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魔導世界の無能者剣士  作者: 遠石 隻斗
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第3話 龍人の女

今日3話目です。後2話ほど今日中にあげようと思います。

先の騒動から早10年、あの一件は王により完全に隠匿され、第四王子は病のため亡くなったということになった。


 その遥か遠くのある場所で走り回る顔の全てが隠れるほどのローブを着ている一人の人間がいた。


「待て。今日の食料」


その人間は、強さの象徴とまで言われる竜種の魔物を追っていた。

『魔物』それはこの世界にある膨大な魔力から発生する動物のようなもので、いづれも魔石と呼ばれるコアが存在する人類の天敵である。


〔グラァァォァァ〕


竜種は得意技であり、必殺技でもあるブレスを使用し、その人間を一撃で屠ろうとする。

だが人間はその手に持っている剣を上から下に下ろすことでブレスを斬る(、、)ことで無効化してしまう。


〔グラウッ!?〕


竜は自慢の一撃を防御されたことに驚き、体を硬直させてしまう。その隙をその人間が見過ごす訳もなく、勢いよく飛び上がり竜種の首を搔き切る。

首を刈り取られた竜は、一瞬で絶命し力無く地面に転がり落ちる。


「それにしても竜なんていつぶりだ?最近は獣ばっかだったからな」


その人間は丁寧に竜の死体を解体し、心臓部分にある魔石をポーチに積める。それと同時に薪を集め、ポーチから鉄の棒を取り出し竜種の肉を指す。

薪を並べて剣を抜き、薪で作った山に剣を差し込む。


「《火の剣》」


ボウッ!と音がし薪に火が灯る。その上に先程準備した肉を置き、串焼きにする。


「・・・」


その人間は、特になにもすることなく、ただ肉が焼けるのをじっと待つ。

溢れんばかりの肉汁が出てきたこと確認した人間は肉に一気にかぶりつく。


「うむ。繊維質だが食べられないことはないな」


人間は、被っていたローブのフードを取り払う。そこには腰まで伸びる綺麗な赤髪で、透き通るような青い目の人間。この人間は()王国第4王子グレイブだった。

だがその顔や体には小さいものからおおきいものまで様々な傷があり、さらに左目が切られて閉じられていた。だが整った顔は健在しており相変わらず中性的な顔立ちをしている。髪が長いせいでほとんど男女の区別がつかない。難点といえば身長が極端に低い程度だ。


