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現実:食-寒天(ところてん)

 朗報!


 なんと寒天は、日本のオリジナルな商品であることが分かりました。


 寒天は天草などの紅藻類に属する海藻の煮凝り

(いわゆるトコロテン)を凍結脱水し、

不純物を除き乾燥したもので、

およそ350年の歴史をもち、日本で初めて発明された食品なのです。


 寒天は、日本で製法が編み出され

和菓子の原料として改良され発展してきました。


 その他に1881年(明治14年)には、

寒天培地による細菌培養法が開発され、

第二次大戦前には寒天の国際需要が増えていき

寒天は日本の重要な輸出品になるのでした。


 しかし戦時中になると諸外国の政府では、

日本由一の製品として輸出禁止措置をとりました。


 そこで、困った諸外国の市民。

仕方なく自力による寒天製造を試み、

工業的な寒天製造法を開発しました。


 これがッ! これがッ!これが『粉末寒天』だッ


 諸外国ではモロッコ、ポルトガル、スペイン、チリやアルゼンチンで

寒天を製造しています。


 今や寒天は、伝統的な和菓子の利用から、

細菌培地、組織培養、医薬品、バイオテクノロジー向けの製品など

最先端の分野で活躍しています。



★概要:


 寒天は、天草から得られる天然多糖類が乾燥した物で、

加熱すると溶解し、38℃以下に冷ますことによって凝固してゲル化します。

そう、このゲルはもう一度熱を加えることで液体に戻る性質を持っています。


この性質を熱可逆性といい、寒天の特徴の一つです。


 寒天はゼラチンよりも低い、1パーセント以下の濃度でもゲル化が起こります。

一度固まった寒天ゲルは85℃以上にならないと溶けないため、

温度変化に強く口の中でとろけることがありません。


 食用のゲル(ゼリー)の材料という点では、

牛や豚から作られるゼラチンに似ていますが、

化学的には異なる物質です。


 インスタントコーヒーを抽出液に混ぜれば

コーヒ―ゼリー(もどき)になります。

また、よく冷えたところ天を四角に切り、

フルーツ缶詰を使ったフルーツゼリー(もどき)もできます。


 餡と一緒に煮溶かして固めれば「水ようかん」になります。

太溶液と餡の量配分がポイントですね。

寒天は適当な水を加えて火にかけると元の液体に戻ります。




▼寒天の来歴:


 一般的に「ところてん」は、

細長く突き出された食品の名前となっていますが、

正確には「天草」の抽出物を固めたものを「ところてん」と言います。


 この「ところてん」をもっと手軽に食べるために考えられたのが、

「寒天」といえるでしょう。


 寒天はおよそ350年の歴史をもち、

日本で初めて発明された食品と言いましたが、

無論そのもととなったところてんを

食料として用いた歴史はさらに古く、

奈良、平安時代に中国大陸から伝えられたものなのです。


 当時の宮廷や高貴な人々のぜいたくな食品であったといわれます。


 「ところてん」そのものは、奈良時代には存在が確認され、

江戸時代には庶民の食べ物となりました。


 江戸時代にトコロテンから寒天とする手法が発見されたのです。


「寒天」は、「ところてん」を干した加工品と言えます。

そう、寒天かんてんは、ところてんを凍結・乾燥したものです。

だから「ところてん」の副製品と言えますね。


 そして「寒天」には、それまで角寒天や糸寒天がありましたが、

現代では粉末寒天や固形寒天、

フレーク寒天など使いやすい製品に変わってきています。



 このトコロテンから寒天とする手法を発見したのは、

江戸時代初期、山城国紀伊郡伏見町(現京都府)に

伏見で本陣を営んでいた美濃屋太郎左衛門といわれます。


 美濃屋太郎左衛門が営む旅館に、

参勤交代の途中の薩摩藩主、

島津候が宿泊した際、主人の太郎左衛門は、

さまざまなご馳走でもてなしました。

そのひとつに、

テングサを煮て作ったところてん料理があったのです。


 参勤交代の途上宿泊した島津公をもてなす為に

作ったトコロテン料理の残りを、

主人が戸外に捨てたところ

厳冬であったため真冬の寒さでところてんは凍結し、

日中自然に解凍されては乾燥し、

やがて白い半透明の美しい乾物に変わっていったのです。


 数日後に主人がこれを見つけて、

白状に変化していたことから興味もち、

試しに煮てみると、ところてん独特の臭みがない透明のかたまりができました。


 この出来事が寒天誕生の始まりでこの製造に取り組み、

美濃太郎左衛門が「ところてん」の凍結乾燥した乾物で

再び「ところてん」を作ると、

海藻臭くないものができたころから始まりました。


 研究の結果製造方法が確立され、

後に「トコロテンの乾物」と名付けて販売を始めたのが起こりといわれます。


 これが現在の寒天の起こりで、

当時は瓊油たまあぶらの干物として売られていたそうです。


 当時はまだ「ところてんの干物」という認識でしたが、

これを試食した高僧隠元禅師が

寒晒心太かんざらしところてんの意味を込めて、

名を「寒天」と命名し、その後各地に広がりました。


 その後製法が改良され

1800年代には、

信州の諏訪地方では農家の副業として寒天づくりを始め、

角寒天が定着し気候風土を活用した地場産業になりました。


このように、寒天の歴史は古く、

日本で生まれた伝統的な食材なのです。



☆さて、心太と寒天の違いはなんでしょう?


