#107.帝国のアイドル
「ベンジャミンさん。」
冒険者ギルドの秘書が書類を持ってきた。
「みんな、ここにいたか。」
ポールさんも冒険者ギルドにやってきた。
「皆さん丁度良かった。リリアンさんの連れ去られた理由と、いろいろとわかったことがありますので、どうぞ、応接室へ。」
僕たちはギルド本部の応接室へと通された。
ソファーに座り、調べてくれた人からの報告を聞く。
「今回ばかりはかなり複雑な状況です。翔太朗君たちだけで行くのはいささか、問題があるかと。」
ベンジャミンさんの秘書の方はそう言った。
「そうか、やはり恐れていたことが起きたか。」
ベンジャミンさんは深くため息をつく。
「ああ、私もリリアンのことを調べ終えて、皆に報告しようと思ったところだ、おそらく、同じような答えだろう。」
ポールさんも僕たちに伝えてくれた。
「何から話せばいいかわからんが、結論から言うと、リリアンはブレゾラン帝国の出身で、リリアンの父上は、先代の首相の執事、兼秘書で、かつ、帝国議会の議員を務めていた人物だ。」
僕たちはポールさんの言葉に顔を見合わせ、驚いていた。
「そして、リリアンにも複雑な事情があり、彼女の過去は帝国一のアイドルグループ、【ブレゾラン娘】の元メンバーだ。かなり精力的に歌手の活動を帝国内でしていたようで、トップアイドルだった。」
ポールさんが持ってきてくれていた資料には、確かにリリアンのポスターがたくさんあった。
ライブの案内のチラシ、インタビューの雑誌、そのすべてにリリアンが映っていた。
「アッ、これ。」
マリアが指さす。
水着姿のリリアンだ。しかもこの間の親睦会、王宮のプールで着ていた白ビキニでリリアンが映っていた。そして、もう一つの写真にも、マリアが着ていた花柄ビキニに身を包んだリリアンが映っていた。
「かなりの実力派だったようで、【ブレゾラン娘】の選抜メンバーを決める、総選挙とかいうイベントも4位以下は獲得したことがなく、2位が2回、優勝が1回、3位が2回という成績だ。」
これぞ帝国のアイドル。確かにスタイル抜群のリリアンだトップアイドルになれてもおかしくない。
「そういうことなら、なんで、セントアリアに?ずっとアイドルを続けていれば・・・・。」
アンソニーが言った。
「こいつの存在が厄介だな。」
ポールさんは【ブレゾラン娘】のポスターに映っている、リリアンの右隣の人物に指をさした。
「彼女の名は、ブルーナ=ラゼッド、現在の帝国政権の中心メンバー、現法務大臣、ゲラルド=ラゼットの娘。初期のころからライバル視していたようで、前首相の任期終盤の頃から色々と、リリアンに妨害をしていたという噂がある。」
ああ、なるほど、だから、ベンジャミンさんの言った、政治の重要人物にかかわるとかなり危険なことになるということだったのだ。
ブレゾラン帝国の悪い部分、つまりベンジャミンさんの言っていたことが初めて理解できた。
「こいつの政権も、先代の政権と同じようなことをしたわけか。」
「ああ、そうだな。就任早々、前首相の賄賂を調査し、牢獄に入れた。影響は、首相の執事をしていた父の影響で、リリアンにも出てきて、アイドルの握手会で、何者かに襲われ、怪我をしたらしい、当日の警備もいつもよりもかなりずさんだったようだ。この影響で、公の活動はリリアンのみ休止。アイドルの選抜総選挙も辞退し、大きく人気が下がってしまった。そして・・・・・。」
「そして・・・・。」
僕たちは息を飲んだ。
「現在の政権を支持する何者かが、リリアンのご両親を暗殺。そうして、アイドルをやめて、リリアンはセントアリアに亡命してきたという経緯だ。おそらく何者かがギエルを利用した。今回の一件も帝国の連中が絡んでいる。間違いないだろう。」
ポールさんはすべて話し終える。
「私も、同じようなことを調べて、同じような結論に至りました。」
ギルドマスターの秘書もそういっている。
