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現実:食-兵糧-レーション-米軍 A,B,C,D,Kレーション

現実:食-兵糧-レーション-米軍 独立戦争から第1次大戦、第2次大戦開始まで の続き

○ Aレーション(準戦時食)基地やキャンプで食べる駐屯地用ガリソンレーション。

○ Bレーション(温食)戦地のフィールド・キッチンで纏めて調理されたり、後方より運搬された食事。

○ Cレーション(缶詰)戦地で温食の配給が出来ない事を前提として配給される一般兵士向け携帯食料。

○ Dレーション(非常食)高カロリー、携帯性重視の非常食。

○ Kレーション(野戦携行食糧)空挺部隊用に開発された、小型、軽量の携帯食料。




▼Aレーション  駐屯地給食用の包装済み未調理生鮮食材:生鮮,冷蔵,冷凍食品の野外炊事場調理用レーション


 アメリカ軍によって使用される、生鮮、冷蔵、冷凍食品によって構成されるレーションである。生鮮、冷蔵、冷凍食品を使用する点でAレーションはBレーションと区別されているも、一応十分な冷凍・冷蔵施設がなくとも保存できるよう配慮し缶詰や保存料も用いている。


 Aレーションは温めて食せるよう、給仕施設で使用し調理されるか野外炊事場で調理された後所定の食事施設で食べられるか、あるいは固定給仕施設で調理された後野外へ容器で運ばれることもある。


 1個小隊:50人相当分の食事を整頓/配布/準備を容易にするため、1つに収めたユニット式集団用レーション(Unitized Group Ration:UGR)-Aで、良質な《Aレーションの》食事を供給するために生鮮/冷凍の主菜と時には民間で販売されている食品をそれぞれの食事用モジュールへ送る。

 固定給仕施設どころか、野外炊事場までもが利用できない場合にも、電熱線で沸かした湯か使い捨ての付属品で加熱用モジュールを用いることで調理することができる。

 少なくとも9ヶ月の消費期限(やや腐りやすい食品は26℃で、腐りやすい食品は-18℃で)が設定されている。



▼Bレーション  駐屯地給食用の包装済み未調理食材:缶詰や保存料を用いた野外炊事場調理用レーション。


 アメリカ軍で使われる、缶詰や保存料を用いたレーションである。Bレーションは野外炊事場で調理される事を前提とし、野外及び室内で十分な冷蔵・冷凍施設がなくとも準備調理できる。Bレーションは、生鮮・冷蔵・冷凍食品を使わないという点でAレーションと異なる。

 また野外炊事場での調理を必要とするという点では、部隊または個別に配布される調理不要のCレーションやMREとも区別される。


 もっとも過去のBレーションは、しばしば野外炊事場でちゃんと訓練された兵士によってのみ調理されていたが、現在では誰でも野外での最低限の追加調理で一応食べられるものになるよう食物繊維を中心とした包装済みの食料となっており、過去の部隊用食料である10-in-1レーションや5-in-1レーションに類似している。今日では、BレーションはUGR-Bとしての側面も持ち、野外炊事場が利用できない際には、これも電熱線で沸かした湯、または使い捨ての付属品と加熱モジュールで調理することができる。



▼Kレーション 1日3食分が一包化されている特徴:移動部隊が短期間に喫食する非常携帯食のはずが一般用のレーションとして広く支給


 アメリカ軍が第二次世界大戦中に製造、配給したレーション(戦闘糧食)である。1日3食分が一包化されている特徴があり、1包あたり2830〜3000キロカロリー。軽装備の兵士による短期間の調査研究を経て1942年に登場した。その際、軽量レーションをKレーションに一本化するため、以前から採用されていた山岳用レーション(M-Ration)とジャングル用レーション(J-Ration)とが廃止された。元々は兵站研究所が戦争の初期に空軍の依頼を受けて作った降下兵用のポケットレーションである。


 なおKレーションに付された記号Kは、他のレーションと区別しやすいように選ばれたもので特別な意味を持たなかったが、初期の研究に携わったアンセル・キース博士の苗字、あるいは本レーションが支給されるであろう「コマンド」部隊の頭文字であるとの俗説もある。


 Kレーションは空挺部隊・戦車隊・オートバイ部隊・その他の移動部隊が、あくまでも短期間で喫食する為の非常携帯食として開発されたにもかかわらず、一般用のレーションとして広く支給されたため重作業に従事したり過酷な環境下にある兵士へのカロリー不足、ビタミン不足、食味の単調さ(Kレーションに飽きた将兵が内容物の一部を捨てることで、摂取カロリーがさらに減少する悪循環ともなった)を指摘され、後のCレーションに取って代わられた。


