。
火葬、納骨と淡々と行われ、こんなにも簡単に亡くなり、こんなにも淡々とに葬儀が進んでしまうことに対して、僕は深い悲しみを覚えた。
八重も泣いていた。
「あんたが、毎日長時間修業をしているから、爺さんの体力を奪ったんだ。」
「確かに、おいぼれでハチャメチャだったがお前以上の実力はあったぞ。」
両親はこのように言って、トン吉爺さんが死んだことは僕のせいにしようとしていたが、僕はその言葉は入ってこなかった。
トン吉爺さんが死んだ。そして、僕の感情もまた死んだ。
両親と一族と、クラスメイトのせいで。
吉田家に、吉田一族の屋敷に、僕は居場所を失った。
それだけがはっきりと、この葬儀でわかったことだった。
読んでいただき、ありがとうございます。
なんと、トン吉さんがなくなってしまいました・・・・。
しかし、翔太朗の冒険はまだまだ、続きます。
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