現実:食-兵糧-戦闘糧食 『抹茶錠』
補助食品:軍用サプリメントとしてつくられた固形抹茶「抹茶錠」
あらゆる菓子を緑色に染めあげ、甘味食材としても不動の地位を築いた宇治抹茶。
現在主産地の京都府宇治市では大勢の観光客が訪れ、抹茶スイーツの食べ歩き人気に陰りはない。
だがその源流ともいえる抹茶加工品は太平洋戦争前に宇治で生まれ軍需として使用されていたのだ。
終戦から70年有余年。文化や憩いとともに語られる抹茶の、隠れた歴史とは。
- 時は1943年、太平洋戦争が真っただ中の乱世の世。 -
当時抹茶は贅沢品として統制され、「お茶の木の代わりに芋を植えろ!」「戦時中にお茶はぜいたく品だ!」と言われるしまつだった。
お茶等の贅沢品の他に重要日常物資まで取引が厳しく規制されていました。
戦局が悪化するにつれ、物資不足によりさらなる統制下のもとに、遂には軍需物資である燃料は配給停止し贅沢品の製造禁止令が発令され製茶の禁止を命ぜられました。
そもそも働き手のほとんどを兵隊に取られ、茶畑は芋や穀物類など食糧生産用に転作を余儀なくされました。ですが、一度イモを植えた畑では再び上質の茶を作ることはできません。
茶業界は壊滅的状態であり、まさに存続の危機にありました。しかし・・・・・・
後に日本は核の炎に包まれた!
海は枯れ、地は裂け、全ての生物が死滅したかのように見えた。
- だが、茶業界は死滅していなかった! -
なんとか茶業界が生き残るために、茶業研究所は苦境の業界は考え抜いた末お茶に含まれるビタミン類やカフェインに着目!
抹茶が持つビタミンCや強いカフェインの覚醒作用とその効能を陸軍航空技術研究所:川島四郎少佐に訴え軍部に力説し、軍に認めさせたのでした。それが旧農林省の命を受け、茶研が抹茶加工の研究で生み出した「抹茶錠」です。
湿気や熱で変質しやすい抹茶の弱点を克服し、簡単に摂取できるようにするのが主眼だった。これにより軍用のサプリメントとして「固形抹茶」や「抹茶錠」が兵隊に支給されました。
軍用として採り上げられた抹茶は、不急作物から外され、京都の茶業はなんとか命をつなぐことができたのです。
戦場で戦う兵士の眠け覚まし、集中力を高め、また栄養補給の為に開発されたのが「抹茶錠」。
抹茶の粉を固めた深緑色の粒は携帯性が良く水も使わずに簡単に摂取できると、格好の軍用サプリメントとして利用されたのです。
当初苦かった抹茶錠を食べやすくするため、茶業研究所は甘味料を添加し、「糖衣抹茶錠」を開発し軍に収めまさらなる量産のため時期から外れた冬の茶葉を利用して加工しました。
もちろん香りや味は度外視した下級品でしたが、軍需用の抹茶加工品として広く用いられたのです。また一般向けにもビタミン補給に役立つとして「固形抹茶」は売られました。
これが飲むのではなく食べる抹茶、抹茶加工品の、現在の抹茶スイーツのルーツではないかと言われています。
ところで皆さんは抹茶と煎茶の違いをご存知ですか。
二つとも同じ木から作られるのですが、違うのは栽培方法。煎茶用の葉は十分に日光を浴びて育ちますが、抹茶用は一定期間覆いをかけて遮光します。
そうすると日光を求めてグングン真上に成長。多くの栄養分が葉ではなく枝の成長に使われる為、葉は薄く柔らかく渋みが少ないものなります。遮光栽培されていない煎茶用の茶葉を粉末にしたものを「粉末緑茶」と言います。「抹茶」ではありません。
遮光栽培した茶葉を手で摘み取り、蒸して乾燥させ粉にします。
粉末にする際も、機械で粉砕する方法と石臼で挽く方法があるんですね。
機械では一度に大量の粉末を作る事ができますが、機械自体が熱を持ち茶葉を変質させてしまうデメリットがあります。石臼挽では一時間廻し続けても、出来る抹茶の量は40~60gほどしかありませんが、粒子が小さく均一で色の変色もなく綺麗な緑色の粉末になるんです。
抹茶は茶葉を丸ごと取り入れることができるので、煎茶に比べ栄養素を多く摂取することが出来ます。
抹茶には様々な効能が期待できる栄養素が豊富に含まれているんです。
例えば、抹茶に含まれる茶カテキンは、体脂肪を燃焼させたり動脈硬化やコレステロール値を下げる効果があるので、高血圧予防・肥満予防に最適です。
また抗酸化作用があるので、アンチエイジング効果もあります。
さらにビタミンCと協働してメラニン色素を抑制するので、美肌効果も期待できるのです。
カフェインは大脳の働きを活性化させて認知症予防に効果があると言われています。また茶殻には70%もの食物繊維が含まれているので、便秘解消にもなるんですね。
抹茶スイーツのはじまりが戦時下だったとは意外なですよね。
兵士の栄養補給の為に開発された抹茶加工品が、今では世界中の人に愛されるスイーツになるなんて…。
抹茶の効能は昔から人々の健康を支えとなってきました。
日本ブランドになりつつある抹茶は、私たちの誇りですね。