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現実:食-香辛料 サフラン  - 世界で最も高価なスパイス -

魂のサフラン

 そもそも食べ物というのはあくまで消費財であるために、

基本、車や宝石などに比べると価格は低くなるものですが、

(それ故のエンゲル係数である)

まれに生産量が希少であったり、ブランドの価値が高まることによって、

時として驚くほど高価になる食べ物もあります。


 以下に掲載するのは、世界的に知られている10種類の高価な食べ物のリストです。



◆でんすけすいか

 でんすけすいかは、北海道当麻町で生産・出荷されるスイカの高級ブランドです。

暗緑色で縞模様の無い皮と高い糖度が特徴で、品種としては肥大化や空洞が発生しやすく、

生産には高い技術が必要となるそうです。


 スイカとしては世界で最も高価なブランドで、

札幌市中央卸売市場に出荷されたでんすけすいかは、

毎年初競りにおいて非常に高額で取引されることで知られています。

過去最高額は1玉65万円というとんでもない値段で落札されているとのことで

メディアに取り上げられ、北海道民に初夏の風物詩として認知される。


 しかし個人的には販売期間が極めて短くなかなか手に入れられないが

鳥取産の大玉割れスイカなどが水分たっぷりで甘く、また食べごたえもあり

しかも安くて気に入っているのだが。



◆夕張メロン

 夕張メロンは、北海道夕張市を生産地とするメロンで、

鮮やかなオレンジ色の果肉で、とろけるような柔らかさとジューシーさ特徴です。


 「特秀」「秀」「優」「良」と4段階にその出来が評価され、

特秀のものでは糖度13%以上、重量1.5~1.8kg、

網目が90%以上完全なものなど厳格な検査に合格したものだけを

「夕張メロン」のブランドで出荷するために厳格な基準で査定が行われます。


 初競りでの落札額は、

1箱2玉入りで、2008年の250万円が最高額となっています。


 日持ちに難点があり、大手宅配業者、フットワークと提携し

当時としては、画期的な産地直送システムを導入した。


 これによりそれまで北海道内でしか食べられなかった夕張メロンを、

産地直送化することにより、道外への出荷が可能になった。



◆マツタケ

 マツタケは、秋にアカマツやコメツガ、ツガ、ハイマツ、エゾマツなどの

針葉樹林に生えるキノコで、独特の強い香りを持ち、

「香りまつたけ味しめじ」といわれ好まれる独特の強い香りを持ち珍重され

日本では食用キノコとして最高級品となっている庶民の憧れの高級きのこである。


 通常のキノコのように傘が開ききってしまうと香りも味が落ちてしまうため、

地表からわずかに1cm~2cm顔を出した時点で採取する必要があるとのこと。


 現在のところ人工栽培することができず、

自然に発生したものを収穫するしかない為

1ポンド90ドル(約6900円)から905ドル(約7万円)で市場に並びますが、

現在では市場に流通するマツタケのほとんどが、

中国産やアメリカ産などの海外産となっているようです。


 ですが過去には日本でも多く取れ、庶民の秋の味覚として親しまれていた。


 なぜならかつて里山が今よりずっと利用されていた時代には、

燃料や肥料に使うために人の営みによって落ち葉や枯れ枝が除かれており、

このためアカマツが優占するような痩せて乾燥した里山は

マツタケにとっては適した環境だったため、

(なにしろ、枯れ葉が積もって土の中の養分が多くなると、

 他の菌類との競争に負けてしまい発生しなくなってしまう。)

