クロゥとイリナの装備更新
「頼むから生きていてくれよ」
クロゥは素早くイリナに近寄ると、口元に耳を近付け呼吸をしているか確かめた。
「ふぅ~……よしっ!」
微かに息があるのを確認すると、安心するのもそこそこに、身体の内部を診察し始める。
内蔵がダメージを受けているのと、骨が何本か折れている、特に両腕は酷い事になっていたので、部位毎に治るイメージを込めて薬を創る。
もちろん飲ませる時は口移しだ。
様態が安定したのを確認して、少し遠巻きにこちらを見ている人々に向けて声を発する。
「怪我人は居ないか?いるならば名乗り出よ!
私に授けられた技は女神によるもの、この世界に
住まう無辜の民を救い導くのが私の役目だ!」
少しの逡巡があったものの、腕をオオカミに裂かれたであろう30代後半の男がやって来る。
俺はデモンストレーションも兼ねて、傷口を水で洗い流し、創り出した薬を傷口に直接掛けて、傷が治っていく様を他の人によく見えるように行った。
「さあ!重傷の者から並べ!一人づつ治してゆく!」
その後はどんどんと人が並び、全員を治し終えた時には、もう陽が落ちてしまっていた。
もうクタクタだったので、その村の村長のような人に小屋を建てる許可を貰い、何時もの様に小屋と寝具を創る。
綺麗にしたイリナを寝かせ、栄養入りドリンクを飲ませ、自分にも流し込み、ある程度の防犯対策をして直ぐに眠りについた。
「すぴー、すぴー…」
目覚めると、穏やかに眠るイリナの顔が目の前にある、俺は安堵して、また頭をずっと撫で続けた。
暫くして、くすぐったそうにしながらイリナが起きる、俺が「おはよう」と笑顔で声を掛けると、顔を赤くしながら「…オハヨ」と応えてくれた。
「昨日はありがとうな、お陰で生き延びれたよ」
心配や、申し訳ない感情はあるが、感謝の言葉だけを口にする、彼女の存在、行動によって救われたのだと。
「……(テレテレ)」
暫くイリナを愛でてから、起きて朝食を食べると、自分とイリナの武器防具を一新する。
シャツやズボンは、手首や足首まで覆う形状に変更し、普段は柔らかいが、ある一定以上の衝撃を受けた時には、その衝撃を受けた部分だけを硬くして防御出来るようにした。
防具は前と同じく衝撃吸収ではあるが、面積を動きを阻害しないように増やし、尚且つ軽くしてある。
最後にマントをかぶせて出来上がりである、勿論このマントも耐刃、耐衝撃、耐火、耐熱、そして三色に色を変える機能を付けた優れ物である。
(普段は白、森で隠れたい時は緑、夜潜みたい時は黒と使い分ける為)
武器に関しては、イリナにどんな物なら扱えるのか聞いたところ、短剣に片手斧、弓なら扱えるとの事。
弓自体を強化するのは難しいので、弓本体は軽いが壊れにくい物にして、矢の方をいじる事にした。
まず、衝撃を受けると3秒後に爆発する爆裂矢。
そして、衝撃を受けると1秒後に高音と光を発する閃光矢。
最後に、衝撃を受けると即座に鉄をも溶かす高温を発する炎熱矢。
これらに普通の矢を合わせて創っていく。
接近戦武器については、短剣と片手斧を創り、どちらにも超振動機能を付けた。
後は、イリナ自身の強化のため、身体能力向上ベルトを創って装備させる。
俺の装備は、ズボンシャツ、防具、マントに関してはイリナとほぼ同じで、武器は超振動鉈剣と、足止め用爆弾各種である。
鉈剣の方は、前世でお爺ちゃんの畑仕事を手伝った時に便利だった記憶から創り。
爆弾の方は、敵の目の前で武器を創り出す事になった時や、逃げる時に時間を稼ぐ物が必要になると考えた為に用意した。
こうして各種魔改造を終えた俺達は、今度はこの村の魔改造をするべく扉を開けるのであった。




