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現実:用語 車輪の再発明

▼車輪の再発明:reinventing the wheelの日本語訳。

車輪の再発明とは、

既に存在しているものを再び一から作ること、

つまり誰かが既に発明しているものを、ゼロからコストをかけて発明する、という意味である。


 IT業界の中でも主にSE・プログラマの間で良く用いられる、車輪を題材にした

「広く受け入れられ確立されている技術や解決法を知らずに(または意図的に無視して)、

同様のものを再び一から作ること」を意味する慣用句であり、世界中で使われている。


 新たな付加価値が何もないものを作成するのにコストをかけることから、

皮肉的なニュアンスで用いられる。

再発明を行ってしまう理由としては、

「既存のものの存在を知らない」

「既存のものの意味を誤解している」

といったことが挙げられる。

或いは、

「同じ状況に置かれた人間はだいたい似たようなことを考えて同じように行動(作成)してしまう」

という人間の近似性を表すものかもしれぬ。

なお、IT分野では「過去にある技術なのは解ってるが特許の関係でそのまま使えない」状況が多く

割りと頻繁に再発明してるらしい。


 主にIT業界、とくにSEやプログラマの間で良く用いられる。

プログラミング言語には標準で提供されている機能(関数など)があるが、

それらを再作成してしまうことを指す。

しかし、標準で提供されているものは注意深く検討した上で作成されており、

バグは少なく、処理も速いため、再作成は

余程のことがない限り作成のために使った時間と金をロスするだけである。

だがこれらの業界では、このようなライブラリや先行事例があるにもかかわらず、

様々な理由でそれを利用せず、

コードやプログラミング技法を再び一から作ってしまうことが多い。


 これは現代のコンピュータおよびネットシステム等の開発においては、

ライセンス形態が多様で、似たようなものがあっても実際の開発現場では

それが事実上利用できないことがあるほか、

機能的には似ていても設計思想の違いから

システムの発注者がその仕様を好まないため新規開発せざるを得なくなる場合もある。


 ただ、本当にその設計思想が必要なものかは議論すべき問題であり、

特に広く普及している標準部品を無視して開発された独自アーキテクチャは

しばしばシステムの利用者を困惑させる。


 特に商用システム上で車輪の再発明を行ってしまった場合は、

作成した後も試験・運用などの開発フェーズでも面倒を見る局面がありコストは更に嵩む。

また担当SEやプログラマが入れ変わった場合に、

再発明された機能のコードまで含めて勉強させなければならないため、

無駄になるコストは意外とバカにならない。


 とは言え、あえて再発明をする必要がある時もある。

例えば現状のプログラムがなんとか動いているのだがコードがスパゲッティになってしまい、

それ以上の拡張性を期待できなくなった時などである。

しかし、このような際多くの場合は設計がまずいことが多いため、

リファクタリングを行ったほうが適切である。


 なお、教育の現場では、ある技術の意味を理解させるために、

意図的に「車輪の再発明」を行わせる場合がある。

またプログラマもしばしばその技術を深く理解して自身の技術を向上させるために

敢えて「車輪の再発明」をすることもある。

ソフトウェアの世界では、基本的には「車輪の再発明」は否定されている。

しかしながら、本当にそうなのだろうか。

すでに存在するコードを流用するのと、自分でゼロからソフトウェアをデザインし、

テストし、バグ修正をして品質を高めていくのとでは、まるで違うのです。

「車輪の再発明」をしようと思えば、ただ単に目的に合う部品を探してきて、

適切な場所にはめ込むだけでは済まなくなります。

部品から自分の手で作ろうとすれば、その部品に中でどういう処理をさせる必要があるのか、

また他の部分はどういう処理をしているのか、嫌でも詳しく知ることになります。

その場合、一時的には標準的なシステムと異なる路線になっても、

最終的には標準的な路線に回帰していくこともある。




▼関連語句:

・自前主義 "Not Invented Here"

 自社あるいは自国内で発明されたものでなければ採用しないというもので、

 大企業や大国にありがちな問題

(頭文字をとって「NIH シンドローム」という)

 としてよく指摘される。


・四角い車輪の再発明 "reinventing the square wheel"

「車輪の再発明」をしたうえに、既存のものよりも役に立たないものを作ってしまうこと。




▼オーストラリア・イノベーション特許2001100012号:批判

 オーストラリアでは2001年にジョン・マイケル・キーオによって車輪が再発明され、特許が取得された。

 ただし、取得した特許は通常の特許ではなく、

 オーストラリアで2001年に導入されたイノベーション特許である。

 これはまじめな発明としてではなく、

 イノベーション特許制度がほぼ無審査であることへの批判を目的として、

 故意に申請されたものであった。


 オーストラリアにももちろん審査を経た上で権利が認められる通常の特許制度があり、

 この発明も同制度のもとでは到底特許として認められるものではない。


 しかし、イノベーション特許制度は、実体審査を経ないで特許が与えられるため、

 この発明に特許が与えられることになったのである。


 実際には、イノベーション特許には、

 侵害訴訟を起こす際に事前に特許庁の審査を受ける必要があるなど、

 実際に権利行使を行うにあたっての制約がある。


 この車輪の発明にしても、実際に権利を行使しようとすれば、

 特許庁での審査で特許性がないと判断されるであろう。

 また、イノベーション特許には、通常の特許と比較して短い権利期間しか認められていない。


 このように通常の特許とイノベーション特許とには大きな相違があるが、

 一般には両者の相違が知られていなかったため、

 このイノベーション特許は「車輪の再発明」として話題になった。

 なお、キーオとオーストラリア特許庁は、その年のイグノーベル技術賞を受賞した。

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