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落ちていく感覚があった。
深く、深く、ゆっくりと重力に逆らいながら。
―――まるで、深海の奥底に沈んでいくような。
それからどれくらいの時が経ったのだろう。
時間感覚がないわたしは、これが一時間にも十年かのようにも感じた。
まんなかに明かりが灯る。
それはだんだんと輝きを増すと、あたりの暗闇を掻き分けながら、わたしを上へ上へと引きずり上げて行った。
やがて空間に光が満ちた頃。
冷え込んだ手足に温かな血液がいきわたる様に、わたしの身体は実体を取り戻していった。
―――カオル………カオル………!
名前を呼ぶ声がする。
頭上から聞こえるその声を掴み取ろうと、わたしは生まれたてのその手を伸ばした。