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「馬車が出せない?」
「ああ。町のお偉いさんから要請があったんだよ。なにやら人を探しているだとかで」
宿屋で一晩を明かした翌日、わたしとミズメはネクサスの町を離れるために馬車屋を訪れていた。
「そんな………どうにかならないんですか? こっそり抜け出すとか」
「無理無理! 前にも似たようなことがあったんだが、その時は町の門は閉められ、警備の人数も倍に増やされたんだ。あれじゃ、ネズミ一匹でも外に出ることはできないね。さ、分かったらさっさと新しい宿屋でも探しに行きな」
馬車屋のおやじは「帰った帰った」と言うと、わたしとミズメを部屋から追い出した。
思わぬ事態に呆然とする。
「どうしましょうカオル。門も封鎖されているとなると、歩いて隣町に行くこともできませんよね? 言われた通り、宿屋でも探しに行きましょうか?」
「そうしたいところだけど………」
昨日、宿を訪れに来た男の言葉を思い返す。
彼は不審者、もとい、わたしの事を探していると言っていた。
つまり、町の封鎖が彼、もしくは彼の所属している組織によるものだとすれば、この包囲網はわたしのために敷かれていることになる。
(どうしよう………! 捕まったら何されるんだ………⁉ コンクリ? 生き埋め? はたまた内臓売買⁉)
わたしはあのヤクザみたいな厳つい顔を思い浮かべ、最悪の結末を予想する。
「うがあああ!」
「ど、どうしました⁉」
急に頭を掻きむしったわたしに、ミズメが驚く。
(こんなことになるんだったら、お金なんてケチらずに、普通に買い物すれば良かったぁ………!)
その場にしゃがみこんで頭を抱える。
「………あれ? あんた達は確か………」
無闇に魔法を使ったことを後悔していると、わたしたちのすぐ近くから女性の声が聞こえてきた。
顔をあげると、見覚えがある茶髪の女性がこちらを見つめて立っている。
「あ―――! 服屋の店員さん! おはようございます!」
「よっ、おはよう!」
ミズメがぺこりと一礼する。
すると、昨日訪れた服屋の店員が、気さくに手をあげながらこちらに近寄ってきた。
「あれ、お父さんどしたの? こんな場所にしゃがみこんじゃって」
彼女が不思議そうにわたしの事を見る。
「いや………ちょっと問題が起きて………」
「問題?」
ミズメが答える。
「そうなんです! 隣町に行こうと思っていたんですけど、馬車が出ないって言われちゃって………」
「馬車が出ない? そりゃまたなんで」
「それが―――」
ミズメはわたしたちが先ほど受けた馬車屋の説明を彼女に伝える。
「はー………。そりゃないよ………」
「? もしかしてお姉さんも馬車を利用しに?」
説明を聞いた彼女は、困ったように溜息をついた。
「そうなんだよ………。私もちょうど店を閉めて、隣町に出かけようと思ってたんだけど………」
彼女はハッとして手を叩く。
「そうだ! この後どうせ暇でしょ? 予定を潰されたもの同士、ちょっとお茶でも飲みにいこうよ!」