「ん?なんだ?」


ちょうどグレイブが竜種の肉を平らげたと同時。グレイブの気配感知の範囲内に大きい気配が現れる。

その気配の正体はまっすぐグレイブのいる方向に向かってくる。

どうやらあちらはすでに此方を探知しているようだ。

数秒後、目の前に現れたのは全長25メートルほどある白く綺麗な大きな龍だった。


「大きいな」


グレイブは、おおよそだが気配の大きさでその生物の強さや魔力の量を知ることができる。その龍は、いつもこの辺りにある魔物よりも少し強いくらいの大きさだった。


「いくぞ!」


グレイブが、腰に挿してある剣を抜き戦闘態勢に入る。


〔え?女の子!?ちょ、ちょっと待ってください!!〕


不意に龍が声を発した。本来龍種には声帯は存在しない、だから話すことは出来ないはずなのだが少し興味があるのでグレイブは戦闘態勢に入ったまま話しかける。


「何だ」

〔え、あ、はい。私は龍人族のライラと言います。出来たらあの、飛んでいるのは疲れるので降りたいのですがだめです?〕

「駄目だ、そのまま要件を言え」


グレイブは、気配感知で殺気がないのはすでに確認済みだが以前それに軽々しく近づいて大怪我した経験があるので決して油断しない。

龍は、しばらくオロオロしたあと決心したように話し始める。


〔改めまして私は、龍人族のライラと言います。一応族長の娘で貴方人間の立場で例えると王女をやらせていただいてました〕

「そうか、それでその王女様が何故こんなところに?」


グレイブは、相手の一挙一動をくまなく観察する。


〔えーとですねぇ・・・迷いました〕


龍は、空に飛んだまま恥ずかしそうに頬を赤らめる。


「そうか、それで僕に道案内をしろと?」

〔まぁ、そんな感じです〕

「それで?対価は?」

〔私の持っている宝を差し上げます〕

「いらん」


何しろここは見渡す限り木しかない。たとえその環境でどれだけの大富豪になったところでそれを使うことができなければ全く意味はない。


〔え?えーと、あれ?人間ってお宝とかが大好きなんじゃないんです?〕

「いや、その認識はあまり間違ってはいないと思うが」

〔では、何故ですか?〕

「僕にはそんなもの必要ないからだ」

〔じゃ、じゃあなにをお渡しすれば〕

「お前の首をもらおうか」

〔フェ!?わ、わかりました。できれば痛くしないでください!〕


空に飛んでいる強さの象徴のはずの龍が目に涙を溜め目を瞑る。


「冗談だ」

〔か、からかわないでください!〕

「こんなに話したのは久しぶりでな。そうだな・・・少し話をしないか?」

〔え?いや、そんなことでいいのですか?〕

「ああ」


 ライラは、ゆっくりと高度を下げグレイブの目の前に降り立つ。

 グレイブが今欲しいものは情報。ここはどこなのかまたどんな場所なのかが知りたい。


〔あの、一瞬だけでいいから後ろを向いていて頂けますか?〕

「わかった」


グレイブは、剣に手をかけたまま後ろを向き少し待つ。


「もう、いいですよ」


 グレイブが、後ろを振り向くとそこにはサラサラとした白髪の20歳くらいの女性が立っていた。 急に出てきた人間に警戒して剣を抜こうとするが気配でわかったためその手を止める。


「ライラお前人間だったのか?」

「はい、だから言ったじゃないですか龍人(、、)だって」

「なるほど獣人みたいなものか」


 グレイブは、10年ぶりに見るまともな人をまじまじと相手が女性だということも忘れ観察する。


「あの、流石にそんなに見られたら少し恥ずかしいのですけど・・・」

「ああ、すまない。なるほど基礎的な体の作りは、男性とほぼ同じか。だがこの膨らみは、師匠にはあったが僕にはないんだよ。何でできているのだ?」


 グレイブは、女性の特徴の1つである2つのお山を指先でつつく。感想を言うと、とても柔らかかった。


「ひゃあ!や、やめてください!!女の子同士でダメです!」

「女の子?僕は、男だぞ」

「え?えぇぇぇ!?でも私より身長低いし、声も高いじゃないですか」

「・・・」


 グレイブの身長は、高くない。いや、むしろ低い。かなり低い。普段は特に気にしてはいないが言われると傷つくのだ。


「すいません。それであの〜なにを話すのですか?」

「そうだったな。取り敢えずだ。10年ほどここにいるが、ここはどこなんだ?」


グレイブは、顔を上げライラに向き合い自分が今一番知りたい情報を入手するため会話を開始する。


「じゅ、10年!?あなた何歳ですか!?それよりあなたも迷子だったんですか!?」

「今は、確か18だが。それがどうかしたのか?」

「じゃあ8歳の時からここに・・・どうしてそんなことになったのですか!?育児放棄ですか!」

「まぁ、そうだな。恥ずかしいことに魔法系の祝福が一つもなくてな」

「ま、魔法が使えない!?でもあんな空高くに飛んでいたじゃないですか」


と言いグレイブが竜と戦った時に飛び上がった20メートルほどの場所を指でさす。


「見てたのか、それはまぁ、頑張ったからな」

「それもう魔法要らないんじゃ・・・」

「いや、僕としては魔法が欲しいな」

「何故ですか?」

「かっこいいじゃないか、魔法」

「そうですか?そこまでですよ、めんどくさいですしそれより剣。かっこいいですね!昔お母さんに読んでもらった童話の勇者さまが使ってたのも剣だって聞いてますし!そっちの方がかっこいいし便利ですよ!」


 ライラは心底めんどくさそうに言う。だがそれも魔法を使えないグレイブとしてはとても羨ましい。まさに隣の芝生は青い感じだ。


 そのまま座り数時間話しあった後、魔物が活発に動き出す夜になる。


「もうすぐ夜だな、家に戻らないと」

「そうですね〜ってお家あるんですか!?」

「まぁ、自分で作った小さいものだけどな」

「いいですねーお家。私ですね他の龍族の方々より魔法が使えたのたのでいづらくて。適当に飛んでいたら転移魔法陣に飛ばされちゃったんですよね〜」

「そうか」


そう言いながら期待の目でグレイブをチラチラと見る。


「目に何か入ったのか?」

「そのーできればですね。お家に連れてって頂けたら嬉しいなーなんて」

「どうしてだ?ここにいればいいだろう?」

「いや、こんなところにいたら私、秒で殺されちゃいます!」

「いや、そうでもないと思うぞ。だってお前普通の龍とは全然性質が違うからな。そうだな。1分くらいは持つんじゃないか?」

「1分!?そんなに生きられるのですか!?」


 あくまで龍が最強の存在と認知されているのはグレイブが前いた場所の話だ。

 ここでは、元いた場所のような法則は通用しない。あっちでは他に決して負けることもない伝説の魔物でもここではゴブリンやスライム以下の最弱中の最弱。

 ゴブリン達と違い図体がでかく隠れることすらできない、スライムと違い圧倒的な耐性を持たない。その上繁殖能力も低い。


「そうですよねー」

「そろそろ夜だな。行くぞ」

「へ?どこにですか?」

「何を言ってるんだ?僕の家にくるんだろ?」

「え!?いいんですか!?」

「別に構わん」

「ありがどうございます!!」


 まだ見ぬ家へと向かうのだった。

ありがとうございました。

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