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21話 オバちゃんの2度目の旅立ち

 リコとカイルの旅立ちに、オルガやミル、それに助けた魔族たち、というか数え切れないほどの沢山の者が駆けつけていた。



「王都に行って今度は私がリコを助けたいけど、街を一刻も早く立て直さなければならないから……ごめんね」



 オルガが申し訳なさそうに、スカートの裾をギュッと握る。


 領主のいなくなったこのクスタルは、これからオルガを中心に街の復興を目指すことになった。

 街の人たちはオルガの父を尊敬し慕っていたので、彼女ならきっとやり遂げると喜んで賛成したのである。

 それになんと、リザードマンやドワーフもこの街に残り復興に協力するらしい。もちろん、ミルもだ。

 それから、領主のバカ息子はというと、ちゃんと反省し真人間になるまで、ミルたちのいた地下牢に幽閉ということになったのである。

 一体、いつ太陽の下に出てこられるのであろうか。


 リコは、俯いたままのオルガに優しく語りかける。



「そんなこと気にしないで。オルガはこれから皆の先頭に立つんだから。頑張っていい街にしてね」



「本当にありがとう。リコ」



 感謝を伝えるオルガに、リコは微笑みを返す。そして、彼女の隣にいるミルに視線を移した。

 実はリコ。ミルにどうしても聞いておきたいことがあったのだ。



「ところでミル、素朴な疑問なんだけどさ。あなた、言葉の語尾にニャアはつけないの?」



 ミルは「え?」と目を丸くした。

 そして、笑顔でバッサリ否定する。



「ニャアなんてつけないよ! 確かに私はウェアキャットだけど……そんなのはつけたことないよ! 私はミルだニャア……ほら、変じゃん! あはははは!」



 大笑いするミルの肩を、カイルがガシッと組んでリコを睨む。



「じゃあ、何か? 俺はピョンをつけろってか! リコ、俺たちをバカにしてるのか? なぁ、ミル。このオバちゃん変な奴だろう?」



「きゃははは! へーん!」



「なぁー! あっはっはっ!」



 肩を組みながら笑い転げるカイルとミル。



(そんなに笑わなくてもいいじゃん。ウサ耳男のピョンはともかく、猫耳娘のニャアは心のオアシスだよ! 砂漠に咲いた一輪の花だよ! 何だよもう!)



 リコはそっと拳を握り締めた。



「これこれ、何をそんなに怒っておる。今のはリコの失言じゃぞ!」



 その声に振り返ると、エルフのご老体――いや、長老が苦笑いをしていた。



「長老さん、失言などと! 浪漫を馬鹿にしてはダメです!」



「浪漫とな! ニャアがか?」



 リコは「その通りです」と真面目な顔で何度も頷く。



「あはははは! まったくリコには呆れるわい! あんたはどこかハルカ様に似ておるのう……っと、そうじゃ。リコに報告があったんじゃ!」



「報告ですか?」



「うむ。儂らエルフは、ヨーク村に行こうと思うての」



「ヨーク村ですか? でも旅は危険じゃ……」



 長老は「それなら大丈夫じゃ!」と元領主の護衛たちを呼んだ。



「この護衛たちがな、連れて行ってくれるそうじゃ」



「はぁ?」



 驚くリコを余所に、護衛たちは長老の後ろにピシッと一列に並ぶ。

 そして、護衛のひとりが一歩前に出ると胸を張った。



「ご心配はご尤もです。しかし我々は心を入れ替え、長老様をお守りする所存です。リコさん、ご安心下さい。長老様を無事にヨーク村へお連れします」



「長老様って……長老さん、この人たち一体どうしたんですか?」



「何、怪我を治してやって、世間話をしておったらこうなったのじゃよ」



「はっ。長老様には、なんとお礼を言っていいやら。そして、長老様の為になるお話、我々は目が覚める思いでした。これから生きて行く道筋がはっきりと見えたのです。長老様について行こう。一生かけて恩返ししよう……と!」



 護衛は熱く語った。他の護衛たちも目に涙を浮かべている。



(長老さん……一体、何をお話になったんですか? スゲー懐いてますけど……)



 彼らの物凄い変わりように、若干引いたリコは、笑顔を取り繕った。



「へぇ~、そ、そうなんだ~。よ、よかったね~」



「ということで儂とラドルフは……」



 長老はラドルフを探し辺りを見回す。

 ――因みにラドルフとはティーラの父である。



「む! はぁー。まったく、あんな所に」



 呆れた声を出す長老。

 その視線の先に、街の女性と楽しそうにイチャイチャ戯れるラドルフの姿があった。



「あ、あれは?」



 目を丸くするリコに、長老は肩を竦めた。



「アレはもう一種の病気じゃ。ティーラも心底困り果てておったわ」



「へぇ~。ティーラのお父さんって(女好きの)困ったちゃんなんだー。あはははは!」



 最早、笑うしかないリコ。



(ティーラ。あなた、大分苦労してるのね。めげずに頑張るのよ……ヨーク村で)



 リコは心の中で、また父親に苦労するであろうティーラにエールを送った。



「リコ! そろそろ出発するぞ!」



 カイルから声がかかる。



「分かった。それじゃあ、皆さん。行ってくるね」



 リコが別れを告げ馬車に乗ろうとすると、オルガから待ったがかかった。

 オルガは、真剣な表情でリコを見つめる。



「リコ……ここにいる皆と話し合ったのだけど、リコの傀儡石を石コロにしちゃう力。あれは女王と対決するまであまり使わない方がいいわ」



「どういうこと?」



「リコが魔族をひとりでも多く助けたい気持ちは分かる。だけどね、派手に動いて女王の耳にでも入ったらリコの命が危ない。王都に着く前に殺されてしまうわ。リコは魔族や私たちの唯一の希望なの。だから十分、気をつけて。お願いよ、リコ」



 胸で手を組み懇願するオルガ。

 リコはオルガの手をそっと握る。



「分かった。気をつけるね」



 オルガは頷き、ニッコリ笑う。



「この街で魔族が傀儡石から解放されたっていう噂は、どんなに気をつけても流れてしまうと思うの。そこで! 嘘の情報を一緒に流して敵を攪乱しとくからね! バッチリ任せといて!」



 気が強くて可憐な少女の笑顔に見送られ、リコとカイルはクスタルを後にするのであった。

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