 それぞれのレーションは蝋紙の箱に入り、一応朝食(Breakfast)・昼食(Dinner)・夕食(Supper)に分封されてはいる。内容物は数回変更されており、下記はその一例である。


・朝食ユニット

 メインの缶詰(ハムエッグ・仔牛のミートローフ)、ビスケット、ドライフルーツまたはシリアルバー、トリクロサン塩酸塩による浄水剤、タバコ、チューインガム、インスタントコーヒー、砂糖。


・昼食ユニット

 肉缶詰(鶏パテまたは豚ランチョンミートと人参・リンゴ、または豚ミートローフ、またはソーセージ)、ビスケット、2オンスのDレーションチョコレートバーまたはトロピカルバーまたは(気候により)市販のチョコレートバー、トイレットペーパー、タバコ、チューインガム、ブイヨン。


・夕食ユニット

 メインの缶詰(プロセスチーズ、ハム、またはハムチーズ)、ビスケット、麦芽入り粉ミルクまたはキャラメル、砂糖、塩、タバコ、マッチ、チューインガム、粉末ジュース(レモン・オレンジ・グレープ味)。



 米軍のレーションの例に漏れず(?)、「恐怖のKレーション」と呼ばれて不評。

だが、日本やドイツの捕虜には大好評。特に砂糖やチョコバーの甘みには涙する者もいたとか。


 補給状況が好転しない基地の食堂に「本日のメニュー 朝Kレーション、昼Kレーション、夜Kレーション」という張り紙をする兵士がいたそうな。粉末レモンジュースが付属していたようだが、味は大丈夫なのだろうか? 実際の話、兵士からは総スカンを喰らった代物らしい。


 1948年には廃止されることとなったが、倉庫の膨大な過剰在庫はヨーロッパ等の戦災市民への食糧供与などにで処分された。


 他のレーション等と同様に、Kレーションでも誤用によって人気を落とす事となった。本来2,3日の短期間の使用を目的に開発されているにもかかわらず、時には1週間もKレーションが続く事すらあった。他に食糧が無い場合もあったのだが、Kレーションが支給しやすいと言う理由で過剰支給される事も多かった。こうして、Kレーションはその価値を下げてしまったのである。



▼Cレーション 個人用戦闘糧食:“Meal, Combat Individual”MCIレーション


 アメリカ軍が第二次世界大戦から1980年代にかけて製造、配給したレーション(戦闘糧食)である。頭文字のCは、駐屯地給食用の未調理生鮮食材であるAレーション、同じく包装済み未調理加工食材であるBレーションの次に区分されるレーションを意味する。正式名は“Meal, Combat Individual”(個人用戦闘糧食)。MCIレーションと呼ばれることもある。缶詰中心で重量や缶の処理の問題があった。


 Cレーションの起源は第1次世界大戦中に遡る。兵士1人が1日に必要な3食分を供給し、かつ保存が利き、味が良く、そして栄養バランスの取れたレーションの開発が試みられた。それまでの味が単調だったリザーブレーションに、「ビーフシチュー」や「牛肉入りヌードル」、「ラムシチューそれ」に「アイリッシュシチュー」と言うような家庭的なメニューを12オンス(340g)入りの長方形の缶詰にしたものを加える提案を基にして、3つの肉ユニットと3つの乾パンユニットとで構成される試作レーションとしてまとめられた。この6つの缶で構成される試作品は好意を持って受け止められ。リザーブレーションの後継としての開発を認められ、主食は「肉と豆の煮込み」、「肉と野菜のハッシュ」、そして「肉と野菜のシチュー」の3種類。ビスケットの数が減らされ、その代わりチョコレートとインスタントコーヒーが追加された。1941年の終わりに個別包装されたキャンディとチョコレートキャラメルが採用された。


 結果、それぞれのレーションは缶で供給され装備も含めると極端な重さになったが食糧を放棄するわけにもいかず、また缶の開封や処理の問題もあり兵士たちは苦労したという。また、B2ユニット "B2 Unit" には、チーズ・クラッカー・キャンディー・缶入りデザートと付属品パックが付いていた。付属品パックは、P-38缶切り、ホット飲料、塩・砂糖のパック、プラスチック製スプーン、チューインガム、4本入りたばこパック、トイレットペーパー数枚という構成であった(改良と年次で構成は異なる)。完全なCレーションの組み合わせを完食すると、1,200kカロリーを得ることができた。


