25話 オバちゃんの潜入
――王城の中。
リドルたちの言った通り、そこは本当に閑散としていた。
カイルに誘導され、足を進めるリコ。
ここまで人がいないと、普通に城の中を見学に来たみたいな錯覚すら起きる。
侍従たちを一人二人とやり過ごし、庭園を囲む大回廊を抜け、柱の陰に隠れるリコたち。
その目線の先に大きな扉あった。謁見の間の扉である。
流石にその前には兵士が二人いた。
カイルはリコを待機させ、忍び足で近づく。
兵士たちがカイルに気づいた。
その瞬間、カイルは容赦なく彼らの顎に一発ずつお見舞いする。それから、気絶しているのにも関わらず、念には念をとでもいうように魔力でしっかりと眠らせた。
任務完了とばかりに、リコを手招きするカイル。
リコは扉の前に着くと、白目を剥いて眠る兵士たちに哀れみの目を向けた。
「カイル、どうせ魔力で眠らせるなら、わざわざ殴らなくてもよかったんじゃない?」
カイルは「ふん」と鼻を鳴らす。
「せっかく敵陣に潜り込んだのに、肩透かしを食らったんだぜ? なんだかなぁーって丁度、ムシャクシャしてたんだよ。まぁ、ストレス発散だ。いーの、いーの。兵士はかなり鍛えてるんだから。そんじゃ、入るぞ」
謁見の間の重い扉をそーっと開き、カイルが中の様子を窺う。
「中に侍従が数人いる。ケツァルは……っと、玉座の横だな。リコ、ちょっとここで待ってろ」
そう囁きニタリと笑うカイル。それからスーッと広間に消える。
リコは、これから痛い目を見るであろう侍従たちに「ご愁傷さま」と心の中で同情した。
暫くすると、清々しい顔でカイルが戻る。
「片づいたぞ!」
「…………」
リコはジトーッとカイルを見た。
「何だよ。その目は!」
「いやー、楽しんでらっしゃるなぁと思いまして」
「ふん、ほっとけ! ああ、そうだ。コイツら中にブン投げとこ!」
そう言うとカイルは、のびた兵士たちを謁見の間に投げ入れた。
すると、広間の中から怒鳴り声が放たれる。
「やい! ワシとリコを引き裂いたこの悪党め! ここへ何しに来た! というか悪党! さっきからコソコソと何をしておるのじゃ!」
「あ? アンタを取り戻しに来たんだよ。リコも一緒に来てるぞ」
「なっ! リコじゃと! ふざけるな! どうしてオヌシのような悪党なんかと!」
相変わらずの怒鳴りっぷりにリコは微笑む。
(ふふっ。よかった……元気そうだ)
その怒鳴り声は――リコがずーっとずーっと聞きたかった声。
大切な友であるケツァルの声。
リコは心躍らせ、謁見の間に飛び込むのであった。




