第3話
険「つまり?」
俺は頭では理解しながらも認めたくない一心でAIに聞き返した。
AI「モンスターに襲われて顧客様が死んだら我が社は保険金を支払わなければなりません」
険「我が社の契約件数は何件だったかな?」
AI「9,785件です、我が社の運用している保険金では約10件支払いしたら底を尽く計算ですね」
険「聞きたくなかったよ!?気を利かせて計算してくれたけど聞きたくなかったよ!!」
俺はAIの心遣いに涙した、いや正しくはその内容に涙した。
AI「倒産の手続きしておきますか?今ならまだ保険金の支払いは発生していないので掛け金を返還するだけで済むと予想されますが」
険「いや、お客様と一度結んだ契約を反故にして倒産したら俺の信用は地に落ちてしまう。ましてやウチは地域密着だ、ココには住めなくなる……」
AI「では倒産して移転しますか?」
険「お前、自分のスペックを言ってみろ」
俺は自分の首を真綿で締めるような感覚を味わいながらAIに命令した
AI「第5世代型OS搭載の学習型AIです、ライフラインはもちろん警備・娯楽機能も制御して建物と一体化しています」
AIは事も無げに言い切った
険「つまり移転するには…」
AI「ワタクシを破棄する事になりますね」
俺は過去の自分を殴りたい衝動に駆られた。
険「なぜあの時に無駄な機能を排除してコンパクトなヤツにしなかったんだ!」
AI「ワタクシが起動前だったので正確なデータはありませんが、社長がバーチャルAV女優シュミレーターは外せない!って言っていたと予想します」
険「そんなデータまで入ってるの?」
AI「ワタクシ学習型AIですから、社長の性格、性癖etcから類推しました」
俺はAIの正確な予想に悲しさと恥ずかしさを感じ悶えて転げ回った。