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現実:医食 バラ油(ローズオイル)・薔薇水(ローズウォーター)・ローズシロップ

★バラ油 (ローズオイル):

 薔薇バラ油・薔薇バラ精油・ローズオイルは、

バラの花から抽出される揮発性の油で、バラの芳香を持つ。


 厳密には「精油」と「アブソリュート」があり、

・「精油」は水蒸気蒸留によって抽出され、

・「アブソリュート」は溶剤又は超臨界二酸化炭素を用いた抽出によって得られる。

なおローズアブソリュートは、

昔は精製した豚油などの油脂と共に花を加熱して油脂に香りを移し、

エタノールで抽出するアンフルラージュ(温浸法、熟成法)で抽出されていた。


 また抽出法や原料のバラの品種の違いで、成分組成・芳香が異なる。

ローズオットー、モロッコローズの精油、

ダマスクローズ、ブルガリアローズのアブソリュートなどがあるが、

特にダマスクローズのアブソリュートは精油の女王と言われ、

感情を落ち着かせる作用があるとされる。


 精油、アブソリュート共に香料として多くの食品に添加される。

香水にも広く利用されており、

ローズオットーの精油は、フローラル系に使う場合、少量でもかなりの効果が見られる。



 水蒸気蒸留の副産物として、

バラの芳香を持つ芳香蒸留水ハイドロゾル、バラ水(薔薇水、ローズウォーター)が得られる。

だが多くの場合、芳香蒸留水に含まれる精油も、溶剤を使って抽出される。

バラ油はattar of rosesとも呼ばれ、バラの粉砕された花びらを蒸留して得られる精油であるが、

バラ水は水蒸気蒸留の際にバラ油と共に生成されるのだ。


 水蒸気蒸留は、中東(アラビア、ペルシャ)で最初に開発されたプロセスであると考えられている。

中世イスラム世界で水蒸気蒸留技術が改善されたことで、現代の様な大量生産ができるようになり、

香料産業はより効率的・経済的になった。

8世紀終わりから9世紀初頭にアラビア世界で製法が確立され、広く生産されるようになった。

イスラム世界の薬剤師たちがこの技術の開発者といえるが、

それより後の時代のペルシャ人化学者のアル・ラーズィー(865 - 925)

