現実:食-兵糧-レーション-米軍 スパム
スパム(英語: SPAM):
▼SPAMとは:ホーメルフーズ社の登録商標である。
アメリカ合衆国のホーメル食品が販売するソフトシェル容器(缶詰)に加工食肉がみっしりと詰め込まれている、いわゆるランチョンミート(ソーセージの材料を、腸ではなく型に詰めたもの)と呼ばれる加工食肉製品の一つであり、同ジャンルの代表格。加熱済みであり、開封してそのまま食することも出来る優れもの。
スパムに含まれる栄養は56グラムのスパムには、7グラムのタンパク質、2グラムの炭水化物、15グラムの脂質(アメリカ人が1日に必要とする量の23%)が含まれ170キロカロリーである。ナトリウムは1日の摂取量の3分の1に達し、ビタミンとミネラルの含有量は少なくビタミンAは0%、ビタミンCは1%、カルシウムは1%、鉄は3%である。
それ故第二次世界大戦中やそれ以降、主にアメリカ軍兵士の食料としてスパムは多く利用され、欧米では一般的な食品として普及した。このため日本国内沖縄など米国外の米軍駐留基地のある地域では、同製品を含むランチョンミートを消費する食文化が発展している。
ただし第二次世界大戦中、連合国軍(ソビエト連邦を含む)に広く供給されたスパムではあるが、特に日常的に食べさせられた『あのイギリス軍の兵士』達がなんと食べ飽き、スパムに対して嫌悪感すら抱いたため、いまだに英国内ではスパムに対して否定的な感情が存在するという説がある(但し、なぜかイギリスはアメリカ、韓国に次いで消費量第3位)。
▶軍の支給品としてのスパム:
スパムが、軍における食糧として、飽き飽きするものだとされていたという話があるが、これは同製品が比較的安価で賞味期限も長いことから、第二次世界大戦から朝鮮戦争・ベトナム戦争の時代を通して、連合国軍やアメリカ軍内で主食だった戦闘糧食として、利用されたことに端を発すると言われている。この製品は決して不味い物ではない(それどころか愛好者も少なからず存在する人気商品である)のだが、非常に塩味が濃く、毎日繰り返し食べていると、流石に飽きてくる。しかし、軍ではスパムばかり供給してくる。しまいには、兵士達が「昨日もスパム、今日もスパム、明日もスパム、来週になってもまだスパム……」等と、ぼやいたと言われている。
なお、第二次世界大戦を指揮した一人であるアイゼンハワー(元大統領)は、自身も兵らと一緒に食べたと同製品に対し「兵士の健康を維持し、飢えさせないよう戦った」と評して感謝状を贈っている。最も毎日食べた証拠など無いのであるが。またレンドリース用の食料としてポークビーンズ缶と共にソ連にも供与された他、それをフィンランド兵が捕獲して喜ぶ描写が戦争映画の劇中にある程、アメリカと違い食料供給が不安定な軍では好評であった。ソ連軍がアメリカ軍から提供されたスパムは、1億ポンドにも上る。ニキータ・フルシチョフは、「スパムが無ければ、我が軍に食料を配給する事はできなかっただろう」と語った。
▶英国での普及:
第二次大戦前、イギリスは食料の70%を輸入に頼っていた。肉は50%が輸入だった。これが弱点と知っていた枢軸国は、食料輸入路を断つ事で兵糧攻めを狙った。
イギリス政府は配給制度の改善のため、ポイント制を導入した。お金があっても、クーポンが無ければ食料品は買えないのだが、米国のSPAMは当初不人気だったので、購入に必要なポイントが下げられた。また闇でも入手しやすかった。
戦後は経済不況と世界的な食料不足のため、かえって食糧事情が悪くなり、ジャガイモすら1947年に初めて統制品になった。イギリス政府は食料不足を補うため、カマスを含め色々な食品を輸入した。肉は最後まで配給対象品として残され、外れたのは1954年だった。カマスは骨が多く油っぽいとして、英国の食卓に馴染まなかったが、SPAMは定着した。
