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#100.即位式


 僕は誕生日にもらった、燕尾服に身を包んでいる。

 今日は八重のセントアリアの女王即位式。


 僕たちはセントアリア王国に帰ってきた。

 帰ってきて、来るや否や、女王の存在が公にされた。


 「号外だよ~。号外。この国は再び王家がよみがえるよ~。」

 そんな声をしながら、新聞を配っている人が見える。


 新聞には、八重のこれまでの経緯が確かに記されていた。

 民たちは、とても喜んで八重を迎えた。


 「本当に良かった、この国は再び。女王様のもとで歩けるんだ。」

 「確かに、あの王子は遊び人のような人だったからね。子供がいるなんて、納得だよ。」


 そんな声が、ちらほら聞こえてきた。


 「私もうれしい。翔太朗君にまた会えるなんて。本当に良かった、ありがとう。」

 八重も大粒の涙をこぼしながら、王宮での生活に慣れてきているようだ。


 王族、ということで、八重にはこの国のいろいろなことを従者たちから、教育されているらしい。

 そして。


 「八重王女も、我ら、セディア魔道学院で学ぶことになった。編入で君たちの班に入ってもらうよ。よろしく頼むよ。翔太朗君。みんな。」

 ポールさんからの言葉に驚いた。


 その翌日、本当に八重がセディア魔道学院に入学してきた。

 そして、ピエール先生、カミラさんの元僕たちの班、僕たちの学級に合流した。


 「よろしくお願いします。皆さん。」

 僕たちは、大きな拍手で迎えた。


 「本当に良かった。八重様。よろしくお願いします。」

 ミランダが迎えてくれる。

 「これからもよろしく。」

 僕は、笑って笑顔になる。


 「王女様を迎えて本当にうれしいです。」

 ルカ、ルーベルトも気さくに迎えた。


 「おうよ。これから百人力だ。」

 アンソニーも嬉しそう。


 リリアン、マリアは王女様ということで、緊張していた。

 八重は、那ノ国にいたときよりも、とてもきれいな服を着せられ、この魔道学院に来ている。

 これを見て、ああ、王女様なんだなと思ってしまう。

 


 国王陛下、カルロス=アリア3世と会った時も、八重の目には涙があふれていた。

 実の祖父と初めて会うのだ。


 「おお、この目、この赤毛。まさに我が息子の生き写し。」

 国王は涙を浮かべていた。

 「本当に、本当に、生きててよかった。生きていてくれて、ありがとう。ありがとう。」

 国王は膝をつき、うなだれながら涙を流した。



 「あなたが、この国の王女かどうか、改めて、私の魔法で確認することはありません。」

 一緒にいた、フィリーネさんも八重に向かって言った。


 「なぜならあなたは、初代女王、フィオナ様が使えた魔法、『人魚眼の術(マーメイド=アイ)』が使えることを皆様から聞いています。それが何よりの証拠だからです。その術は、セントアリア王家のしかも女性に伝わる術です。限られた者しか使えません。そこにいる、翔太朗君の『鷲眼の術(イーグル=アイ)』と同じように。」

 フィリーネさんはこう続けた。

 まさに王女八重に、敬意を示した、話し方で。


 「八重よ。私もこの歳。王位をそなたに譲りたい。どうかな、受け取ってくれるか。」

 八重は涙を浮かべながら、頷く。

 「不束者で、至らぬところもあるかもしれません。この国に来たのは初めてですから。ですが、私にしかできない、ということを受け入れたいです。やります。よろしくお願いします。」

 泣きながらではあるが、心にはどこか穏やかな八重がいた。

 

 アリアンローズ。セントアリアの美人の条件。

 その姿は、アリアンローズそのものだった。薔薇のような美しさ。気品あふれる。勇気あふれる。美しさを見た瞬間だった。


 そして、今日。八重の即位式を迎えたわけである。


 「翔太朗君。そして、セディア魔道学院の皆さん。皆様にはこの特別な任務を成功させてくれて感謝しかない。後日、即位式の際、褒美をたくさん用意している。勿論、ボーラン士官学校の諸君にも。本当にありがとう。」

