白虎帝
今まで見てきた魔物とは比べられない、桁違いの大きさ、桁違いの攻撃能力。
見た目を一言で言うのならば ″雷を纏った白い虎″ ではあるが、その大きさは、頭から尻尾の先までの長さは100mあるか無いか、肩の高さは30mほどだろうか、確実に前に出たクマの倍はある。
能力は電気で、身体中からバチバチと放電していて、身体の周囲に岩を複数個浮かべ、時には岩を飛ばして家を吹き飛ばし、飛んでくる矢や砲弾を防いでいる、攻防一体の能力だ。
「これが俺の本当の敵か…」
「大丈夫?(ぎゅう)」
顔を青ざめさせていた俺を、心配したイリナが抱きしめてくれる。
それだけで停止していた思考が回りだす、この娘を守る、ただそれだけの為に。
まずは感電を防ぐ為に絶縁マントを2つ創り着る、そして一緒に逃げられるようにイリナを背負い固定する。
では実験だ、どんな攻撃ならば効くのか?
周囲に合図とともに水平に飛ぶ爆弾を創造していく、形状は鍔の無いロングソードで、それを20程も浮かべると、すでに城を半壊にしている白虎帝の尻に目がけて飛ばした。
「発射!」
ドドドドドドドドドドドドドドドド!!
速度は時速600kmほど、威力はロケットランチャー位の爆剣を20発撃ち込んだが、敵は無傷、全て周囲の岩に阻まれた。
直後岩が無数に降り注ぎ、周囲一帯の建物が崩壊。
俺達は爆剣を撃ち込むと同時に、水平に飛ぶだけの剣を掴んでその場を離脱、別の建物に移った。
先ほど見せられた防御力から、いくら火力を集めても突破は難しいと考え、直進する爆剣と、左右と上から回り込む爆剣を創り出す。
同時に放てば時間差で着弾し、上手いこと岩をかいくぐれるのではないかという思惑である。
「これでどうだ!発射!」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!
爆風によって舞い上がる土煙、しかして晴れた後に見える光景は先と全く変わらないものだった。
「これじゃあ埒が明かないな…」
「…(くいくい)」
「どうした?」
「わたし…が…かく乱…する」
イリナが決意を込めた眼で見つめてくる、この状況での彼女の提案は渡りに舟であったが、イリナをなるべく危険にさらしたくはない気持ちとがせめぎ合う。
「わかった」
しかし、彼女の決意を前にして止めることは出来なかった。
「ただし、死なないことを優先するんだ、少しでも危ないと感じたら逃げるんだぞ」
「…わか…た(こくり)」
「よし、良い子だ(ナデナデ)」
簡易ロケットランチャー(筒にグリップとトリガーを付けたもの)と弾を10発、緊急脱出用短剣(スイッチを押すと時速100kmで直進する短剣)10本を渡し、逃げ回りながら砲撃してもらう。
「頼む、上手くいってくれよ」
イリナの無事を祈りながら、次の準備を行うのであった。