 健康問題により、1975年にたばこが付属パッケージから除外されまた、1983年から大幅に軽量化されたMREレーションが配給されはじめ、Cレーションは段階的に廃止された。



▼Dレーション 個人携帯用非常食:アメリカ軍用チョコレート


 主に士気高揚とカロリー補給を目的とする為に兵士に配給しているチョコレート製品のことである。チョコレート・カカオ油脂をベースとして栄養、特にカロリー面を強化した個人携帯用非常食で、主に第二次大戦中に米軍で使用された特殊レーションである。


 1932年の騎兵部隊用エマージェンシーレーション(チョコレート、砂糖、そしてピーナツバターから成る12オンス(340g)のチョコレートバー)が母体となった。しかし、試作品は品質保持できなかったのと、また性質上やたらと喉が乾くために、あまり受けは良くなかった。だが、試作と実地試験は繰り返され、1935年に兵站学校によってレーションとして完成した。


 緊急時、早急に空腹感を満たし活動に必要なカロリー摂取のみを目的とした物で、小型・軽量のスナックバー(ヌガーバーやシリアルバー等)を原型とした、非常用携帯食である。これは、時間や社会にとらわれず幸福に空腹を満たすときつかのま自分勝手になり自由になるという事は、誰にも邪魔されず気を遣わずものを食べるという孤高の行為とは、それは平時における贅沢であり、その行為こそが現代人に平等に与えられた最高の癒しと言える……そういう事を思い出させてくれる味なのである。


 一応名目上栄養バランスに富んで食する楽しみをも満足させる目的を持って開発されたCレーションとは異なり、開発段階から高温時の溶出防止に耐熱性が重視され、味覚や食感などはまるで考慮されていない。遭難や補給線の分断など通常のレーション供給が不可能な状況時のあくまで飢餓による士気低下防止目的のみで開発され、1932年に緊急用レーションを原型として約110グラムのブロック状の食品が完成し、1938年に制式採用される。


 チョコレート・砂糖・脱脂粉乳・ココアバター・オート麦・香料が原材料。パラフィン紙や紙で包まれ紙箱に収められる。平静時成人男子1日当たりの必要熱量1800kcal相当:1食熱量約600kcal×3個が1日単位として包装。1日4個の摂食により、活発に活動する成人男子1日当たりの必要熱量2400kcalを充足可能だが、あまりのまずさ……風味の貧弱さから餓死を忌避する程度しか摂食出来なかった。


 1940年代、数億個とも喧伝されるほどの過剰生産により第二次大戦中を通じて一般食として支給され、兵員たちの評判は最悪を極め士気低下防止目的のはずが士気にも関わったため1944年に製造を終了し、メニュー豊富で栄養バランスが重視された一般的な屋外配給食とされるCレーションや、軽量コンパクトにまとめられ落下傘降下部隊用に開発された特殊レーションの改良型であるKレーションへ代替された。

 非常用であるため意図的に結構堅いので食べるのに時間が掛かり、また意図的にクソ不味く作られたにも拘らず、億単位で生産されたため非常用であるはずが通常時の食事にまで供された結果、兵士の士気に深刻な打撃を食らわせた。なお味の指定は「ふかしたジャガイモよりマシな程度」、嗜好品として食べるのを防ぐ為とは言えもはや想像が付かない。

 本品の評価は低いが今日のレーションには本品類似の小型版(ちゃんとした市販品の太い直方体状のハーシー・スイートチョコレート)が付属された物もあり、これは副食として一定の評価がある。現代では簡便に空腹感を充足させる本品類似の食品も広く市販されている……というより、もともと類似の食品こそ以前から市販されていた。元祖カ○リーメイト/ス○ッカーズとも一部では呼ばれパッケージの方が急激な進化を辿っており、終いには耐毒ガス加工を施したのが出てきた。


 そもそもDレーションの開発での大きな失敗は、このチョコレートバーの使用目的についての喧伝が徹底されていなかった事である。結果的に、Dレーションを本来の正しい用途である緊急非常用食品としての利用は余り行われていなかった。その為に、緊急用食品として申し分の無い容積、重量、栄養分、パッケージ、品質等の特徴を持ちながらも、あまり受け入れられなかったのである。それにもかかわらず、戦争を通じて兵站研究所ではDレーションに関する研究が最も熱心に行われていたのである。

 まあ、そもそも非常用にも関わらずのその過剰生産にこそ大きな失敗があるのではなかろうか?


現実:食-兵糧-レーション-米軍 MREエムアールイー へ続く

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