現実:食-調理法 アルデンテ、こし
★アルデンテ:「見切った」ピキーン
パスタを茹でるときは「アルデンテ」って気取った人間はよく言いますよね。
みなさんはこの「アルデンテ」の意味を本当に正しく理解されているでしょうか?
実はアルデンテとは麺が完全に茹で上がらずに
麺の中心が髪の毛の細さ程度の芯を残して茹であげることを言います。
芯を残して茹で上げるのは、茹で水の塩分が麺に完全に入らない分辛くならず、
ソースも麺に入りやすくなり美味しさが増すからです。
"al dente" を直訳すると「歯に~」であり、
茹で上がりの「歯ごたえのある状態」を示す用語。
イタリアではパスタ以外にも、野菜や米などの茹で上がり状態を表現する際にも用います。
また、パスタを茹でる時には硬水の使用が望ましく、
日本のような軟水でゆでる場合にはアルペンザルツ(岩塩)やにがりで硬度を補いますが、
ただ欧州では水の硬度が高いので塩を入れなくても問題ないのです。(注:塩析)
○誤解:釣り餌のゴカイにあらず、ミミズでもない。
パスタは一般的に茹で上げた後、うどんやそばのように水で締めないため、
その後も余熱で芯まで火が通っていきます。
そのため、パスタは茹であげたときにアルデンテの状態が好ましいとされるのです。
そう、『茹であげたときにアルデンテの状態』なのであり、
けっしてフライパンでソースを絡めた後や、皿に盛られ口にする瞬間などではないのです。
なぜなら、アルデンテの状態が必要なのはフライパンでソースを絡めたり
盛りつけている間に予熱で芯まで火が通るからなのです。
(注:なお、『アルデンテは乾麺でなければ成立しない概念であり、
生パスタを利用する時はこの概念は適用されない』という勘違いもされているが
イタリアでは生パスタもal denteと言う。)
またナポリ近辺でのパスタは芯が残ってやや硬い傾向があります。
これは貧乏臭いやり方で、その堅さにより喰いでを良くするためなのである。
なお、スイスのイタリア語圏では、
このアルデンテよりも長い茹で時間で柔らかい状態のパスタが供される場合が多いのです。
補足;
このアルデンテ、日本語にもっとも近い表現は
「コシがある」というのがふさわしい。
しかし、アルデンテは歯ごたえが残る程度に茹でた状態に対して、
コシはグルテンを形成する小麦蛋白のグルテニンが作用によるものなのでまるで別物である。
故にイタリア語には(欧米語のほとんどには)「コシ」という意味の言葉はない。
★コシ:アルデンテを見極めるにはコツがいりますが麺にはコシが必要!
そうめん・うどんは、私たち日本人にとってとても馴染み深い麺類であり、
これらのおいしさを実感するもっとも重要な要素として「コシ」があります。
「そうめん」や「うどん」、あるいは「そば」では
そのコシにも少し違いがありますが、
こちらでは特に「うどん」のコシについて、少し掘り下げてご紹介したいと思います。
○コシで違うおいしさ:
日本全国には、その土地の製法によって作られた大変個性的なうどんがいくつもありますが、
コシについても、土地によって特徴に違いがあります。
コシの変化を楽しむ香川県は讃岐うどん、
歯ごたえとコシの強さが特徴の山梨県の吉田うどん、
コシのないおいしさが特徴の三重県が伊勢うどんなどが有名ですが、
その他にも けつねうどん(しのだ)様々な種類のうどんがあります。
これらは今ではネット通販で気軽に購入できるものも多く、
全国各地のおいしさを自宅で堪能できます。
無論、専用の小麦の種類を利用しているモノもあるでしょうが、
例えほぼ同じ種類の原料で作っていても、
調理の仕方により仕上がりでコシの違いが生まれます。
では、コシとは一体何なのでしょうか。
●うどんの「コシ」とは?:パンのミミとは? 袋のクチとは? 台風のメとは?
一例をあげると、
「讃岐うどん」の特徴はうどんの主役でもある麺の『強いコシ』だと言われていますが、
地元香川の人でも「コシ=固さ」だと勘違いして、
それらの区別ができていない人が多いのが実情です。
(香川県、特に高松市は四国の中核都市として支店の出店が多いため転勤族もまた多い)
コシという言葉はそれを使う人によって、硬さや弾力、または粘度であったりと、
言葉の定義が必ずしも共有されていませんが、
この「コシ」とは、一言でいうと「麺の弾力」の事であり、
固さの事ではありません。
(引っ張ってもすぐには千切れない弾力と言えば解りやすいのか?)