現在とは比較にならないほど大量のマツタケがとれ、

武士から庶民まで幅広く親しまれていたという。


 ですが、現在は松の葉や枝を燃料や肥料として利用しなくなり

そのことで里山を手入れする機会が少なくなったことで

マツ林の林床環境が富栄養化したことと、

マツクイムシにより松枯れが多発したこと、

マツノザイセンチュウという害虫の被害によって

アカマツ林内の環境が大きく変化しており、

国産のマツタケは絶滅の危機に瀕しその収穫量は激減した。


 そのため、現在マツタケが非常に高価な食材の代表格で

高級なきのこになっているのはその結果である。



◆Knipschildt Chocolatierの「Chocopologie」

 Knipschildt ChocolatierのChocopologieは、完全予約制で、

ヴァローナのカカオと黒トリュフを使用しており、

1ポンドあたり2600ドル(約20万円)という世界で最も高価なチョコレートです。



◆神戸ビーフ

 神戸ビーフは、兵庫県で生産された「但馬牛たじまうし」から取れる肉の中でも、

さらに一定の基準を満たした場合だけ名乗ることができる超高級牛肉ブランドです。


 日本の和牛ブランドは世界的にも認知されており、

「Japanese Beef」の代わりに「Wagyu」という単語が使用され、

神戸ビーフはその中でも最高級品で、世界で最も高価な牛肉として知られています。


 地元神戸では神戸ビーフのブランドの中でも特に三田市で肥育された但馬牛を

神戸ビーフではなく三田牛として取り扱っている。


*三田牛とは:

 現三田市周辺の旧有馬郡には、

三田藩、幕府御三卿の田安家、御所などの領地があり、

米の生産地で農耕用や荷役用の牛が飼育されていた。

特に年貢米を運ぶ荷役牛が痩せているのはお家の恥として、

牛を太らせる飼育方法を行っていた。

開国により神戸港が開港すると、

外国人居留地ができ外国人の食用として肉の需要が生まれたが、

当時の日本では食用の牛の飼育は行っていなかったため、

明治維新で年貢米を収めることがなくなり余っていた三田の荷役牛を食用にしたところ、

肥育が特徴的でありながらも肉質は濃密で繊細な旨味を表現し、

柔らかさも兼ね備え太らせる飼育方法で『霜降り肉』だった三田牛は美味しいと絶賛され、

神戸の食肉業者がこぞって三田の牛を買い付けた。

三田は四方を山に囲まれ、

南北に流れる武庫川が多くの支流を有する肥沃な土地で、

三田米を始め、多くの農産物を実らせてきました。

そして一日の寒暖の差は牛の体を引き締め、

肥育しても肉質が締まりやすく

むしろ肉質をより高めるといわれています。

1頭1頭丁寧に育てられた三田牛は、

肉質、脂質ともに食通をうならせる上質な味と高い評価を得ています。

このことから世界に知られる神戸ビーフの元祖は三田牛の肉だったと言われる。

ミシュランガイド東京2008では、三田牛を

「年間千頭しか生産されないという厳選された素材」

「思わず自然の恵みに感謝したくなる」と絶賛している


 価格としては、200gで7000円から2万円ほどで市場に並んでいます。



◆キャビア

 キャビアとは、一般的にはチョウザメの卵として知られていますが、

キャビアを産むチョウザメは「サメ」じゃないのです。

いわゆる古代魚とされる分類群の1つである。


 主な産地であるロシアでは魚卵を総称して「イクラ」と呼ばれ、

キャビアは「チョールナヤ・イクラー(黒い魚卵)」と呼ばれるそうです。

1ポンドあたり8400ドル(約64万円)から1万5500ドル(約119万円)で

取引されているとのこと。


 現在では、ロシアンマフィアによるチョウザメの乱獲で

漁獲高の減少で価格が高騰しており、

代わりに養殖や代用品の開発が進んでいます。


 2017年に公表された環境省のレッドリストでは

絶滅(環境省レッドリスト)と評価された。



◆ホワイトトリュフ

 トリュフとは、セイヨウショウロ属のキノコの総称で、

広葉樹の根に菌根をつくり、地中に塊状の子実体を形成します。


 中でもイタリア産の白トリュフは1360ドル(約10万円)から

4200ドル(約32万円)で取引され、

2007年にイタリアで発見された1.5kgの超巨大白トリュフは、

なんと22万ユーロ(約2400万円)で落札されたそうです。


 なお野外でトリュフを探すときは、

ほとんど常に特別に訓練されたブタかイヌを用いる。


 ブタはかつて最もよく使われたが、

現代の農家はトリュフを食べてしまわないイヌの方を好む。


 ブタとイヌのどちらも鋭敏な嗅覚を持っているが、

イヌがトリュフの香りについて訓練しなければならないのに対し、

メスのブタには全く何の訓練も要らない。


 これはトリュフに含まれる化合物が原因で、

メスブタを強く引きつけるオスのブタの性フェロモンと類似しているためである。


 このメスブタめ!