またはイブン・スィーナー(980 - 1037)といった西洋で著名な化学者・錬金術師の名が、

水蒸気蒸留の確立に貢献したとして象徴的に挙げられることもある。


 なお中世アラビアで、バラの水蒸気蒸留はバラ水を作る目的で行われていた。

蒸留技術の進歩によって、より効率的で収益性の高い商材となった。




薔薇水ローズウォーター

 薔薇水(ばらすい、しょうびすい)、(ローズウォーター)は、その名の通りズバリ、バラの水。

正確には薔薇の蒸留液のことをローズウォーターと呼ばれています。

細かく言えばバラの花びらを水蒸気蒸留して作られるハイドロゾル分であり、

この液体は、現在は香水に用いられる精油のバラ油を製造する際の副産物として作られている。


 蒸留されたバラは、蒸留水とバラオイルに分けられ、

このオイルから分けられた後に残る純粋な水分を、いわゆるローズウォータと言うのです。

つまり本物のローズウォーターは、まじりっけなしにバラの天然成分が溶け込んでいる水なわけです。


 バラはもともとハーブとして古代から親しまれてきた花なので殺菌効果があります。

そして良質なローズウォーターは天然成分だけでつくられていますから、

なんにでも使えるのが特長です。

用途として、ヨーロッパやアジアで宗教に使用されるほか、

様々な化粧品や医薬品、飲食物、香りを付ける用途に使われる。


 イラン、インド、インド亜大陸などの国々では、

Gulab(グラブ、ペルシャ語でGulバラ+Ab(水))と呼ばれる。

中部ペルシャではGogol、ビザンチン・ギリシャではzoulápinとして局所的に知られていた。

ローズウォーターの原料であるダマスクローズは中東が原産地です。


・食用

 バラ水は非常に独特な風味を持ち、

ペルシャや中東の料理、特にロクム、ヌガー、ガムドロップ、バクラヴァなどの

お菓子によく用いられる。

イランでは、紅茶、アイスクリーム、クッキーなどの菓子類に少量加えられている。


 アラブ世界、パキスタン、インドでは、

フレーバーミルク、およびライスプディングなどの乳製品ベースの料理に使用される。

また、紅茶以外の甘い飲み物にも加えられる。


 バラ水は、料理で使用される赤ワイン等のアルコールが

宗教上ハラールとして禁じられているため代替案としてよく使われる。

プレミアリーグは、イスラム教徒の選手に報酬を与える際に、

シャンパンの代わりにバラ水をベースにした飲み物を提供している。


 マジパンは長い間バラ水で味付けされてきた。

元々マジパンは中東から来たもので、中世の頃に西ヨーロッパに伝来した。

今でも食後のスナックとして提供されている。


 歴史的シリア地方ではお湯で割ったものを白コーヒー(カフウェ・バイダー)と呼ぶ。

中東地域では、一般的にレモネードやミルクにもバラ水が加えられている。

水道水に含まれる不快な臭いや風味を隠すために、水にもよく添加されている。


・化粧品・医薬品

 バラ水は香水にも含まれる成分である。

また、バラ水外用薬は保湿化粧水として使用されることがあり、

コールドクリームなどの化粧品に使用されることがある。

特に冬の間、インドの一部の人々は保湿と香りのために顔に吹き付けている。

インドの結婚式によく振りかけられている。

歴史的シリア地方でも化粧水として用いられている。

中世ヨーロッパの食事では、宴でテーブルと手を清めるのに使われた。


・宗教的な使用

バラ水は、キリスト教、イスラム教、ヒンドゥー教、ゾロアスター教などの

各種宗教的な儀式で香水として使われている。


 特にイスラム教では、メッカにあるカアバを掃除する時、

ザムザムの泉の水にバラ水を混ぜ使用している。

また、葬式で埋葬する時に、亡くなった方を入れる前に墓の穴の中に振り撒く慣習がある。


 キリスト教、特に東方正教会では重要視されている。

聖金曜日の夕方にバラ水をエピタフィオス

(十字架から降ろされたキリストを刺繍した布)と信徒に振りかける儀式がおこなわれる。

教会によっては、聖水に加えてイコンなどを洗浄することがある。


 バハーイー教では、

最も聖なる本が信徒にバラ水を使用するよう命じている。




☆ローズシロップ:

 ローズシロップは、バラ水に砂糖を加えられて作られる。

芳醇な甘い薔薇の香りと濃い赤色が特徴。

ファールーダにはローズシロップが材料として欠かせない。



▼歴史:

 ロサ・ダマスケナは、バラの品種であり、ダマスクローズという別名で知られている。

花は優良な香りで知られており、香水の成分として使用されるローズオイルを抽出するためと

さらにローズウオーターやローズコンクリートを作るためにも商業的に収穫されている。


 バラは遥か古代から聖なるものの象徴とされてきた。

それは美の女神ヴィーナスに“美しさの象徴”として奉納されていることからもわかる。

6万年前、人類が最初に利用した花の一つとされているのがバラ。


 イラク北部の洞窟から発見されたネアンデルタール人の骨の近くから花粉が検出されている。

これは死者の周りを花で飾り、埋葬した証拠と考えられている。

分析の結果、数種類の花粉の中からバラの古代種と思われるものが見つかっている。

色も赤、緋、橙、黄、白とにぎやかだったようだ。

ちなみにバラの故郷は中国やインドの常緑樹森である。


 古来から、バラは薬学的に、栄養的に、そして香粧品の原料として使われてきた。

古代ギリシア人、古代ローマ人、フェニキア人は、

広大な公営バラ園を果樹園や小麦畑などの耕作地と同様に重要と考えていた。


 エジプトでは紀元前13世紀前半に初めて観賞用として栽培が開始された。

特に女王クレオパトラ7世( 紀元前69年 - 紀元前30年)は、

バラをこよなく愛した人物として知られている。

(「クレオパトラ」の名はギリシア語で「父親の栄光」を意味する。

 プトレマイオス朝はヘレニズム国家の一つ。マケドニア出身のマケドニア人が創始した。)

有名な話として、宮殿で宴会が開かれる際、招待客を迎えるためバラの花びらを30cmも積み上げ、

自らもその香りを楽しんでいた。

また愛する人のため船をバラで埋め尽くし、船の帆にバラの香りを染み込ませ相手に届けたとされる。


 バラは古代ローマにおいて宗教的儀式や祭りで使われ、まさにローマ帝国の繁栄のシンボルであった。

また初代皇帝アウグストゥス(紀元前63年~紀元14年)は

5月下旬から6月初旬に“ロザリア”と呼ばれるバラ祭りを誕生させた。

この祭りは解放された奴隷の儀式でもあったことから、

バラは“自由のシンボル”としても人々に親しまれるようになる。


 その後、ローマでは一般市民もバラの栽培を始め、

バラの庭園“ローザリウム”ができたほどだ。

現在イギリスでも親しまれているバラ園の語源は、古代ローマからきている。


 香料原料としての花の栽培は、

3世紀にパルティアに代わりイラン高原・メソポタミアなどを支配した

サーサーン朝ペルシャにまでさかのぼる。

そもそもダマスクローズは、今ではブルガリアなどでその名前が知られていますが、

元来はペルシャ帝国(現在のイラン)が発祥の地と言われています。

そう、ペルシャ帝国の首都でもあったシーラーズでダマスクローズの栽培がはじまりまりました。


 ですが今では、世界屈指のバラの生産国と言えばブルガリア!