本当の意味での麺のコシは『口に入れた時柔らかいかなと思うが噛めばもちっとしている』
ことであって、固いとは全くの別ものなのです。
すなわち、弾性率と粘性率的にそれぞれ軟らかく、
かつ破断強度が大きいという『噛み切るのに力が必要だが同時に軟らかくもある』のが
コシのあるうどんであり、単純に硬いだけではコシがあるとは見なされないのです。
コシのもう一つの特徴としては、
それが「時間とともに急速に失われていく」ということであり、
それはうどんの破断強度が2時間で約2/3まで低下することからも明らかです。
○コシの強さとは? :
小麦粉から作られる麺類のコシの元となるのは「グルテン」と呼ばれるもの。
小麦粉に含まれるグルアジンとグルテニンというたんぱく質が、
水を加え捏ねると「グルテン」という粘弾性のあるゴム状の物質になります。
このグルテンの形成を、手延べ製法ではねじりを加えながら引き伸ばし、
手打ち製法では網目状に複雑にからませることにより、コシの元を作っていきます。
これがコシの強さの鍵となります。
なお、讃岐うどんの製法には古くより「足踏み」という作業があり、
この「足踏み」という工程により、
うどん生地に"適度な力"を"色々な方向"から十分に加えることができ、
麺のコシの元となるグルテンの弾力が増しました。
この「足踏み」と「生地を三つに折りたたむ」ことを7回は繰り返すことで、
結果2187(3の7乗)の層が出来上がりこれが讃岐うどんのコシの素となります。
もうひとつに、麺に含まれる水分量の違いから生じるコシの違いがあります。
茹でる時間によって麺の中に浸透する水分量が違ってくるのです。
例えば博多ラーメンでは茹で時間の違いから「ハリガネ」とか「バリカタ」、
「フツウ」、「ヤワ」などといいます。
なお、特にうどんは麺が太いことでいろんな条件により感じるコシが違ってきますが、
讃岐うどんでは茹で上がると外側が透明で、
中に芯が残るくらいがいちばん美味しいとされています。
(あれ? ひょっとしてアルデンテ??)
……話は戻って、スパゲティーではちょうど良い茹で方を「アルデンテ」といいましたが、
表面よりも中心部分の方が水分の浸透率が低いので、
歯ごたえやコシを感じます。
よってコシの強さを楽しみたい場合は指定された茹で時間より早めに上げるといいです。
逆にモチモチの食感を楽しみたい場合は指定された茹で時間に、
蒸らし時間をプラスする方法もあります。
(乾めんでよく「差し水」をすることがありますが、実はこの「差し水」の役割とは、
太目の麺の外側部分と中心部分の茹で加減を程よく調整するためのもであり、
うどんなどには最適ですが、
そうめんなど細い麺には茹で加減を間違う原因になり不向きかもしれません。)
また、コシを楽しむために作られたうどんは、
長時間加熱してしまうとスープなどに溶け込んでドロッとなってしまうこともあります。
しかし、煮込み用のうどんなら長時間加熱しても溶けずモチモチの食感を楽しめます。
○うどんの「コシ」の正体は:麺の中の「水分勾配」
ゆでたての麺の水分量は、表面付近で80~90%、
中心部は50%ほどのため、中心へ近づくほど歯ごたえがあり、
グッと押し返す「コシ」を感じます。
しかし、ゆでた後、時間が経つにつれて表面付近の水分が中心部へ移動し、
「水分勾配」がなくなっていきます。
この移動は、お湯や「つゆ」につかっていない状態でもおきます。
この性質を利用して、麺の「ゆでおき時間」を変えれば、
「コシ」を調節することができるのです。
つまり、うどんは急速に短時間でたっぷりのお湯で茹で上げることによって
モチモチしたコシが生まれ、
そのコシは茹で置き時間によって調整できるのです。
ただし、讃岐うどんのコシ(ないし美味しさ)は、
茹でて水で締めたその瞬間に最大となって分単位で失われていきます。
これは時間が経つとともに水分分布が均一化して全体が糊化(アルファ化)し、
噛み始めが硬くなる一方で噛み切るのに必要な力は減少し、
コシがなくなっていくためであります。そこんとこは留意するように。