◆燕の巣

 燕の巣は、文字通りアナツバメの巣で、

広東料理において高級食材として用いられます。


 ツバメの巣のスープが有名です。


 アナツバメはその生涯のほとんどを空中で過ごし、

睡眠も飛翔しながらとると言われています。


 巣を作る際も、地上に降りて木の枝などを集めることはせず、

唾液腺からの分泌物で巣を形成します。


 ツバメの巣の薬効は、滋養強壮、体質改善を含め、

肺機能回復、喘息、咳、痰などに効果があり、

近年人々の健康食品として益々普及してきました。


 1ポンド910ドル(約7万円)から4535ドル(約35万円)で取引されています。


 なお中国で古来よりツバメの巣の中でも、

特に珍重されてきた赤いツバメの巣:血燕シェイエンなるものがあり

これは、ウミツバメが唾液を分泌させた時に

のどが傷つき血が混じったもので作られている、という伝承がありますが

・・・近年検査結、果実は血燕などという食品は存在せず、

ジャンルそのものがニセモノだいう悲しい報告も出ています。



◆金

  Au、ゴールドのことである。

味も匂いもない金そのものがメインの食材として用いられることはありませんが、

食べても問題の無い貴金属として、

高級感の演出などの目的で料理に添えられることがよくあります。


 金はそもそも貴金属なので、単価に直してしまえば、

1kgあたり3万3000ドル(約253万円)から11万ドル(約844万円)と、

最も高級な食材とも言えます。


 しかし、ごくまれにその価格が追い抜かれるようで、

前述のホワイトトリュフの1.5kgで2400万円というのは、金の価格を大幅に上回っています。


 厚生労働省では既存添加物89番、E番号では着色料E175として分類される。

インドなどでは、バークと呼ばれ食されて、

ヨーロッパでは16世紀から食されており、もとは薬用として摂取されていた。


 もっとも有名な例としては、

1598年以前から生産されている金粉を添加した薬用酒「ゴールドワッサー」などがある。


 金箔や金粉は味や栄養に影響しないが華やかに見えるという点から、

飲料や料理の食材にあるいは酒に混ぜるなどして用いられるのだ。


 この用途の金粉には、割り金として銅は含まれていない(銅抜きと呼ばれる)。

食器類に用いる場合は、見栄えをよくするのみならず、

食品に金属の味をつけない利点がある。



◆サフラン

 そしてサフランである。

サフランは、地中海沿岸を原産とするアヤメ科の多年草で、

そのめしべを乾燥させたものが香辛料や生薬として使用されます。

そのめしべを乾燥した糸状のものには苦味があり、干草に似た香りがするのです。


 なお、日本ではサフランライスとして有名。


 またサフラン (C. sativus) などは8組、合計24組の染色体を持ち(3倍体)、

花が種子をつけないことから人工的な繁殖を行い、

根茎を掘りあげて分割、植えつけしなくてはならない。


 なお、根茎は1シーズンで枯れるまでに10個前後の小さな根茎に分かれ、

次のシーズンに成長する。


 しかし香辛料のサフランとは、

1つの花から3本だけとれるフランの柱頭 (めしべの先端)から得えるので、

結果1グラムあたりでは最も高価な香辛料の1つとなるのである。


 1ポンド(約454g)の香辛料を作るのに、

なんと約5万本から7万5000本の花が必要で、

香辛料としては最も高価な部類に属し、

1ポンド500ドル(約3万8000円)から5000ドル(約38万円)で取引されるそうです。




▼サフランその起源と由来:

