中ボス戦闘
「はっ!いっいかん!おい、お前達!小屋まで走るんだ!」
暫くあっけにとられていたが、このままではマズイと感じ、住民達に逃げるように促す。
「うっ、うわぁあぁぁ!」
「ひぃいぃぃぃ!」
「逃げろぉー!」
ようやく我に返って逃げ出すも、ヤツからは逃げられそうに無い。
仕方が無いので、急いでクマと住民達の間に割り込むように走りながら、前と同じように、クマの足下に強力な接着性の液体を撒く。
「食らえ!」
クマが足を取られ少しつんのめった所に、直径5mはある巨大トラバサミを、頭上に落とした!
「やったか!?」
これでやられてくれと願いながら見つめるも、トラバサミの歯はクマの両腕に防がれ、皮膚を浅く傷付けるに留まった。
さらに軽々とトラバサミを破壊すると、足を地面の土ごと引っこ抜くと、唖然としている俺に向けて腕を振り下ろした。
ドゴォン!!
「……!……がっ!」
咄嗟に横へ跳んだものの、クマの手によって弾け飛んできた土や石が身体に当たり吹き飛ばされる。
「………!……………!」
耳は何も聞こえず、視界はスローモーションで過ぎて行く。
その目に映ったのは、腕をゆっくりと振り上げるクマと、それに向かって走って行くイリナ。
脚にナイフで切り付けるも刃は殆ど通らず、クマは鬱陶しそうにイリナを払い除けた。
イリナは何メートルも吹き飛び、何回も転がってようやく止まり、そこからピクリとも動かなかった。
俺は後悔した、まだイリナを信用仕切れず、防具を少し良くしただけで何の武器も持たせていなかった事を。
せめて遠距離武器があれば、彼女をあそこまで危険にさらす事は無かったかもしれないのに。
そして強く想う、彼女を失いたくないと、自分がやられた時に、勝てるハズも無いクマに立ち向かって行ってくれた彼女。
まだ出会って2日しか経っていないが、この滅びかけた世界で心から信頼出来ると感じている。
だからこそ、
ここが意地の張り所である、
息が出来ない肺に無理やり空気を送り込み、
震える手足で立ち上がり、
決意の瞳で敵を見据える。
腕を真っすぐ上に伸ばし、上空に全長10m程のブーメラン型の刃を生み出す。
腕を振り下ろすと、予めプログラムされた通りに、刃はクマの胸元へと高速で突進した。
クロゥは腕を振り下ろすと同時、手の中に袋に入った粉と瓶に入った液体を創り出し、空中に足場を創って跳び上がった。
クマの顔まで到達すると、刃を受け止め動きを止めたクマの鼻に向かって粉の袋を投げつける。
振りまかれた胡椒によって開けられた、大口に向かって液体の入った瓶を放り込む。
瓶を飲み込んだクマは直ぐに苦しみだし、地面に崩れ落ちる。
体内に入った毒素によってのたうち回ったクマが、丁度よく仰向けになった所で、首を挟んで二本の柱を創り出した。
柱の内側には溝が掘られており、頂上には斜めにカットされた刃が設置されている。
「これで終わりだ!」
クロゥの合図によってギロチンの刃が落とされる。
高速で落とされた刃は容易くクマの首を落とした。
クマが確実に死んだのを見届けると、クロゥは急いでイリナの元へ走って行った。




