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ほうき星の進化種  作者: ゴリステンレス
第一章 時計の針の狂う音
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一日の終わり


「ただいまー」


 出迎えてくれる人はいない。癖で言ってしまっているが、俺はこのアパートに独りで暮らししているのだから、出迎えが無くて当然だ。寧ろあったら怖い。

 この一人の感覚を感じる度、家族の元、というより祖父から離れたい一心で駄々をこねた思い出が甦る。それの代償が、高校の選択権の剥離なのだが。

 制服から私服に着替えるなり、ベッドに身を委ねる。

 今日は色々な情報が脳ミソに焼き付いた。

 進化種(エヴォリア)悪性精神体(あくせいアストラル)、虚構世界。本やネットで生まれたファンタジーが一斉に襲いかかってくるような、言葉にしにくいそんな感じ。


「いやー、ワケわかんないね」


 そう言って俺は天井に向けて手をかざす。そして少しだけ掌に力を込め、ある物体をイメージする。

 そうして掌の先に現れたのは、黒い円形の何か。

 どうやら俺のエヴォリアとしての能力は永夜と似た者らしい。詳しく調べた訳では無いが、見た限り大きく差別化出来るほどでは無いという

 その力とは、影を操る能力。影を実体化させて攻撃したり守ったり、万能な能力だと永夜は誇らしげに語っていた。

 俺はそれに加えて影を創ることも可能な様で、そこから永夜のような黒い紐を出せたり出来る。

 一度永夜の指導の元に試してみたら、三十センチ程の細い紐が出てきた。先端は鋭く、紙のような薄さ。見た目は永夜が操っていた物とそっくりだった。

 二回目行こうと提案されるも、その一回で俺はダウン。凄まじい脱力感と共に体が地面に吸い寄せられた。

 永夜によると、誰しも体の中には魔力と呼ばれるエネルギーが備わっていて、それを使いすぎると体に疲労が襲いかかってくるらしい。内蔵している魔力は人によってまちまちで、どうやら俺は魔力が下の下、更にその下の可能性もあるようだ。

 初能力で浮いた足が地に堕ちる勢いだった。

 永夜もそれでは困ると、あるアイテムを貸してくれた。

 俺はそれをバッグから取り出す。それは赤く、半透明な宝石。ルビーかと思ったが別物らしい。

 魔力の内蔵量は、魔力を消費することで増やせるという。

 どういうこっちゃと思ったが、筋トレをイメージ、というかそのまんま筋トレと一緒だ。体を痛めつける度、上限が上がっていく。

 なので毎日この宝石に魔力を込め続ければ、少しずつながら魔力量が上昇していく、という話。

 その辺の石じゃあ駄目なのかと聞くと、この宝石はかなり特殊らしい。

 宝石の中には魔力を餌にする微生物が一匹だけ居るらしく、その微生物が餌である魔力を食べ続けてくれるからこそ、気兼ねなく魔力を注入出来るとのこと。

 もし普通の石にやったら、それが命を持って動き出すという。

 これにもなんで?と疑問を投げ掛けたが、返答は知らないという言葉だった。

 魔力には不思議な現象が多く、それを研究しようにも一般人には秘密にしているため、簡単に実験が出来ない。仮説と疑問が増えるばかりだ、と永夜は溜め息を吐いていた。

 俺は赤い宝石を掲げて天井のライトに透かす。

 やはり見た目だけだとルビーにしか見えない。もう微生物にルビーって名前でもつけようか。


「しばらくよろしくな、ルビー」


 なんて言って、挨拶がわりに魔力を込めてみる。

 込めてる側に違和感は無い。疲労感も無く、順調と言える。

 しかし、俺の魔力を微生物が食ってると思うと、なんだか育成ゲームでもやってる気分だ。たまごのあれみたいな。

 その瞬間、体全体に重くなる感覚が襲いかかった。

 この感覚は知っている。どうやら能力を使ったときと同じ、魔力を使いすぎた様子。

 …たった十秒程度だぞ?

 ハッキリ感じた自身の限界に、深い溜め息が出る。

 どうやらルビーとは長い付き合いになりそうだ。

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