 実はサフランは西南アジア(ほぼ中東と同じ領域)原産であるが、

最初に『本格的に』栽培されたのはギリシャである。

ペルシャからギリシャに伝わったとは意味深である。


 現在ではサフランの最大生産国はイランであり、世界の総収穫量の半分を占める。


 このサフランの語源には諸説ある。

12世紀の古フランス語 safran からたどると、

ラテン語 safranum、さらにペルシャ語 「ザアファラーン」、

あるいはアラビア語で「黄色」を意味する「アスファル」を語源とする

さらに古い言葉「ザアファラーン」 zar-parān へとさかのぼる可能性もあるという。


 アラビア語 az-za'faranが語源という指摘もあるが確認されていない。


 サフラン栽培は3000年以上前から記録に残り、

おそらく原種の Crocus cartwrightianus から雄蕊が長いものを選別した

変異体 C. sativus が青銅時代に確立して以来、栽培が続いたものと考えられる。


 調理に関わる記述にサフランの名が初めて現われたのは、

いまから数千年前のペルシャ語の資料である。


 サフランの栽培は3000年以上前から行われていて

ギリシャ・ローマでは紀元前から香料・染料・薬用などとして使われていた。


 その他、紀元前7世紀ごろから使用されていたという記録もあって

アレキサンダー大王が戦いで傷ついた体を癒やすために

サフラン風呂バスを使い癒し

それがギリシャに持ち帰られたとも言われている。


 サフランの栽培自体はイランとインドのカシミール地方で

世界で最初に行われていましたが。


 古代インドなどではサフランから染料が作られ、

ブッダの死後まもなく仏僧は職服をサフラン色に染め上げました。


 古代ギリシャではサフランの黄色が珍重され貴族だけが使える色とされていた時代もあり、

古代ローマでは貴重な薬とされたり香水として重宝されていました。


 スペインはイスラム教徒によって征服されたため

紀元後961年頃サフランがイスラム人によって持ち込まれました


 14世紀にヨーロッパでペストが大流行した時には

サフランを原料とした薬の需要が急増したという記録も残っています。


 日本には江戸時代末期にオランダ船が持ち込んだと言われ、

大分県などで栽培されている。




▼高価なスパイス:

 この他、どんなスパイスが高価であるのか?


 最も高価なスパイスは、やはりサフランであり、

5gで1,575円、100gに換算すると3万円以上となる。


 グラム単価では、これに続いて、バニラ、レモングラス、ライムリーフなどが高い。


 スパイスとして典型的な植物種子としては、

カルダモンが100g 1,050円と高価であり、

スパイスの王様ともいわれる地位を示している。


 栽培場所が限定され、栽培や乾燥も難しいため値段が高いといわれる。


 カレーなどで多く使われるコリアンダー、クミンなどは、

100g 315円とずっと安価である。


 ペッパー(こしょう)も何にでも大量に消費され安い。

(ここでは500gのブラックペッパー粒の単価)


 なお、香辛料の原産地は特定の地域に片寄っている。




▼高価なスパイスの理由:

 サフランは世界で最も高価なスパイスだ。

高いものでは1グラムで16ドルもの値がつくが、それには相応の理由がある。


 このスパイスは、クロッカス・サティウス(Crocus sativus)

という学名の付いたクロッカスの仲間の花の、

鮮やかな朱色をしためしべを乾燥させて作られる。

(注:日本ではスパイスだけでなく、クロッカス・サティウスそのものをサフランと呼んでいる)


 さっそく近所のクロッカスを摘みに行こうと考えた人もいるかもしれないが、

ちょっと待ってほしい。


 クロッカス・サティウスは3倍体という特殊な種で、

野生では育たず、人間が介在しなければ増えることもない。


 ゴージャスな紫色の花は、人間が大変な労力をかけて繁殖させるのだ。

……蚕か!?