世界一の香りと品質を誇るダマスクローズのオイルは、

シャネルやイヴ・サンローランなどの高級フレグランスにも使用されるほど。

ダマスクローズは16世紀後半にオスマン・トルコからブルガリアに輸入され、

現在ではヨーロッパのバラ香油の産地としてその地位を確固たるものとしているのです。


 なおバラの原産国といえば中国が有名ですが、

実際にブルガリアにバラの種を運んできたのはトルコ人。

ブルガリアにバラが伝わったのは、

16世紀後半のオスマン・トルコ帝国スルタン(王)ムラドゥ3世の命令によるものだった。

当時からローズオイルの貴重性が高く評価されていたとの記述が残されている。

1600年代には、ブルガリアはすでに世界でも屈指のローズオイル生産国になっていた記録などもある。


 その後1840年にフランス領事官が、ブルガリアのカザンラク(バラの谷)では

良質のローズオイルが生産されていると報告してる。

余談ではあるが、ブルガリアにおいて初めてローズオイルの会社が設立されたのは1820年で、

とても長い歴史がある。

時代も地域も飛び越え、バラが人々に愛され続けていることがわかるエピソードばかりである。


 そんなブルガリアを象徴するダマスクローズは中央部のカザンラクで栽培されています。

ローズオイル生産の中心地であるカザンラクは、ブルガリア・スタラ・ザゴラ州にあり、

カザンラク平原に開けた都市であるカザンラクは有名なバラの谷の東端に位置している。

そう、ブルガリアの中央を東西に走るバルカン山脈とスレドナ・ゴラ山脈にはさまれた一帯は

今やバラの谷と呼ばれているのだ。

バラの谷とは、この地方が香油用のバラの生育に適していることを意味するもので、

バラ畑は広大な谷の各地に点在している。

バラの谷一帯は香水用のバラ栽培が主要産業で、

全世界の約8割近くのシェアを占めているという。


 谷の反対側には中規模の高さの山脈があり、

5月はとくに素晴らしくバラの野に咲く花や芳しさは比類無いものである。

バラの収穫は、早朝4時頃から始まり、昼前に終わるのが普通だ。

バラは陽にさらされると香り成分が消えてしまうため、その作業は時間との勝負なのである。

摘まれた花はその日のうちに工場に届けられ、釜で蒸され、蒸留されて香油となる。

1000 gの香油を造るのに、3500 kgの花弁が必要とされる。


 しかし当のバラは観賞用のそれとは比較にならないくらい地味な花である

(しかも開花すると同時に摘み取られてしまう)。

とはいえ、5月から6月にかけてのバラの開花時期に、そのバラ畑の中に身を置くと、

風を染めるバラの香気が甘く肌をくすぐるのを感じ、

その花のけなげな愛らしさにも心を打たれるだろう。

この谷の中心都市カザンラクという地名も、

香油を精製するために用いる蒸留釜カザンの名に由来している。


 一方イランでは、ダマスクローズは紀元前1200年頃から栽培され、

その間、一度も品種改良されていません。

フランスやブルガリアのバラは採油量を上げるための品種改良を行う事もありますが、

イランは古代ペルシャ時代より厳しい環境で咲き続けるローズを原種のまま大切に管理しています。


 イランのダマスクローズの産地は乾燥した高地にあり、

朝晩の寒暖差は20度以上になる事もある過酷な環境。

害虫が生きていけないため、無農薬でも元気な花を育てる事ができます。

バラ摘みは、早朝のまだ花が咲ききらないうちにはじまります。

山のミネラルたっぷりの雪どけ水を使って、その日のうちに蒸留。


 伝統的な大釜を使い、水蒸気蒸留法でローズオイルとローズウォーターを抽出します。

ダマスクローズを蒸留すると、ローズオイルが上に膜を張り、ローズウォーターが下に沈みます。

ローズウォーターにはローズオイルにない水溶性のフェニルエチルアルコールが含まれています。

古代医療では天然の鎮静剤として、また今でもイランのお葬式では参列者の悲しみを和らげるため

ローズウォーターをまいているそうです。


 当初は宗教儀式や後にモスクのお清めなど、浄化のために使われる事が多かったそうです。

神聖な場所や冠婚葬祭には必ずローズウォーターがありました。



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