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#102.風ノ里のその後、その8


 そして、八重の奪還のための襲撃を受け、【砂ノ精神の塔】崩壊後。

 月影と長治はただ茫然と、傾いた塔を見ていた。


 「なあ、長治さんよ。」

 「はい。月影様。」

 ただただ、淡々と目が点のようになり黄昏たかのような二人の会話。


 「あいつは一体誰だよ。」

 「はい。我が甥、龍太朗の双子の弟、翔太朗でして。吉田一族としてはあまりにもひどすぎる、忍術を使うことから、その・・・・・・。私たち一族の手によって、海王類に襲われて死んだことになっていました。しかし、彼は、そんなことは全くなく、海を越えて、セントアリアの仲間として戦っているようです。」

 長治は、その他にも事細かに翔太朗のことを話した。


 「そうか、わかった。」

 月影はただただ物思いにふけっていた。


 「なるほど、今回の俺からの報酬は、2000両と約束したが、半分の1000両だな。誘拐は成功した。だが・・・・・・。」

 そう、暗殺とセントアリアの秘宝の強奪に失敗したのだ。

 那ノ国内では、里長は失脚できたかもしれないが、結果的に、砂ノ国と、砂ノ精神が一番の被害を被ってしまった。


 月影は、頭の中を少し整理する。

 そして、長治も頭の中を整理する。


 そして・・・・・・・。

 「この大馬鹿者!!お前ら一族が翔太朗ってやつを最後まで片付けていなかったら、こんな結果にならなかったんだ!!」

 月影は、長治に向かって怒鳴る。

 「も、申し訳ありません。」


 「こういうところが抜けているから、里長選挙も失敗したんじゃろうて。」

 月影のいう通りで、長治は反論できなかった。

 「はい。仰る通りでございます。」

 長治はぺこぺこと頭を下げる。


 「もういい。お前は那ノ国に帰っていい。ただし、極秘任務を極秘の依頼を俺から受けてもらう。」

 「はい。なんでも致します。」

 長治は言った。


 「那ノ国の誰でもいいから、忍びを派遣し、海を越えて。翔太朗か八重のどちらかを始末してこい。」

 「も、もちろんでございます。」

 長治は、胸強く手を当てていった。


 「理由は、俺たちの砂ノ国の不利益もそうだが。もう一つある。俺たち砂ノ国では、世界地理を教えられる。どのような子供も必須でな。だが那ノ国はどうだ、忍者になってから、しかも大雑把にしか海の向こうの地理は教えられてないのだそうだな。理由は分るか?長治。」


 「そこまで重要ではないと、現在でも船で何日もかかりますし・・・・・。」


 「全然違うな。それはお前たち吉田一族を守るためだ!!いいか。よく聞けよ。『鷲眼の術』を向こうの大陸に渡してはいけない。その昔、そう教えられた。『鷲眼の術』を向こうの大陸の連中に渡せば、やがて世界は大きな災いが来るとされている。そして、八重が使えた。『人魚眼の術』とやらもだ。あの二つの眼術が一緒になればなるほど、この世界の災いが来る確率が跳ね上がる。絶対に二つの眼術を離れ離れにしろ!!わかったか!!」