 しかも手作業で収穫するチャンスは、花が開く朝だけだ。

サフランの花は早朝開花するのだ。


 太陽の光があたりすぎないうちに収穫しなければならないので早朝から収穫が始まり

収穫後おしべの部分のみを花から抜き取り日陰干ししてすぐに乾燥をさせる必要がある。

栽培に手間をかけるほど、価格は高くなるのだ。


 さらにサフランが高価なのは、

多数の柱頭を手で摘み取るときに、熟練を必要とするからである。


 サフランの柱頭にだけ、あの独特の香りと味がある。

その上、それを商取引するには、ある程度の量を確保しなければならない。


 1ポンド (0.45kg) の乾燥サフランを取るには、約5万本の花が必要で、

その耕作面積はサッカーのフィールドと同じ位の面積(約60m角)が必要である。

7万5千本が必要とする資料もある。


 これは、サフランの品種によって、柱頭の大きさが異なるためもある。

しかも、収穫は、サフランの花が満開となる一時期に行わなければならない。


 1kgの乾燥サフランを得るには約40時間が必要であり、

そのため収穫期には驚異的な忙しさとなる。


 例えばカシミールでは、何千もの農作業者が1週間から2週間の間、

昼夜を通したシフト勤務で収穫を行う。


 採取した柱頭は、すぐに乾燥が必要であり、

それを怠ると売り物にならなくなる。


 伝統的な乾燥方法では、細かい網の目の上に広げ、

炭か木で加熱した30℃から35℃のオーブンの中に10時間から12時間入れる。

乾燥後は、ガラス容器に密閉する。


 通常のサフランは、おしべとめしべを混ぜたものである。

おしべには香辛料の効果がなく、着色料の役割を果たす。

色は黄色というよりも、赤かオレンジに近い。


 良質のサフランを入手するには、さらなる熟練が必要である。


 糸が鮮やかな真紅をしており、わずかな潤いがあり、弾力があるものが上質である。

逆に商人から敬遠されるのは、赤レンガ色をしているもの(古い)、

ビンの底に粉があるもの(古く乾いて脆くなっている)である。


 このようなものは端境期の6月に多く出回る。


 小売業者が前年のものを売り切ろうとするからである。

そのため、信頼できる卸業者は、必要な量だけ買うように勧める。


 端境期が年の途中にあるため、

信頼できる卸業者・小売業者が取り扱うサフランには、

「2002/2003」のように2年分の年が記入されている。

この例は、2002年後半の収穫であることを意味する



▼サフランの生産地:

 サフランの栽培は、

西は地中海南西部から東はカシミール、中国までの

広いベルト(ユーラシア大陸南部)地帯で幅広く行われ

特にイラン、スペイン、インド、ギリシャが世界への供給源となった。

その他の地域でも、南極大陸以外ではある程度生産されている。


 アメリカ大陸では、ペンシルベニア州のシュヴェンクフェルト派の教会で栽培が始められた。

近年では、ニュージーランド、オーストラリアタスマニア州、

アメリカ合衆国カリフォルニア州でも栽培されている。


 実はサフランは地中海沿岸に見られる常緑の低木地帯、

すなわち北米のカリフォルニア州などで見られる低木林チャパラルの生態系

および同様に夏に暑く乾燥した風が吹き抜ける半乾燥地の気候で繁栄するのだった。


 にもかかわらず、-10°C(14°F)という低温や、

短い期間の霜や積雪に耐え、冬の寒さを乗り切ることができるのだ。


 また世界の年間生産高は、糸状・粉状を合わせて約3百トンである。

この内、最高級とされる「クーペ(coupe)」の生産高は、1991年実績で50トンである


 国際連合食糧農業機関(FAO)によると、

世界のサフランの85%がイランで生産されている。


 比較的空気が乾燥して晴れの日が多いイランの天候はサフランに適しており、

また同国の農家は、先祖代々伝わる特殊な栽培知識を有しているからだ。


 なお、サフランが最初に発見されたのは青銅器時代のギリシャだと考えられているが、

現在はヨーロッパとアジアの広い地域で栽培されている。


 サフランは、3千年以上もの間、医薬、調味料・香料、染料として使われ続けてきた、

サフランの歴史は古いのだ。




▼サフランの薬効:

 クレオパトラなどは求婚者と顔を合わせる前に、

バス・タブにサフランを入れて入浴し、また馬乳の風呂に入ったといわれ、

その美しさに磨きを掛けたと言う。


 サフランのハーブ療法は、昔から民間医療に使われており、迷信も多く含まれている。

まず、駆風剤(腸内のガスを取り、痛みを和らげる)、月経促進剤(骨盤血流を強化する)

