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ほうき星の進化種  作者: ゴリステンレス
第一章 時計の針の狂う音
5/7

エーヤのアトリエ ~常闇の刻の進化種~

 再び俺は、あの謎の部屋にいる。


「少し待ってて」


 女性が指を鳴らすと何処からともなく、椅子が二つ現れた。驚きながら、それに座らせてもらう。

 ここは彼女のアトリエ、つまり仕事場なんだとか。

 んで、彼女曰く、自分は魔女だという。つい口から愛想笑いが出てしまった時、恐ろしいほど睨まれた。魔女コワイ。


「はい、どうぞ」

「おっ、ありがとう……ございます」


 彼女からお洒落なコップが渡される。中にはお茶が、そのコップに恥ずかしくない量だけ入っていた。


「まずは飲んでリラックスして頂戴。今から話すのは、多分刺激が強いと思うから」

「はあ、では、いただきます」


 すっと一口。

 美味い。こういうのは詳しくないが、美味いものは美味いと分かる。


「如何かしら、私のお気に入りのミントティーなのだけれど」


 ミントティー?

 俺はジロッと鍋を見る。中は緑色に発光し、ポコポコと鳴っている。まさか、アレから…?

 視線の意味を理解したのか、女性が口の前に手を当て、フフッと笑う。


「心配しなくても大丈夫よ。アレ、どんなもの入れても緑色に光るのだけれど、あくまで一時的なものよ。取り出す時に元に戻るし、品質に変化は無いわ」

「はぁ。んじゃあ、その泡立ってるのは?」

「沸騰してるよ」

「……なんか、凄いっすね」


 欲しいとは一片も思わないが。

 二口目をいただく。相変わらず美味いのだが、あの鍋から出てると思うと、味よりそのテクノロジーに感動を覚える。


「さて、そろそろ話してもいいかしら?」


 女性が俺の顔を芯に捉える。その雰囲気は真剣そのものだった。


「はい、お願いします」


 それを皮切りに彼女は話だした。


「まずどれを説明するにしても、先に知っておいてほしいのがあるの。それが私たち、進化種(エヴォリア)のこと」


 エヴォリア、彼女が一言だけ言っていた言葉。あの時、まったく真意を知らなかったが、どういう意味なんだ?

 女性は再び指を鳴らす。すると煙と共にホワイトボードが姿を表した。

 そしてもう一度鳴らし、ペンを掌に出す。まるで魔法のような芸当に心の中で感動する。

 女性はホワイトボードに一般人という文字と進化種という文字を書いた。進化種にはエヴォリアとルビが付与されていた。


進化種(エヴォリア)とは、一般人という殻から抜け出し、特殊な力を持ってる人を指すの」


 女性は一般人から進化種へ矢印を書き、その矢印の近くに様々なワードを書き続けた。

 魔女、獣、機械など、統率の無い文字が綴られていく。


「例えば、私は魔女の進化種(エヴォリア)。といっても、世間一般が想像する魔女とは程遠いけどね。他にも獣の進化種(エヴォリア)、機械の進化種(エヴォリア)等がいるわ」


 女性は進化種の下に一つ悪性精神体と書き、その上にあくせいアストラルというルビを足した。

 その悪性精神体に向けて、進化種から矢印が伸び、この横に討伐の文字が加わった。


「私たち進化種(エヴォリア)が虚構世界に闊歩している存在、悪性精神体(アストラル)を倒すことによって、一般人たちを守っている。そんなところね」

「えっとつまり、悪者と戦ってるそのエヴォリアっていうスゲー超能力者がお前……ってことですか?」

「ねえ、さっきからその微妙な敬語は何かしら?接触は少なかったとはいえ、クラスメイトでしょう?」

「いや、なんかこう、凄い人って感じがしてさ、他の奴らと同じタメ口で良いものなのかと」


 今さらながら、コイツは永夜 可憐(えいや かれん)。うちのクラスの委員長をしている。

 鋭い目付き、どこか気だるげな雰囲気、けれど仕事はしっかりやる。先生からも生徒からも人気が高い奴だ。

 クールな性格にロングな髪、そして凛とした態度。一部からは委員長任命前に委員長呼ばわりされていたらしい。

 ポーカーフェイスのため感情が読み取れないこともあって、俺は自分からあまり話しかけなかった。ずっと話しづらいと思っていたが、これがクールビューティーとかいう奴なのだろうか。


「タメ口で構わないわ。寧ろ、特別扱いの方が好きじゃない」

「あー、そいつぁ失礼した。次からはタメでいかせてもらう」


 永夜は仕切り直すように小さく咳払いをした。

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