雪 2
《雪が降った次の日は》
「大丈夫?」
心配そうに私の方を見てくるのは、王である私と同じくらいの地位にいる、タクト。
昨日雪が降り、私は外へ出た。ちょっとしたことがあって、私は雪まみれになった。風邪なんてひく訳がない、と高をくくっていたのが悪かった。私は、熱を出した。我ながら、情けない。
「…うん」
「そっか。とりあえず、何か食べといた方がいいね。何食べる?」
「食欲ない」
「食欲がないのは判るけど、少しでも食べないと。何がいい?」
「……リンゴ」
「判った。むいてくるからちょっと待ってて」
タクトが部屋を去り、一人になった私は、部屋がやけに広く感じてしまった。タクトはすぐに戻ってきたが、ほんの少しの間一人になっただけで、私は淋しさを感じた。
駄目だな…。そうとう弱ってるみたいだ。
リンゴを食べて、タクトに渡された薬を飲む。
「まったく。雪で遊んで風邪ひくなんて…」
「遊んでない」
思わず、真剣な声で言ってしまった。条件反射だと思ってくれるかな。
「遊んでないの?」
駄目だった。案の定、タクトはさっきの言葉が条件反射によるものではないことに気付いた。そして、私に本当のことを話すよう、尋ねてきた。
「じゃあ、何をしてたの?」
「丘に行って、久々に草原の公園に行ってみたの。そしたら、小さい女の子が男の子たちにイタズラされてて、マフラーを木の上に乗せられちゃってたの。で、女の子が浮遊魔法でマフラーを取ろうとしてたんだけど、まだ小さくて力がうまく使えなくて、マフラーがよけいに枝にからまっちゃったの。だから、私が木にのぼって、マフラーを取ってあげたの。それはいいんだけれど…足を滑らせて、木から落ちて…で、雪まみれ」
少しの沈黙。呆れられていないことは判る。久々に、タクトとの沈黙が気まずく感じる。
「どうして昨日言わなかったのさ」
「…………」
私は答えたくなくて、黙った。
「もしかして、今僕が確認しようとしてることを、質問として聞かれたくなかったから?」
「……何を?」
「どうして魔法を使わなかったのか。アヤが魔力を使いたがらないのは判ってるよ。でも、昨日は聞いてたかもしれない。アヤの判断は正しかったよ」
私は、タクトの話を聞きながらうとうとしていた。
意識が眠りの中へ引きずりこまれる中、耳元でタクトの囁きが聞こえてきた。
「――――」
ほとんど意識を失っていた私は、タクトが何て囁いたのか、判らなかった。
―――fin
期末試験が終わり、机の周辺を少し片付けていたら、約一年前に書いたssがいくつか出てきました。
読み返してみると、恥ずかしい話ばかりでした。しかしここに載せたニ本は、恥ずかしいながらも気に入った話だったので、サイトにも載せることにしました。ちょうど昨日(H24 2/17)雪が降ったのもありますしね。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
雪が降ったある日
…H23 1/24
雪が降った次の日は
…H23 1/26
サイト掲載…H24 2/18
オマケが本館にて掲載してあります。よろしかったらそうぞ♪