として使われた。


 中世ヨーロッパ人は、呼吸感染症や呼吸障害

(例えば咳、風邪、猩紅熱、天然痘、癌、低酸素血、喘息)の治療に使った。


 また、血液疾患、不眠症、麻痺、心臓病、鼓腸、胃の不調と障害、

痛風、慢性の子宮出血、生理痛、無月経(月経不順)、夜泣き、眼病などにも使われた。


 古代ペルシャ人、エジプト人は、サフランを媚薬、食中毒、胃炎、赤痢、麻疹の薬として使い、

ヨーロッパの開業医は特徴説(Doctrine of Signatures)に基づいて、

黄疸に対して同じ黄色であるサフランを治療に使っていた。


 また、傷の治療、制癌作用の他、酸化防止剤の役割も果たす。

酸化防止剤はラジカルを中和するため、老化防止の効果も期待されている。


 例えば、サフランのメタノール抽出物は、

高い比率でDPPHのラジカルを中和する。


 これは、サフランに含まれるサフラナールとクロシンが

活発にプロトン供与体として作用するためである。


 500および1000ppmの濃度で、ラジカルの50%、65%が無効化された。


 なおサフラナールの作用はクロシンよりも小さかった。

このような酸化防止特性により、医薬や化粧品、健康補助食品への応用が期待できる。


 ただし、サフランは毒性も高い。

煎じ薬として与える場合、毒性の指標であるLD50は20.7g/kgである。


 生薬としては番紅花(ばんこうか、蕃紅花とも書く)と呼ばれ、

鎮静、鎮痛、通経作用がある(日本薬局方第二部に「サフラン」の名で収録)。


 中国では西紅花、藏紅花の名で生薬として流通している。

動物実験では、サフランの黄色色素であるカロテノイドの一種「クロシン」の摂取が

大腸がん予防に効果があるとする研究もある。


 古代には、サフランは医薬として、胃腸薬、ペスト、天然痘などに幅広く使われていて、

近代の臨床試験では、確かに抗がん剤、老化防止にも効果がある可能性が示されている。


 伝統療法においては、サフランは心臓の痛みから痔まで、

さまざまな症状の緩和に使われてきた。


 1597年に植物学者ジョン・ジェラードが出版した、

挿画が美しい『The Herball, or Generall historie of plants(本草あるいは一般の植物誌)』

によると、サフランはその昔ローマで公共の空間を彩るために地面に敷き詰められたり、

腺ペストの解毒剤として処方されたりしたこともあったという。


 現代の研究では、サフランに豊富に含まれる抗酸化成分が体内の炎症を抑えたり、

性機能不全やうつ病の治療に役立ったりする可能性が示されている。


 しかし、一部で言われている心疾患やガンに対する効果については、

まだはっきりしたことはわかっていない。


 医薬品としてサフランが最も広く活用されるようになったのは中世だが、

この頃には料理、とりわけ祝宴用の料理に色を付けることも流行した。


 1300年に出版された料理本

『Le Viandier de Tailleventル・ヴィアンディエ・ド・タイユヴァン

に掲載されている白鳥のレシピには、鳥の皮をはぐ生々しい描写があり、

その後、串に挿して調理すべしと書かれている。


 白鳥を火で炙りながら、

「そこにサフランをかける。火が通ったら、剥いだ皮をもう一度肉にかぶせる。

首は垂直、あるいは水平に伸ばして付ける。

その上から羽と頭を、卵の黄身にサフランと蜂蜜を混ぜたペーストを使って取り付ける」


 今でもサフランは、どんな料理に使っても、

豊かで優雅な雰囲気を醸し出してくれる。


 ありがたいことに、その効果はほんのひとつまみでも絶大だ。




▼サフランの料理法:

 このように古代でも現代でも、飲食用に使われる場合がほとんどであり、

この習慣は、アフリカ、アジア、ヨーロッパへと広がっていって

現在では南北アメリカで焼き物、カレー、酒にと使われていた。


 料理としては、南フランスの郷土料理であるブイヤベースや、

スペインのパエリア、インド料理のサフランライスに欠かせない食材です。


 なぜならスペイン料理のパエリアやペルシャ料理のピラフは、

サフランが生み出すきらめく太陽のような強烈な黄色がなければ成り立たないのだから。


 めしべは、独特の香りを持ち、水に溶かすと鮮やかな黄色を呈するため、

南ヨーロッパ、南アジア北部、中央アジア、西アジア、北アフリカにかけて

料理の色付けや風味付けのための香辛料として使用されるのだ。


 サフランが料理に使われるのは、

インド、アラブ、中央アジア、ヨーロッパ、モロッコなどである。

(ポルトガル料理、モロッコ料理、キューバ料理、メキシコ料理などを参照。)


