1/4
誕生
(――俺は、誰だ?)
作り物の人格が、己の心臓に根差すのを感じる。
(そうだ、俺は……俺の名前は、清人)
小清水清人。たった数秒前に、両親がそう名付けたから。
(ここはどこだ? 今は何時だ? ……何を言ってる? 時間って、なんだ?)
頭を抱える。生後数秒にもかかわらず、なぜか青年の姿を模したこの肉体には、布の一枚すら纏っていない。
庇護してくれる父も、母もいない。両親がいたことはわかるが、それは与えられた記憶でしかない。自分は一体、何を頼って、誰を模倣すればいいのだろうか。
自分のことはわからない。ただ、自分が記憶喪失の類ではないことはわかっていた。
(人間って、どうやるんだろう)
――自分は、たった今生まれたというだけの赤子だった。自身の記憶は、自力で紡いでいくしかない。