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プロローグ

舞台中央、一人の老婆。

舞台袖から、黒い服を着た一人の男がやってくる。

暗い照明が当たる。

 心許(こころもと)ない三日月が、古びた黒い廃屋を照らしていた。静かな夜だった。


 元は教会であったこの建物は、今や見る影もない。


 そこにボロ布で作られたような赤い服を着た老婆がぶつぶつと何かを呟きながら一人居た。


「やあ、よい晩だなあ!」


 ふいに老婆に声をかける陽気な男の声。

 突然の気配に驚いた老婆は振り返り、見えた人物に戦慄する。


「魔女狩りオスカー!」


 突如、前触れなく火柱が上がった。うち捨てられた廃屋に、女の悲鳴が響く。女を飲み込み、炎は轟々と燃える。


 黒いコートに身を包んだ男はその火柱をただ見つめる。


 ここ魔女が住み着いた、という噂を聞き、だからこの男はやってきた。


 老婆に扮した魔女を見つけるやいなや、炎を放ち、焼き殺す。不意打ちに、魔女は抵抗すらできない。

 勢いよく燃えさかる火柱の中では、影が人の形に踊っている。あげる断末魔はさながらワルツか。


「踊れ踊れ、俺からの、最期のダンスの申し込みだ」

 

 男はせせら笑う。

 この魔女は雑魚だ。大した力もない。報償もさほど出ないだろう。他の魔法使いなら放っておくかもしれない。だが、この男は違う。どんな魔女でもその存在を許せない。


 やがて炎は収まり、後には黒い灰が舞う。男はその灰を踏みつけた。男の瞳は冷酷で、しかし燃えるような憎悪が宿っていた。

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