さて、後にモンティ・パイソンのスケッチで有名になったことで迷惑メールの名に「スパムメール」と名前が冠するようになったこの「スパム(SPAM)」であるが、スパムに「飽きられるほど連続する」という意味が付会したのは、これがアメリカ軍のレーションに含まれていたからである。
携行性に優れ、塩分・脂質・タンパク質が多く、ソフトシェル包装で開けやすいといった特徴を持つこのランチョンミート「SPAM」は、その利便性・保存性を買われてアメリカ軍に納入されていた時期があった。スパムも他のレーション同様『必要なのはわかるが、とにかくそこまで沢山作る理由がまるでわからない』程大量に米軍に納入され、しかも保存性が高すぎるので食糧庫にはSPAMばかり溜まり、しかしながら塩味が強く連食に耐えられるものではないため早くから飽きられ、戦場で兵士たちはうんざりしながらSPAMを食うはめになり、「今日もスパム、明日もスパム、明後日もスパム、来週もスパム…」駐屯地に戻っても「卵・スパム。卵・ベーコンにスパム。スパム・ベーコン・ソーセージとスパム。スパム・スパム・スパム・卵とスパム。スパム・スパム・スパム・スパム・スパム・スパムと豆にスパム・スパム・スパム・スパム。キノコと卵添えに、スパム乗せ」という状況に陥った。
さらにそれだけには飽き足らず「レンドリース法(武器貸与法)」が米国で可決されると、これ幸いとばかりに死蔵されていたSPAMを含むレーションも各国に軍事物資として大量に送付された。特に英露には嫌がらせの如くたっぷり送られた。当然、イギリスに送られたレーションはイギリス軍の食糧ということになり…モンティ・パイソンがネタにするほどSPAMがシティに溢れることになったのだ。
こうして毎食SPAMばかり食べさせられてウンザリしたことから、パソコン通信の時代には電子メールを使ったウンザリするくらい執拗に送られてくる勧誘・広告に対してダイレクトメールを「スパム」と呼ぶようになった。これに由来して、スパム(モンティ・パイソンに由来)は、しつこい/飽き飽きするという隠語になったとの説が有力である。
▶名前の由来について:
当初この商品名はHormel Spiced Hamだったが、インパクトに欠けるということで公募され、SPAMが採用された説がある。最初の2文字「Sp」と最後の2文字「am」をくっつけたと思しき命名だが、Hormel社の公式サイトでは「SPAMはspiced hamの略ではなく、SPAMの意味はあくまでSPAMである」と述べ否定されている。1930年代に名称が公募され、1937年7月5日に「SPAM」が選ばれた。
イギリスの料理作家マーガレット・パッテン(Marguerite Patten)は著書『Spam – The Cookbook』の中で「SPAMの名前はホーメル社副社長の兄弟で俳優のケネス・デイノー(Kenneth Daigneau)が考えたもので、彼はこれにより100ドルの賞金を得た」と述べてが「当初、ホーメルフーズ社自身により“Shoulder of Pork And haM”の略であると発表された」と言う人もいるが、ホーメルフーズ社の公式サイトにこの記述は無い。ただし、日本のSPAM公式サイトにはケネスが考案したことを含めてこの記述がある。 このほかにも、一種のジョークとして「Something Posing As Meat(肉の形をした何か)」、「Stuff, Pork And haM(豚肉ともも肉の代物)」、「Spare Parts Animal Meat(予備の獣肉)」のようなバクロニムが考えられている。
アメリカでは「スパム」がホーメル社製品以外の類似肉製品の呼び名としても使われることが多い。そこでホーメル社は、商標の普通名称化を避けるために商標ガイドラインを発表しており、「SPAMはすべて大文字で書かなければならない。また、『スパムランチョンミート』のように、形容詞的に用いなければならない」と説明している。