24話 オバちゃんの行動開始
リコとカイルは、王都に宿を取り身を潜めていた。
コロシアムでの出し物の日を、ケツァルを奪い返す日を待つ為に……。
潜伏の間、宿や買い出しに行った店の様子が、どこかおかしいことにリコは気づく。
王都の民――特権階級を持たない者たちが、皆ピリピリしているのだ。
その理由は単純明快。
国のあちらこちらから聞こえてくる魔族の報復の噂が原因であった。
そこにコロシアムの一件も加わり、次ぎは王都が狙われると民は考えたのである。
いくら傀儡石が無敵であっても、すべての民が持っている訳ではない。死を覚悟して襲ってくる魔族に、生身の人間が敵う筈がないのだ。
今まで魔族にしてきた残酷な仕打ちを、民は後悔し始めたのである。
リコは、何を今更と思う反面――後悔することで初めて己の非を認められる――だから、この後悔が人間を変える第一歩だと彼女は感じた。
◆
重いムードが漂う王都で、ヤキモキしながら待つこと5日目、とうとうその時が来たのである。
コロシアムの出し物の日、王都の緊張は頂点に達する。
いつも開いている店は閉まり、通りを歩く者はいない。
きっと民は、魔族の報復を恐れて家で息を潜めているのだ。
そんな中、リコとカイルは王城へと向かう。
人っ子一人いない通りをすり抜けて王城に着くと、主人が不在である白亜の城は、ひっそりと佇んでいた。
リコはカイルと共に、城の裏手にある裏門に回る。
二人は石垣の窪みに身を隠すと、カイルが頭だけ出して門を窺った。
「おかしいな。兵士がひとりもいない」
リコもニュッと頭を出し目を向けると、開け放たれた裏門には、カイルの言う通り誰の姿もなかった。
「どういうこと?」
「分からん」
リコの問いに、首を捻るカイル。
そんな二人に、背後から声がかかる。
「お二人さん。やっぱり来たな」
振り向くと、リドルが腕組みしながら笑っていた。
「お前! どう――」
詰め寄るカイルの口を、リドルは手で塞ぐ。
「――はいはい、落ち着いてー。そんな大声出すと見つかっちゃうよ-」
口を鷲掴みされモゴモゴしてるカイルの代わりに、リコが小声で尋ねる。
「リドルさん、どうしたの? ウサ耳娘を捜す旅に行ったんじゃないの?」
「はっはーん。もちろん、これから行くつもりだよ。でもその前にー、リコさんたちが気になってさー。出し物の日、なんかやらかすつもりじゃないかって」
「そうだ。お前たちが裏門に来ることを見越して俺たちは、ここの門番を買って出た」
今度はガーズがヌッと姿を現した。
「ガーズさん」
驚くリコに、ガーズがフッと笑うと言葉を続ける。
「警備が厳重なのは城の周りだけだ。城に入ってしまえば問題ない」
「そーそー。女王は魔族王をイジメルのに夢中で、城のことなんて二の次。中はガラガラよ。侍従ぐらいしかいないから、元兵士のカイルがいれば楽勝でしょ! 存分にしでかしておやんなさい!」
「さあ、早く入れ。見回りがくるぞ。そうだ。脱出も心配するなよ。ここは俺たちの持ち場だからな!」
肩を組み合いニカッと笑うリドルとガーズ。
リコとカイルは、思わぬ展開に顔を見合わせた。だがやがて、リドルとガーズのさりげない気遣いに嬉しさが込み上げてきて、彼らに感謝を伝える。
「恩に着る」
「ありがとう! リドルさん! ガーズさん!」
心強い援軍に見送られリコとカイルは、王城への潜入を開始した。




