自分の世界
俺は自分の部屋で、ベッドに横たわる死体を眺めていた。
神官と別れたあと、一日かけて歩いて戻ってきたところだ。
パソコンを立ち上げてSNSをチェックするが、私が家を出てからほとんど時間は経っていないようだ。
ピンポーン。
呼び鈴の音がする。
玄関に出てみるとご近所さんが不審そうに家を見ていた。
もうすぐ私が死んだことは皆に知れ渡り大騒ぎになるだろう。
玄関先ではご近所のおばさんがいつものように掃除をしている。
「トクはどうなったのかな。チョーさんは感動の対面だったんだろうな。」
そんなことを考えて、何もすることがない、いや、何もできない自分が情けなかった。
「誰かが死体を見つけてくれるまで家でじっとしてるかな。」
まあ、それ以外に選択肢はない。
玄関に向かったとき、郵便受けになにか届いていることに気がついた。
かなり集めの茶封筒だ。
手に取ると重みを感じる。
ん、誰からだ?
「長嶋幸一」
差出人にはそう書かれていた。
長嶋・・・ チョーさんだ!
急いで二階に駆け上がり、封筒を開ける。
中からは、チョーさんに預けた御札と財布、それと簡素な手紙。
もう一つ・・・これは家族写真だ。
そこには般若は写っていない。それに不幸を集大成したようなうだつの上がらない中年も写ってはいない。
みんな幸せそうな生気溢れる笑顔ばかりだ。
御札と手紙を握りしめて考えた。
部屋を出るときには俺は別に死んでも生きていてもどちらでも良い。
いや、どちらかと言うと死んで構わないと思っていた。
しかし今は違う。
便箋と写真、それと財布を机に置くと、御札を胸に抱きしめた。
そして、机に置かれた便箋にもう一度目を落とした。
「チョーさんの手紙、読んじゃったからな。」
そして目を閉じ、そっとベッドへと倒れていった。
チョーさんの手紙はいかにもあの人らしく。事務的な便箋だった。
その真中にボールペンで大きく一言だけが書いてあった。
終わり