 「は、はい。わかりました。」

 長治は、月影の言葉にビシッと反応し、喜助と治美とともに那ノ国に帰っていった。



 それを見送る月影。

 「行ったか、バカな奴らめ。」

 「父上、いいのですか。」

 寅丸が聞いてくる。


 「いいさ、利用するだけ利用してやる。それに、もう2つ出来る目途が立った。つまり7つのうち4つのピースの見当がついた。あと3つ。そして。」

 「そして・・・・・・。」


 「ああ、計画に賛同してくれる人を集めるだけさ。この大陸にも、そして、東の大陸にも。」

 「そうですね。簡単に言いますが、かなり難しいですな。」

 「そのためにも、那ノ国の人間には、海を越えて二人のうちどちらかを、是非とも始末してほしいのだがね。」

 「そうですね。無事に成功してくれることを。」


 「「祈りますか。」」

 月影と寅丸は口元をニヤニヤしながら口角を上げていた。





 那ノ国に戻った長治は、急いで半蔵と龍太朗、そして民子を呼び寄せた。

 「おお、長治。どうだったか。成功したか。」

 半蔵は長治に祈る思いで長治の目を覗き込んだ。


 「ああ。成功したよ。だが、成功したが失敗もした。」

 半蔵の顔色が変わる。


 「どういうことだよ。長治。」


 「誘拐は成功した。それの結果、どうだ、新しい里長の支持がどんどん下がっている。この風ノ里の内外問わずな。だが、殺害は失敗した。」

 半蔵は耳を疑った。

 殺害は失敗した。だと。そんな、そしたら、八重が誰によって誘拐したかばれてしまうではないか。


 「まあ、安心しろ。八重はここには帰ってこない。だから、我ら吉田一族の評判はそんなに落ちないだろう。砂ノ国は別のやつらの襲撃を受けて、その別のやつらが八重を奪って行った。だから、暗殺に失敗した。」


 「別のやつら・・・・・・・。」

 半蔵は龍太朗、そして、民子と顔を見合わせる。


 「お前に聞きたい。翔太朗は死んだんだよな。」

 長治は半蔵に聞く。


 「ああ、そうだとも、あんな出来損ない。自分の身を守れず、ただただ、龍太朗を庇う感じで、海王類に襲われて死んだ。」

 半蔵は言った。


 「海王類か。どんな海王類だ。」

 長治はさらに聞く。


 「ああ、でかい、竜みたいな。牙がこうあって、ああなって、とにかくでかい、竜の、竜だった。」

 半蔵の口が少しもぞもぞしてくる。


 「そうか、竜か。食べられるところを見たのか。」

 「ああ、見たとも見たとも。」

 半蔵は頷く。


 「確かお前、翔太朗が死んだときは蛇のような海王類と言っていたな。竜の間違いか?竜なのか?蛇なのか?」


 「あ、ああ。竜だ。竜。」

 半蔵の額から汗が出ている。

 それを見た龍太朗は、長治と目を合わせる。


 「叔父上、父上は疲れているのだ。ここまでにしてくれないか。」

 龍太朗は言った。

 「そうですよ。長治さん。いいじゃないですか。過去のことは。」


 「そういえばお前たち、遊覧船に乗っていたと言ったな。お前たちよく、帰国が遅れず、無事だったな。船も襲われただろうに。」

 長治は少し威圧する感じで迫ってみた。


 「まあ、まあ、奇跡的に逃げられた。泳いで。」

 

 ふう、と長治はため息をつく。

 「砂ノ国を襲撃した別のやつらのリーダーの名前。吉田翔太朗だ。本当のことを言ってみろ。翔太朗はどうした!!え?」


 半蔵、龍太朗、民子の3人は何かが割れたような、そんな表情をした。


 「す、すまねえ、長治。本当は、砂浜に捨ててきた。あんな出来損ないはどこかで餓死すると決めつけて。」


 「ふう、やっと、本当のことを言いやがったか。まあいい。翔太朗は確かに出来損ないだった。居てほしくないのは分るし、あのまま置いておけば吉田一族の恥だ。それは認めよう。だがな。何で最後までやらなかった。貴様らが、翔太朗を最後まで殺さなかったから、どうだ。あいつは海を越え、セントアリア王国というところで、『鷲眼の術』を会得し、双子の純白の鷲と口寄せの契約までしやがった。格段に強くなっていたぞ。貴様らのおかげで、最大のこの国最大の敵を作ったんだ!!」


 長治の言葉を聞いて、さらに背筋が凍り付く3人。


 「まあいい。もう一度お前たちに機会をやる。今からでも遅くはない。砂ノ精神のリーダー、鳳月影からの命令だ。海を越えて東の大陸、セントアリアに行き、翔太朗か、八重のどちらかを始末してこい!!里長には、お前たち3人は、近頃の任務失敗が相次いでいるため、修業のためしばらく任務を休むと伝えてくる。わかったか!!確実にやってこい。」


 「「「は、はい。」」」

 半蔵、龍太朗、民子の3人は長治に向かってうなずいた。


 「まあ、いいだろう。お前たちが留守にしている間。さらに里長を失脚させるための策を俺は考えてやる。」

 長治はそう言って、半蔵達を送り出した。



 こうして、半蔵、龍太朗、民子の3人は、南の国に向かい、セントアリア王国へと旅立っていったのだった。

 


今回も最後まで、読んでいただき、ありがとうございました。

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