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潜る
真っ暗な海を
たゆたう
暖かな温度で
自分自身を認識したのは、意識の外から響く柔らかな声と、ゆったりとした鼓動だった。
「あなたは私の宝物。
他には何もいらない。
どんな境遇だっていい。
あなたがいてくれたら。
あなたいてくれるなら。」
覚醒した意識の中、周りを見渡してみる。
真っ暗だ。
何も見えない。
そして気付く。
規則的な鼓動。
自分と、自分を包む何かの、
心臓の音。
あぁ、、、
母親のお腹の中だと。
この世界の、母親の。
何も見えない。
でも、確かに感じる暖かな愛情。
動かすべき身体は未成熟で、
思う通りには動けない。
「ふふっ・・・
随分とヤンチャみたいね。
また蹴ったわ。
男の子かしら?
どんな子だっていい。
元気に、そぅ。
この世界を生き抜ける、丈夫で元気な子になってね。
私の愛しい子・・・
しがらみや、環境なんかに負けない、強い子になってね・・・」
そうしてまた、まどろみの中へと沈んでゆく・・・