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現実:聖火リレー

 古代オリンピックとは、オリンピアの神々に奉納されたスポーツの祭典。

前8世紀に始まり、キリスト教のローマの国教化にともない異教的な祭りとして否定され、

4世紀末に終わった神事。


 また、開催場所はアテネではないこと、

オリンポス山(ギリシア北部にあり、十二神が住むとされている山)とも違うことに注意。

古代ギリシアのペロポネソス半島の西北にあるオリンピアの神域は、

デルフォイとともにどのポリスにも属さず、ギリシア全体の崇拝を受ける地であった。


 オリンピアの神域は古代オリンピック消滅後、長く荒廃していたが、

1766年にイギリス人のチャンドラーという人が発見し、

発掘が始じまり現在も断続的に発掘が続いている。


★聖火リレー:

 近代オリンピック大会の開会式典で行われる儀式である。

古代オリュンピア祭の〈たいまつ競走〉の故事にならい、

聖火は古代オリンピック発祥の地である聖地オリュンピア(ギリシア)のヘラの神殿の前で、

古代ギリシアの巫女みこに扮した女性(ギリシアの女優たち)の手で、

太陽光線から採火された聖火をリレーによって

オリンピック競技大会開催地のメインスタジアムまで運ぶこと。

 開会式典でメーンスタジアムの聖火台に点火され、

大会の終了まで燃え続けるこの儀式は、

平和と人類愛をうたうオリンピック理念を象徴するものといわれている。


 これは、古代ギリシアのアテナイで行われていた

4年に1度開催された最大の祭典パンアテナイア祭

(4年目ごとの大パンアテナイア祭と、

 毎年行われる小パンアテナイア祭とがある)の

〈たいまつ競走〉の故事にならい、

1936年の当時ナチス政権下のベルリン・オリンピック競技大会の際に、

スポーツ歴史学者で組織委員会事務総長を務めたカール・ディームの発案で初めて試みられた。

ハイルヒトラー⁉


 もう少し詳しく言えば、ベルリンの組織委員会は、

ギリシアのオリュンピアで太陽光を凹面鏡で採火した松明(たいまつ)をリレーして、

ベルリンの大会会場のメイン・スタジアムまで運び燃え上がらせる演出を行ったのだ。

以後の大会では全てこの方式が継承され、

聖火台に点灯された聖火は大会終了まで燃やし続けられる事になる。


 とは言え実は聖火そのものは、アムステルダムオリンピック(夏季オリンピック1928年大会)で初めて灯されたのであり、

聖火リレーが、ベルリンオリンピック(夏季オリンピック1936年大会)で初めて実施されたのだ。


 また、このヒトラー政権下のベルリンで開かれた第11回大会では、

ナチス政府は競技場に〈ハーケンクロイツ(かぎ十字)〉の党旗を

初めて公式の国旗として掲げるなど政治色が濃かったが、

IOCは、あくまでオリンピック大会の主催権がIOCにあると主張して、

ユダヤ人排斥の宣伝物を会場周辺から撤去させるなど、

極力政治的干渉に抵抗しオリンピック運動の独自性確保に成功したと発表。


 この他、聖火リレー・聖火台(1936)・3段の表彰台(1932)など、

のちにIOCで規定される式典様式はこの大会で創始されたものが多く、

オリンピック大会の規模と形式はロサンゼルスとベルリンの両大会から決定的な影響を受けた。

IOCが記録映画をつくるようになったのもベルリン大会からである。


 だが、その発案がナチス陸軍のものであるため、

聖火コースの設定が当時ナチス政権による〈軍事目的の実地調査〉との批判があり、

第2次世界大戦後、存続の是非が問題になったこともあるが、

結局大会前にオリンピックを盛り上げる効果があり継続された。

道義より儲けである。



▼近代と古代の比較:

 古代オリンピックの聖火に倣って近代オリンピックで象徴的に用いられる聖火なのだが、

これは、ギリシアのオリンポス山で太陽光から採火され、

大会の開催期間中、オリンピックスタジアムに特設された聖火台で灯され続けるものだが、

オリンポス山から聖火台までの道程は、

アテナイ(アテネの古名)の大祭であるパンアテナイア祭のたいまつ競争に倣って、

選定された走者(聖火ランナー)が聖火トーチを持って走り、

開催国内を主とした各地をリレー形式で巡る(聖火リレー)。

つまり古代オリンピックとは、直接関係無い行事である。



 本来、古代のオリュンピア大祭の聖なる火とは、

プロメテウスがゼウスの下から盗んで人類にもたらした火を記念し、

古代ギリシアのオリュンピア大祭(古代オリンピック)にて、

オリュンポスのゼウス神殿にあるゼウス像前の祭壇に捧げられ、

祭りの開催期間中祀られ続けたものである。


 また、本来オリンピアの祭典とは、デルフォイの神事と並び、

ギリシア人がヘレネスとして同一の世界を形成していることをたしかめる

ポリスの枠を越えた“国際的祭典”として挙行したものであった。


 なおこの際の聖火とは、聖地オリュンポス山(オリンポス山)にて、

炉の女神ヘスティアを祀る11名の巫女が太陽光から採火したものである。

また、ゼウスの祭壇に聖火を灯す栄誉は、

スタディオン走(古代ギリシアの短距離走)の優勝者に授けられたのであった。

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