 ぽかぽかと暖かい春の日差しを感じるようになると、

じきに「ところてん」の季節がやってきます。

(「ところてん」は夏の季語)


 最近では若い世代の方がところてんを食べなくなり、

特に子供たちにはなじみの薄い食品です。


「ところてん」とは、海藻である天草を煮て溶かし、

型に流して冷やして固めた食品です。


 それをところ天突き器で細く麺状に突きだし、

醤油や酢をかけて食べます。

ところ天、心太とも言います。


 一方の「寒天」とは、

このところてんを戸外で凍らせて乾燥させたものを寒天と言います。


 こうしてみると「ところてん」と「寒天」は、

同じ原料である紅藻類の海藻(天草)からできており、

豊富な食物繊維を有する健康に良い食品と言えます。


 似たような食品ですが、

その違いは意外と知られていないようです。



★ところてんができるまで


 ところてんの原料となる天草は、

海女さんたちが波の荒い海に潜り採取します。


 天草は、海岸付近で天日に干され洗浄を繰り返すことで、

黄金色をした天草になります。

これで長期保存できる天草になります。


 大き目の鍋に水を張り、天草を入れて沸騰させる。

沸騰後は弱火にして1時間程度煮ると、

天草はとろとろになります。


 抽出液を布で濾し、バットなどの容器に移し替えます。

自然に放熱させておくと、約5時間程度で固まってきます。


 これをところてん突き器で突いて完成です。

三杯酢で頂く「ところてん」は、日本の甘酸っぱい春の味と言えます。



*おいしいところ天の造り方:


 4人分の材料は、天草80g、水2.5L、酢大さじ1杯です。


 天草は水で、汚れが落ちるようによく揉み洗いをします。


 深めの鍋に天草と水と酢(天草が柔らかくなる)を加え火にかけます。

沸騰するまでは強火、

その後は、吹きこぼれないように調整して40分ほど煮込みます。


 天草がナベ底にくっつかないように、時々菜箸で混ぜてくださいね。

天草が柔らかくとろとろになると絞り時です。

粗めのざるで一旦濾します。


 大きめのボールに袋状になった濾し布をひき、

天草の鍋を熱いうちに移します。


 濾し布を引き上げ中の水分を絞ります。

(熱いので火傷をしないように注意)


 ボールに、天草の抽出液ができたら熱いうちに

バットに移して冷めるのを待ちます。


 40度を下回ると固まり始めます。

固まったら冷蔵庫でさらに冷やします。


 ところてん突き器に入る大きさにカットして、

突き棒で突いたら出来上がりです。

お好みのスープでお召し上がりください。



☆ところてんの食べ方:


 関東より北や中国地方より西では、

二杯酢あるいは三杯酢をかけた物に和辛子を添えていただきます。

食事の時のお菜の様な食べ方だと聞いています。


 東海地方では箸一本で食べる風習があり、

主に三杯酢をかけた物にゴマを添えて食べるのが一般的とされています。


 中部圏は、甘めの三杯酢を掛けて頂きます。

昔のようにむせることが少なくなりました。


 また関西では黒蜜をかけて食べたり、

果物などと共にデザート感覚で食します。


最近では、レモンとシロップやジャムとシロップで頂く方もあります。



▶ところてんの効能:


 ところてんは、全体の98-99%が水分で、

残りの成分のほとんどは多糖類ガラクタンです。

まるでクラゲのようですがクラゲなどではありません。

お間違えのなきように。


 ゲル状の物体ですが、ゼリーなどとは異なり独特の食感や磯の香りがあります。

腸内で消化されないため栄養価はほとんどありませんが、

食物繊維として整腸効果や血圧降下作用、

コレステロールを低下させる作用があるようです。

また、血糖値の上昇を緩やかにしたり、肥満を防ぎ便秘の解消にも役立つとわれています。



☆ところてんの歴史:


ところてんの歴史は古く、

天草を煮溶かす製法は遣唐使が持ち帰ったといわれています。


 海草を煮たスープを放置したところ偶然にできた産物と考えられ、

かなりの歴史があるようです。


 当時は、天草を「凝海藻こるもは」と呼んでおり、

ところてんは俗に「こころふと」と呼ばれ、

漢字で「心太」があてられたといいます。


「こころふと」の「こころ」は「凝る」が転じたもので、

「ふと」は「太い海藻」を意味していると考えられますが、

正確な由来は未詳だそうです。


 室町時代には、「心太」は湯桶読みで

「こころてい」と呼ばれるようになり、

更に「こころてん」となり、

やがて江戸時代の書物では「ところてん」と

記されているそうです。


 江戸時代には庶民の間食として好まれ、

砂糖もしくは醤油をかけて食べられたようです。




★天草の紹介(産地、採取、改良)


 「ところてん」の原料は海に生育している「テングサ」という海藻です。

テングサを煮出して

テングサに含まれているエキスを抽出して固めた物が「ところてん」です。


 「ところてん」の原料になるテングサは、

正式には紅藻類テングサ目テングサ科に属する海藻で、

一口にテングサといっていますが、

実はいろいろな種類のテングサが生存しています。



 テングサ類は、その多くが世界の暖海に分布する多年生の海藻(紅藻)です。

寒天の原料として、世界的に採取されており、約80種近くが知られています。

伊豆沿岸でのテングサ漁業の対象種は、

マクサ、オニクサ、ヒラクサ、オバクサ(ドラクサ)、ユイキリ(トリアシ)などがあります。




:豆知識


 コンニャク屋が、どうしてところてんを作るのか?


皆さんどうして蒟蒻屋さんが、ところてんを作るのかご存知ですか。

それは、蒟蒻が冬場の商品で春先から夏にかけて仕事がなく、

副業としてところてんの製造がはじまったからです。


決して、糸コンのまがい物などではないのですね!


夏場にキャンディー屋さんをしたお店もありますし、製茶業を営む者もいました。

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