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異世界コミュニケーション



 モフ、モフモフ、ナデナデ、ナデナデ……


 黒雄は起きると、ずっとネコを撫で続けていた。


 毛は弾力が有りつつも、しっとりサラサラしている、何時までも撫でていたい手触りだった。


 勿論起きて直ぐは、栄養の詰まったドリンクを口移しで与え。


 骨が折れていたり、内蔵が傷ついていないか確かめる為に、MRI風サングラスを創って内部を診察したりしていたので。


 決してただの変態という訳では無い。



「うぅん…ゴロゴロ………」


「おっ?」



 撫で続けていると、なんとネコの喉がゴロゴロ言い出した、大分嬉しくなったので、持てる技術の全てを使ってネコを撫でまくった。


 顎の下をコチョコチョしてみたり、耳の後ろをコチョコチョしてみたり、額のあたりをコチョコチョしてみたりしていると、誤って耳の穴に指を突っ込んでしまう。



「フギャ!」


「あっ!スマン!」



 どうやらその衝撃で目が覚めたらしく、うっすらと目を開けてこちらを見てくる。



「だれ?」



 どうやら少し寝惚けているようで、俺の顔を見た後に周囲を見回し、同じ布団に入っている事を確認した所でやっと状況を理解したのか、眠そうだった表情が変わっていく。


 毛は逆立ち、顔を赤くして、あわあわ言いながら、叫んだ。



「フギャアァァーーッ!!」





 ……それから1時間後



「落ち着いたかい?」


「………(コクリ)」



 ネコは壁際で体育座りの格好で、黒雄は部屋の中央で正座しながら向かい合っていた(黒雄の顔には幾筋も赤い線が走っていた)



「俺の名前はクロオだ、きみの名前を教えてくれないか?」


「…クロゥ……アタシは…イリナ」



 クロオは発音しづらかったのだろう、クロゥになってしまったが其れはそれで良いかと思いながら会話を続ける。



「イリナか、綺麗な響きの名だな」


「……(テレ)」


「スマなかったな、いくら看病の為とは言え、一緒の布団に入るのは不快だっただろう」


「…(フルフル)」



 どうやら謝り倒したお陰で、イリナの俺に対する敵意は取り除かれたようだ。


 自己紹介も終わった所で、現在の状況と今後どうするかを話し合った。



「そうだ!イリナも帰りたいだろう?良ければ俺も一緒に行くぞ」


「…帰る場所は…無い」



 詳しく聞いてみると、一年前に両親が亡くなり、昨日村から口減らしの為に追い出されたので、もう村には戻りたく無いと言う。



「よしっ、それなら俺と一緒に来ないか?独りは寂しくてな、二人なら心強い」


「え!…いいの?」


「勿論だ!イリナみたいに可愛い娘が一緒だと嬉しいよ」


「う~~……(テレテレ)」



 どうやら恥ずかしかったようだ、抱えた膝に頭をうずめて唸っている。



「「ぐ~~」」



 緊張が取れて安堵したからなのか、二人同時に腹の虫が鳴いた。



「はははっ」


「ふふっ」



 二人でひとしきり笑い合うと、御飯を創り出そうとするが、イリナに魔法の事を言っていないので、どう説明したものかと考える。



「イリナ、俺のとっておきの魔法を見せるよ」



 迷った末に、森で死にかけた時に突然目覚めた魔法だと説明した。


 まず皿を創り出し、その上に細部まで想像したサイコロステーキを創り出す。


 最後にフォークを創ってイリナに手渡し、食べるように勧めた。



「んー~っ!!」



 最初は怪しんでいたイリナだったが、俺が一つ食べて見せると、おずおずと口に運び、目を見開いた。


 その後は一言も発さず、ガツガツとステーキを平らげた。



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