 その香りは調理師や料理評論家によって、ハチミツ、芝生、干草、金属などに例えられている。

味は干草に例えられることが多いが、基本的には苦い。


 色は、黄かオレンジの蛍光色であり、同時に使われる食材もその色に染まる。

これらの特徴を生かすため、焼き物、チーズ、菓子類、カレー、酒、肉料理、スープなどに入れられる。

インド、イラン、スペインなどでは、米料理によく使われる。

スペイン料理には、サフランの風味を付けたサフランライスが使われることが多い。


 ほかにも、魚のシチュー、ロールパン、ケーキ、パイなど、

サフランが使われる料理は枚挙にいとまがない。


 サフランは高価なため、料理ではベニバナ、ウコンを混ぜるか、

あるいは完全に代用させることも多い。


 共にサフランと似た色になるが、味は全く異なる。


 サフランは、特にイタリアで、菓子や酒に使われる。

シャルトリューズ、イザラ、ストレガは、サフランで色と香りを付けた酒である。


 サフランを調理済みの料理に加える場合には、料理に加える前に、

砕いて、10分ほど水やシェリー酒に浸すとよい。


 する と、液にサフラン糸の色と味が抽出される。

ただし粉状のサフランはそのまま使ったほうが良い。


 その抽出液を、暖かく調理された皿に加える。

そうすれば、焼いて調理した料理や、濃いソースをかけた料理にも

サフランの色と香りをつけることができる。


 また、着色や風味付けなどの通常の用途で、

食事から経口で摂取する量では安全とされている。


 しかし、以下の場合には注意が必要である。

堕胎作用、子宮収縮作用、通経作用に注意が必要である。


「授乳中の安全性については充分な情報がないため、避けたほうがよい」、

「妊婦には禁忌である」

との記述もみられる。


 大量摂取は危険と言われており、

5g以上摂取すると重篤な副作用が出る。

致死量は12-20gである。


 また、オリーブ属、オカヒジキ属、ドクムギ属の植物に

過敏症がある人はアレルギー症状に注意が必要である。


 ヨーロッパでは、糸状サフランは

アロマオイルの一種crocinum(サフラン油)の原料として欠かせないものであった。


 crocinumはアルカネット (alkanet)、ドラゴンズブラッド、ワインなどから作られる。

crocinumは髪につける香水として使われた。


 また、サフランとワインを混ぜた芳香剤がローマの劇場におびただしく使われた。




▼サフランの染色:

 また、サフランは織物などの染色にも使われた。

その色は、多くの場合、宗教的や階級的に重要であるとされてきた。


 ジョン・オコネル著『The Book of Spice: From Anise to Zedoary

(スパイスの本:アニスからガジュツまで)』によると、

「サフランは、古代クレタの女性が着る羊毛のボレロ(丈の短い上着)を染めるのに使われた。

 また赤土、獣脂、蜜蝋などと混ぜて口紅を作るのにも用いられた」という。


 また中世の修道士は、当時接着剤として使われていた卵白とサフランを混ぜ合わせて、

写本を作成する際に金色として使える、艶のある黄色い顔料を作り出した。


 特に中国とインドでは

サフランが高価であるにも関わらずサフランを繊維の染料として用いた。


 その色は不安定であり、当初は鮮やかなオレンジあるいは黄色を見せるが、

すぐに褪色して青白くあるいはクリーム色になる。


 サフランのおしべは、少量でも明るい黄色あるいはオレンジ色を呈する。

サフランの量を増やすと、濃い赤の色相となるのだ。


 伝統的に、サフランによる染色は、上位階級専用であった。


 古代ギリシアではサフランの黄色を珍重し、

王族だけが使うことを許されるロイヤルカラーとされた時代もある。


 ヒンドゥー教、仏教の僧は、サフランで染色した朱と黄土色のローブをまとっていた。

中世アイルランドやスコットランドでは、

裕福な修道士がléineと呼ばれるサフランで染められた長い麻のシャツを着ていた。


 組織学では、顕微鏡観察用の細胞の染色に、

ヘマトキシリン、フロキシン、サフランの混合物を利用したHPS染色法が使用される。


 しかし、サフラン色を安価な染料で呈色する試みもなされてきた。

まず食品にはウコン、ベニバナなどが使われてきたが、

サフランの明るい黄色がかった色を再現することはできなかった。


 その後、クチナシ属の一種で実にクロシンを含むものが見つかり、

それをサフラン染料代替物として使用する研究が中国で行われている。

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