「皆さん、お早い情報集め、ありがとうございます。」
八重は感謝を述べる。
「ええ、幸いにも、帝国とはいろいろと貿易がありますし、帝国に行ったことがある冒険者のお話を聞いて、整理することができましたので。そうは時間はかかりませんでしたよ。」
「私も同じだ。」
ポールさんと、ベンジャミンさんの秘書の人は、そういった。
さすがは冒険者ギルド、いろんな情報が入ってくる。
「さて、お前たち、今回の敵は厄介だぞ。それでも行くか。」
カミラさんが改めて僕たちに問いかけてくる。
「ああ、もちろん、行きます。カミラさん。事情はどうであれ、リリアンは大切な仲間です。」
僕はそう答えた。
「ええ、そうですわ、許せない。リリアンは、一生懸命、頑張っていたのに、政治家の私利私欲で利用されるなんて。絶対に取り返します。」
ミランダもそういった。
「私も、全力で守ってくれた、リリアンに感謝したい。ご両親の影響で、政治に絡んでいる可能性もあるけれど、近衛兵として、魔道学院で、一生懸命やっているリリアンに掛けてみたい。」
八重が言った。
ルーベルトは少し考えたが。
「ああ、女王様のいう通りだな。大切な仲間を取り返そう。すまない、僕は政治家という言葉に反応して、リリアンも何か悪いことにかかわっているのかと疑ってしまった。だが、女王様の、みんなの言葉で確信した。一生懸命やっている、仲間を思っているリリアンを見捨てることは絶対にできない。行こう、みんな、帝国へ。」
ルーベルトの言葉は後半になればなるほど、魂がこもっていた。
確かに、貴族のひとりとして、リリアン一家を疑うことはあるかもしれないが、リリアンだけを見ればひたむきに頑張っている人がそのようなことをするわけがないと確信したのだろう、過ちをただすルーベルトの姿は美しかった。
「それじゃみんなで行きましょう、術の効果が切れないうちに、私の大好きな親友を取り返すために。」
マリアは、拳を突き上げた。
それに呼応して、全員が拳を突き上げた。
「「「行くぞ、ブレゾラン帝国!!!」」」
「皆様、素晴らしいですね。早速、出発したいところですが、1名ご紹介したい方がいらっしゃいます。」
秘書の方が案内する。
「討伐隊、捜索隊として、いち早く加わってくださった方であり、皆様とともに先発隊として、同行する経緯となりました。お入りください。」
促されて、入ってきた人物は、見覚えのある人物だった。
実際にあったことは魔道武術大会以来だが、この少年は明らかに僕の知っている人物だ。
「確か、クリフ=クロスラード君だったよね。前にもリリアンを助けてくれていた。本当にありがとう。」
僕はお礼を言った。
「いえ、当然のことです。それよりも、またギエルが現れたそうですね。」
「ああ。連れていかれてしまったよ。リリアンが。」
僕は、クリフの質問に答える。
「はい。僕はこの手で、ギエルと戦い、倒したいのです。」
クリフは執念を持ったように言った。
今にも有言実行しそうな勢いに。
「そうなんだ、だけど、まずは、リリアンをリリアン=ウォッカを助けてほしい。クリフが無事であってほしい。それは約束していただけないだろうか。ルーベルトを魔道武術大会で倒した君なら、できるはずだ。」
僕は、クリフに言った。やはり彼は勢いがあるが心のどこかに余裕がない感じがする。
確かルーベルトの試合の時も、試合には勝ったが、前半は勢いがありすぎて、どこか落ち着いていない雰囲気だった。
「はい。わかりました。」
深呼吸をしたかのように、彼は応えてうなずいた。
よし、大丈夫だろう。少し表情に余裕が出てきたな。
僕たちの学級にクリフが加わり、改めて、ブレゾラン帝国へ出発することになった。
更新が、遅くなり申し訳ありません。
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