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30話 オバちゃんの困惑

『リコよ! オヌシ、やはりやりおったな!』



 極彩色のドラゴンがギョロリと金色の目を動かし、女王の前に立つ騎士――リコを見つめる。その声は威厳に満ち溢れ、でもどこか優しげであった。

 リコが口を開くよりも早く、蹲っていた女王が顔をバッと上げ、その言葉に反応する。



「リコ? そ、それって……村のオバサンじゃ――」



『ああ、その通りじゃ。『ドラゴン・ジュエル』を消し去り、我らをお前から解放したそこの騎士は……我が友リコじゃ。ワシは言ったであろう? お前は我が友に倒されると』



 女王は目の前の騎士を呆然と見上げた。

 すると、騎士のリコが頭のヘルムを手にする。



「もうこれ脱いでいいかな? 暑いし、凄い重いんだもの」



 そう言いながらリコは「ふう」とヘルムを脱いだ。



「――っ!」



 リコの顔を見た途端、女王はその目を大きく見開き息を呑む。

 リコはそんな女王に眉を顰めた。



(な、何? なんて目で私を見るんだ? 私は化け物か! どこまでも失礼な奴だな!)



『どうした、リコよ』



 問いかけてきた極彩色のドラゴンに、リコは口を尖らす。



「いやー。この女王、凄い目で私を見ててさー。なんか私に失礼じゃない?」



「おい、リコっ! 何、ものスッゲー魔獣と普通に会話してんだよっ! この魔獣ってケツァルとネーヴェなのかっ! こんなっ――こんなデカくておっかない魔獣だったなんて聞いてねーよ!」



 腰を抜かしへたり込んでいたカイルが、渾身のツッコミを入れた。

 隣のリドルとガーズに至っては、白目を剥いて倒れている。



(あーあ、かなりビックリしたんだね。無理もないか……そっとしておこう)



 リコは彼らを見なかったことにして、カイルには「そうみたいだね」と笑って誤魔化した。扱いがかなり雑な気もするが、今はカイルに付き合っている場合じゃないのだ。

 リコは、極彩色のドラゴンに目を向ける。



「ケツァルー! 本当にドラゴンだったんだね!」



『なんじゃと! まだ信じておらんかったのか。まったく、オヌシという奴は……まぁ、よい。どうじゃ、ワシの真の姿は?』



 リコはパアッと目を輝かせる。



「スッゴイ綺麗! なんか拝みたくなっちゃうよー。ケツァルー! 後で絶対、背中に乗せてねー。そんで大空の旅へGΟ!」



 ネーヴェであろう真っ白なドラゴンが、慌てて口を挟む。



『リコさんっ! わ、私の姿はどうでしょう? お気に召しませんか?』



「素敵に決まってるでしょう! ネーヴェ! やっぱりピッタリの名前だ! 超モフモフしたいー! 癒やされたいー!」



『えっ! そんなのお安いご用ですよ。なんなら今すぐにでも私の胸に……さあ、リコさん!』



 ネーヴェがリコを抱くべく、モフモフっとした前足をガバッと広げた。

 そんな時、思わぬ者からあり得ない名を呼ぶ声が発せられる。



「さ、里子さん?」



 リコは一瞬ビクッとして、おそるおそる声の主と目線を合わせた。


 その者は――魔族王である。


 リコとは初対面の筈だ。

 だが……彼の目もまた、女王と同じく大きく見開かれ、まるで信じられないものを見るような目でリコを凝視するのであった。

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