#101.風ノ里のその後、その7
半蔵は途方に暮れていた。
「なぜ、あんな奴に里長の選挙で負けたのだ・・・・・・・。」
半蔵だけでない。吉田一族の誰もが、まさかの結果に衝撃を受ける。
これは半蔵の弟、つまり翔太朗の叔父、長治も同じだった。
「なんとしてでも次の里長選挙で、勝たなければ・・・・・・。」
しかしながら、風ノ里の民は、新しい里長就任を喜んでいる。
それに比例するかのように、吉田一族の風当たりが最近強い。
もう一度、里長に返り咲くためには・・・・・・・・。
半蔵、長治、それに吉田一族全員が、いろいろと考えた。
任務で成功させる。そのカギを握る、龍太朗は国からの任務に駆り出されることもある。
龍太朗が風ノ里に帰ってくる時を狙わないと、任務成功は上がらない。
それならば、龍太朗一人で頑張ってもらい、龍太朗が次の里長選挙に立候補すればいいのでは・・・・・。
そう思ったが、誰もが喜ばない。
龍太朗は里長のような器では収まらない。宰相になってもらわないと。
そのためには、国で現宰相と、那ノ国国王の下でたくさん働く必要がある。
それに年齢が若すぎる。誰かから反感を食らうのは必須だ。
今から次の里長の選挙運動をするのは・・・・・・・。
長治は、さらに考えを巡らせる。
ふと、思いついた。それは突然に。まるで天から何かが下りてくるかの如く、思いついた。
「そうだ、失脚させよう。」
だが、簡単に思ったが、できるわけがない。
長治は、半蔵、民子を含め、吉田一族全員を集め、半蔵を次の里長選挙で当選させるために、自分の考えを言った。
「服部を失脚させればいいんですよ。目玉政策の忍者学校の修学旅行を失敗させれば。」
悲しいことに、この意見に不服を唱える者は誰一人としていなかった。
修学旅行を失敗させる。具体的に何をすればいいのか。
忍者学校の生徒を事故に遭わせる。我々が仕組んだ事故に。
だが、しかし、全員を事故に遭わせて、殺させるわけにはいかない。
バレる可能性もあるし、この国の将来がかかっている生徒をやすやすと・・・・・・・。
さて、どうしたものか。
半蔵と、長治は散歩をした。そんなことを考えながら。
「まったく、なんで、こんなにあなたは出来ないの。」
「もう帰ってくるな。」
こっぴどく怒られている人物が目に留まった。怒っているのは両親だろう。それにしてもひどい言われようだ。
目に留まったのは、八重とその両親だった。
八重の両親は当然だが、八重が邪魔に思っていた。
「確か、あの子は何度も留年して、両親に、あの人たちに嫌われていたような。」
長治はそんなことを思いながら、八重を見ていた。
「ああ、吉田一族の・・・・・・。こんな見苦しい場面をお見せして申し訳ありません。」
八重の両親は深々と頭を下げる。
これは・・・・・・・。ひょっとして・・・・・・・・。
「構いませんよ。・・・・・・。ご両親のお二人。少し時間がありますか。お話したいのですが・・・・・・。」
長治は八重の両親を呼び出した。
「いや、この間の里長選挙。残念でしたね。」
「私たちは吉田一族こそ、風ノ里のために働いてくださると信じていましたから。」
八重の両親は世間話のように、言っている。
だが、両親の目を見れば、この言葉は嘘ではないということに気付いた。
「ありがとうございます。ぜひとも次の選挙では吉田一族が当選したいと思いまして・・・・・・。その、先ほどの赤髪の女の子のことについてなのですが・・・・・・・・。率直に意見を言っていただけませんか。別に言いふらしたりしませんので。」
長治は八重のことを聞いてみた。
八重の両親はお互い顔を見合わせた。そして。
「ああ、あの子は、私たち一家にとって、悪魔です。ただただ、邪魔でしかないのです。」
「ええ、何もできない、この家にいてほしくないのですが・・・・・・・。」
その他にも八重の両親は八重の不満をどんどん言った。
出生のこと、忍者学校のこと。その他いろいろ。
話を聞けば聞くほど、長治の心の中は笑っていた。
「なるほど、正直にありがとうございます。もし、その子を消せるとなれば、協力できますかね。」
八重の両親は夢中でうなずく。
「では、このことは誰にも言いませんので、これから私が話すことを、お二人は誰にも言わないでいただけると。」
そうして長治は、忍者学校の修学旅行政策を失敗させる計画を話した。
生徒を事故に遭わせる。そのターゲットに八重を選ぶ。
そして、捜索は吉田一族直属の班が担当し、あたかも新しい里長に協力したふりを見せる。
助からなかったと思わせといて、里長を失脚させる。
すぐに里長が交代して、選挙になる。その時に吉田一族が当選すればいい。
見事な計画だ。
「す、素晴らしいです。是非お願いします。勿論このことは誰にも言いません。」
八重の両親は嬉しそうだった。
「報酬もいくらかお支払いします。」
八重の両親はさらに続けた。
長治は頷き、八重の両親と別れた。
その後は着々と準備を進めた。
まずは、計画であるが、これは八重が一人になったところを見て、誘拐させるしかない。
誰が誘拐するか。半蔵と長治にはあてがあった。
【砂ノ精神】、砂ノ国の武装集団だ。
だが、那ノ国と砂ノ国は敵対関係にある。
そこで長治は、かなり気心が知れている。傭兵団に仲介をお願いすることにした。
そして、砂ノ国、砂ノ精神の塔。
長治の目の前に、鳳月影と鳳寅丸が座っていた。
「珍しいですな。那ノ国の名門一族が依頼に来るなんて。一体何の用だ。要件次第では貴様を殺すぞ。」
傭兵団の仲介のもと、長治は依頼に関して話した。
修学旅行の際、生徒を一人誘拐してほしいと。
報酬として、1000両。つまり、セントアリアの価値にして、白金貨100枚。1億マネー支払うと。
だが、ターゲットが岩月八重であるとわかると、彼らは、態度を軟化していった。
「長治、素晴らしいよ。そして、逆だよ逆。」
「なにが、逆かと言いますと。」
長治は月影たちに問いかける。
「逆だ、こっちが1000両、いいや、2000両、お前たちに支払う。この女はもともと俺たち、【砂ノ精神】も狙っていたんだよ。だが、敵対する忍者がやすやすとそんな女を渡すわけがねえ。その女をこっちで始末するまでお前たちの何人かを人質として、預かるが、それでいいかな。」
なんということだ。2000両もらえるだと。
素晴らしい、素晴らしすぎる。人質。そんなものはたやすい。
「もちろんですとも、私と、私の娘と息子が人質になりましょう。そして、人質の間は【砂ノ精神】の見方として、戦闘協力もしましょう。」
長治と月影はがっちり握手を交わした。
そして、修学旅行当日。作戦は見事決行された。
長治の指示通り、半蔵と龍太朗。そして吉田一族が里長に協力する形で、八重の捜索を主体となって実施した。
だが、もちろんあまり深追いせず、見つからなかったと報告することになった。
そして、海を越えた、翔太朗率いる、セントアリアのメンバーによって【砂ノ精神】から八重を奪還する経緯に至ったわけである。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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