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魔導世界の無能者剣士  作者: 遠石 隻斗
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第2話 無能者

2話目です。よろしくお願いします。

無能(、、)それは、この世界において全人口でも片手の指の本数ほどしかいない魔法系等のスキルを授かることができず天から魔力を授けられなかった者のことを言う。

グレイブが朝起きて自身の祝福を見て最初に思い浮かんだ言葉である。

祝福の確認は念じるだけでカードとして具現化する。

グレイブは、カードを見てかつてないほどの驚きを露わにする。いつもの無表情を崩してしまうほどに。


「・・・」


グレイブは、ベッドから勢いよく起き上がり自分の祝福が本当にそれかどうかしっかり確認するために顔を洗う。もちろん何度やっても変わるわけもなく認めざるを得なかった。

だがグレイブは、


「まぁ、いいです」


 対して気にしていなかった。

 グレイブが天から与えられた祝福は、


剣術 特級、気配感知 真実の目


 文献でもみたことのない特級という階級の祝福を複数個もっており、技能系祝福でありながらレア度の高いものもある。

 グレイブは部屋着からいつもの動きやすい服に着替える。するといつも通りの時間にクロエが部屋にやってくる。


「おっはよーグレイブどうだった祝福!!どうせお姉ちゃんより良いものもらったからいってないんでしょ!そうだよね〜グレイブ何でもお姉ちゃんより出来ちゃうもんね〜いいよいいよ気使わなくても!!・・・」


と一人でずっと会話を続けている。その間グレイブは、いつもの真顔で自分の姉を見つめる。


「そうだよねそうだよね!こんなダメなお姉ちゃんでごめんね、ってどうしたのグレイブ」

「そこまで言われると困るのですが・・・」

「え?それより見せてよカード」


 グレイブは、自分のカードを取り出しクロエに見せる。


「これですよ、僕の祝福」


クロエはグレイブのカードをまじまじと見つめる。


「え、ぐ、グレイブ魔法系祝福ないじゃない!!」

「そうですね」


 グレイブは、頭を下げる。クロエはそれに耐えられなくなったのか目に涙を溜め走り去って行く。

 そこにルルが部屋に入ってくる。

 グレイブは覚悟を決めたように自分の身の回りの整理を軽くする。


「ルルここにある物を全部片付けてくれませんか?」

「どうしてです?」

「ちょっと旅にでも出ようと思いまして」

「た、旅!?なぜそんな急に!国王様の許可は頂いたのですか?」

「頂いておりませんが。まぁ、そうですね。多分大丈夫です」


 グレイブは、4男とはいえ王族。王族から無能者が出たとならば大変なことになるだろう。そのことはすでに察していた。王家の威厳の為にも自分が残ることは許されない。

 幸いにもまだグレイブの顔はまだ公に晒されていない祝福の儀の祝福を授かり次第パーティを開くと言われていた。本当に都合がいい。


「そうですか、いつ頃出発されますか?」

「すいません。それはわからないけれど今日中には出ますよ」

「了解しました。最後のお仕事頑張らせて頂きます」

「今までありがとう」


 グレイブは、立て掛けてある剣を腰に刺し少量のお金をポーチに詰める。


「じゃあ、食事の時間だ!あとは頼みますよルル」

「うぅ、はいぃ」


 後ろを振り向くといつも笑顔のルルの頬に涙が流れ落ちていた。

だがグレイブは、真っ直ぐに食堂に向かう。どちらにしろもう後戻りはできない。


 食堂の前に立ったときいつもより空気が重たく感じ、開けるのを一瞬ためらったが気合を入れ一気にドア開ける。


「グレイブ到着しました」

「とりあえず座れ」

「はい」

「全てクロエから聞いた」

「はい」

「まぁ、とりあえず飯を食え」

「はい」


 今日は用意されていたものを初めて平らげる。家族と取る最後の食事。グレイブは一口一口をめいいっぱい噛み締めた。


「ごちそうさまでした」

「美味かったか?」


父さんが笑顔で、食事の感想を聞いてくる。それに思った通りの発言をする。


「はい、非常に美味しかったです」

「そうか、それは良かった・・・すまないなグレイブ。やれ!」

「《形変わりて其の者を捕縛せよ!水の拘束(ウォーターバインド)》」


 グレイブの体に水の紐が巻きつこうとする。元よりグレイブに対抗する意思はないので簡単に拘束される。


「最後に何か言うことはあるか?」

「はい、では少しだけ。お父様、お母様、この国に役立つどころか迷惑をかける存在に生まれて来て本当に申し訳ございませんでした。今まで本当にお世話になりました。

お姉様にお兄様不甲斐ない弟で申し訳ありませんでした。僕は、お姉様やお兄様と過ごした日々は忘れません。お世話になりました」


 ほぼほぼ無表情だったグレイブの頬に大粒の涙が流れ落ちる。周りの人は皆下を向いて何も言わない。


「・・・じゃあなグレイブ《転移》」


 魔法を使用した瞬間グレイブの身体が消える。最後の消える瞬間グレイブは今まで一度も見せてこなかった笑顔を家族にうかべ。


「泣かないで」


 そう口を動かして消えていった。

 

 グレイブが消えたあと王族が揃って涙を流す。


「くそ!息子一人救えずなにが国王だ!!」

「ごめんなさいグレイブあなたは、悪くないのに全部私のせいなのに」

「くそ!」

「弟よ、すまない」

「・・・」

「グレイブぅぅう」

「ぅぅぅぅぅ」

「うわぁぁぁぁん」


 その後もしばらくの間鳴き声が王城に響いていたという。



ありがとうございました。

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