 国王は、深々と頭を下げた。


 即位式は、八重の近くで見られることになっている。

 まさに、王宮の特等席で見られるのだった。


 王宮の、玉座の間。

 大勢の貴族や兵士たち、内政を担当する、王国の議会のメンバーや国務大臣が一気に集まる。

 僕たちもここに招かれた。


 「すごい。そうそうたる面々です。」

 ミランダもとても緊張している。同じ貴族同士なのだろうか、この熱気は想像すらできていない。

 同じ貴族出身の、ルーベルト、ルカも同じような心持ちだ。


 「なんか、息が詰まりそう。」

 「私もだよ、マリア。」

 リリアンとマリアは、この空間になれていないのか、違う緊張感がある。

 少しドキドキしている。


 「堅苦しいな。早く食事とかでないかな~」

 アンソニーは気持ちに余裕を持たせようと必死だ。

 「まあ、まあ、そんなに緊張するな。お前たちは八重姫を助けた。堂々としていろ。」

 カミラさんが気合お入れる。

 もちろん、カミラさんも普段のメイド服やダウンジャケット姿ではなく、バシッと、ドレスを決めて、ここにいた。

 カミラさんに似合いそうな、細身のドレスだった。


 兵士に連れられ、国王と、八重が入場してきた。

 八重のドレス。ローブデコルテ。淡いピンク色をしている、高級感あふれるそれは、まさにロイヤルファミリーだった。


 「セントアリア王国、女王即位式を挙行いたします。」

 司会の声に併せて、即位式が淡々と、且つ厳かに行われる。


 セントアリアの国王、カルロスアリア3世から、八重にティアラが授与される。

 女王のティアラ。ダイアモンドが敷き詰められている。正面にはエメラルドだろうか。きれいな緑色の宝石がティアラの中央にある。

 まさに女王。プリンセスではなく、クイーンになったということだ。

 だからと言って、八重は変わらない。

 僕も八重、八重ちゃんと呼んでいる。いつものように。その方が八重も嬉しそうだ。

 そして八重は玉座に座った。

 その瞬間会場からはどよめきが起きる。



 そして。

 「それでは、セディア魔道学院、1年5組の皆さま。どうぞ、前へお越しください。」

 僕たちは急に司会から呼ばれたので、どきどきしながら、玉座の間の中央に進み出た。


 「この者たちが我が娘八重を連れ戻してくれた。魔道武術大会で準優勝の成績らしく、勇敢に立ち向かってくれたと聞く。感謝を込めて拍手を。」

 この瞬間、先代国王となったカルロス=アリア3世が言葉を発する。

 それと同時にあふれるばかりの拍手が起こる。


 「では、我が孫、女王八重よ。この者たちにそなたから褒美と、この者たちにしかできない、任務を授与してあげなさい。」

 カルロス=アリア3世は八重に促す。


 八重は玉座から立ち、従者から手渡された、紙を広げて読み上げる。

 僕たちは自然と膝間づいていた。


 「辞令、セディア魔道学院1年5組諸君。この者たちを、八重女王直属の近衛兵に任命する。翔太朗=吉田、この者を八重王女直属の近衛隊長に任命する。ミランダ=モナリオ並びにカミラ=ホッス―、この者たち2名を八重王女直属の近衛副隊長に任命する。また王女奪還特別任務報酬として、全員に白金貨200枚、2億マネーを授与する。以上。」


 こ、近衛兵。

 僕たちは、耳を疑った。そんなすごいポジションをもらえるなんて。


 「もちろん、魔道学院での学びは続けてもらう。八重と一緒に。そして、卒業後も八重とともにここにいてほしい、皆ともに、現在も、そして魔道学院卒業後も近衛兵に内定です。満場一致で。」

 カルロス=アリア3世は八重の辞令発表に捕捉する形で付け加えてくれた。


 会場にいる全員が拍手を贈った。

 僕は深々と頭を下げる。


 「では、辞令書と報酬を一人一人に渡します。前に来てください。」

 八重は、丁寧な口調で言ったが、明らかに彼女の目は。

 ―ここに来てほしい。お願い。―

 そんなような優しい瞳だった。


 僕は丁寧に辞令書と報酬を受け取った。

 かなり立派な紙に、書かれていた。

 『辞令、翔太朗=吉田。上記の者、セントアリア王国女王、八重=岩月=アリア直属、近衛兵、近衛隊長を任命する。』

 文章と、セントアリアの印が何か所も押されていた。


 僕、ミランダ、カミラさん、アンソニー、ルーベルト、マリア、リリアン、ルカ、そしてピエール先生と順番に辞令書を受け取った。

 近衛兵は緊張するが。この8人の学級のメンバーと、カミラさんとピエール先生とこれからも居られることの方が嬉しかった。


 即位式は滞りなく終了した。

 最後に、王宮のバルコニーに移動し、新女王の姿を国民に見せるときとなった。

 ファンファーレが鳴り響く。

 ミランダに聞くところによると、このファンファーレを作った人物は舞踏会で踊った、ワルツと同じ作曲者らしい。そして、このファンファーレも5分で、正確にはこれまでに生きてきた時間と5分で作曲したのだそう。


 大きな、大きな紙吹雪の中を八重は歩く。

 バルコニーから下を見れば、多くの国民が埋め尽くされていた。セントアリアの旗がいくつも振られている。


 八重と一緒に、八重の隣で僕はそれを見ていた。

 八重と僕はお互いに顔を見合わせた。


 那ノ国にいたときはこんなことは想像ができなかっただろう。

 本当に八重とまた会えてよかった。


 バルコニーの下。どこを見ても、どこを見ても、八重と僕を受け入れてくれる人々で、溢れていた。


最後まで読んでいただき、本当に、本当にありがとうございました。

第六章はここまでになります。

100話。かつ、大きな流れが一つ終わったようなそんな気がします。本当にありがとうございます。

この冒険とこの物語はまだまだ続けたいと思っているので、少しでも気になる方は是非、ブックマーク登録と高評価をお願いいたします。

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