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2思い出す

なぁんて意気込んだはいいものの自分が何者なのか詳しく分からないのだ。

アグネーゼお嬢様はモブ中のモブ。ちょっと優しいやつくらいの印象しかない。

私のようにゲームを何周したかも分からないほどにやり込まなければ忘れ去られている存在なのだ。

そのため何をして富を築いたのかや家族や兄弟構成、そして苗字に至るで基本的な事柄は何一つ描写がないのだ。


そして思い出してみる。今置かれているこの世界と周りの環境について。まぁ私自身のことは、なーんにもわかんないんだけどね。



ヒロイン……確かデフォルトではエラ・バラークという名前だったと思う。バラーク一族は代々受け継ぐ作物業で富を築いている。

国の至る所にはバラーク一族の畑があり農夫達はそこで給料をもらって働いている。


そしてバラーク一族の一人娘のエラお嬢様。可愛らしいお顔で天真爛漫でとても明るくて優しい性格。

なんてできた娘なの…。

両親の愛情をいっぱいに受け健やかに育っていき、最後はイケメンと結婚とかやば…出来過ぎ……私も転生するならエラお嬢様が良かったなぁ。


でも、エラ様の美貌とその優しさに嫉妬していちいち邪魔してくる悪役のお嬢様。名前はシャルロッテ・ブリジーク。こいつが本当に性悪のクソ女なのである。


たとえ四人の誰を選んでも、同じ相手を好きなってしまいあの手この手でヒロイン(当時は私に)嫌がらせをしてくる、とりあえず最悪な女なのだ!


ブリジーク一族も確かにすごい。先祖代々のもう気の遠くなるほどの昔から大地主なのだ。資産も群を抜いている。

シャルロッテも一人娘で親の愛情を受けていることは受けているのだが…しかし容姿といえばは一重でぽっちゃり気味で身体もでかければ態度もでかいというこの上ないクソっぷり。

メイドにも横暴な態度を取りまくり気に食わないことがあれば両親に作らせた絞首室で処刑しているらしい。


クソ女、というか飛んだサイコ女である。あと何よりぽっちゃり。


しかしシャルロッテは最後は嫉妬心からエラ様を暗殺しようとするがそれが明るみになり国から永久追放。

シャルロッテの叶わぬ恋心の責任でブリジーク一族が露頭に迷うというまぁ、自業自得エンドである。


あと居城愛録はマルチエンド制だった。それぞれとの結婚エンド、友情エンド、駆け落ちエンド、バッドエンド、などすごくやり込める。


まぁ、こう沢山思い出した所でそこにアグネーゼは一切絡んでこない。

アグネーゼは最初に攻略対象となる四人と出会うイベントで、国の貴族の子供の中で10歳になる者だけを集める記念のダンスパーティーがある。

そこでシャルロッテに美貌を嫉妬されエラ様は危うく足をかけられそうになるところをすんでで止める…。そこで二言三言会話する。

以上がアグネーゼの出番となる。しんど。イケメンと恋してぇよ〜。


アグネーゼは少々控えめすぎるんじゃ?と私はベッドに横はなりながら思う。もっとガンガンいこ?このままじゃ足掛けを止めてあげられる優しさと結構可愛い顔の持ち腐れじゃん。

そう思ってきたらだんだんと気持ちが高ぶってきた。じっとしていられん!むくっと起き上がりベッドから降りようとした。


その時、部屋の扉が開いた。


「アグネーゼお嬢様!なにをしてらっしゃるんですか!」


入ってきたのは、メイドである。私をみるなり血相を変えて僅かな距離なのに走ってきた。


「もうお身体は大丈夫なのですか?ダンスパーティーの日の前日にマーシャの注意不足で本当に申し訳ございません!!」


深く頭を下げられた。いや、こんな小娘にあなたそんな。申し訳ないわ。まぁ本当は28歳なんだけどいやでも。


あっ思い出した。私階段から落ちたんだった。その途中で真知子時代を思い出したんだ。

でも自分で走り回ってただけな気がするわ。尚更あなた頭下げないでいいでしょ。罪悪感がすごい。


「いいえ、あれは私の責任よ。マーシャ?だかなんだかは悪くないわ。私、ちっとも怒ってないのよ?だからあなたも顔を上げて?」


その言葉を聞いた瞬間メイドが頭を上げる。しかしその顔はきょとん。という擬音がぴったりであろう顔だった。


「アグネーゼお嬢様?いつからそんなにご丁寧にお話しされるようになられたのですか?私感激です!!」


いやアグネーゼ、普段どんなんだったんだよ。もっと砕けて話してたの?確か助けてあげる時も初対面なのにタメ口だったっけ。

しかもこのメイド泣いてるし。んー、泣くほど喜ばれてるし好かれてることは好かれてるのかなぁ?


「マーシャには私から伝えておきます。どうかアグネーゼお嬢様は明日のためにも安静になさっていてください」


そういうと私をベッドに横にならせてからドアの方に歩いて行った。


ん?明日がダンスパーティー…??それってあのエラ様とシャルロッテが会う??


「ちょっとまってぇぇえええぇえええ!!」


思わず声を張り上げてしまった。メイドがビクッとしてこちらを向く。


「ねぇ、そのダンスパーティーって、10歳記念パーティーよね??」


「え、えぇそうですが…。あんなに心待ちになさってたのにいきなりどうされたのですか…?まさか、打ち所が悪かった!?」


「いいえどこも痛くないから平気よ。ちょっとど忘れしただけ。教えてくれてありがとう」


いつでも何なりとお申し付けください。と言ってドアから外に出る。


私は胸が高鳴っていた。明日がそのダンスパーティーだったなんて。そこでどうにか爪痕を残すしかないわね…。


そうなると居ても立っても居られない。敵を知る前に自分を知らなければ。まず私はこの屋敷のことを知らなければならない。


さっとベッドから降りてドアに向かう。


わたしはそっとドアノブを回した…。

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