現実:調理器具 チムニーケトル(ボルケーケトル・ファイヤーケトル・ケリーケトル・ストームケトル等)+パーコーレーター
★底が平らなものを「ケトル」、底が丸いものは「やかん」と分類される傾向
燃料やストーブを別に持ち歩く必要がなく、
この鍋ひとつで小枝や葉っぱを拾って燃やすだけで
短時間でお湯を沸かすことができる革命的な湯沸し装置それがチムニーケトル。
▼チムニーケトル:ボケーノケトルはロケットストーブによく似たり。
煙突型のケトルは
その名のとおりケトルの真ん中に火の通り道の煙突が空いており
(断面形状はドーナツ型、筒状の内側が煙突になるという仕組み)
そこが熱の通り道となることで燃焼エネルギーを最大限利用し、
非常に高い燃焼効率を実現してお湯を沸かすことができるのだそうです。
チムニー効果(煙突効果)というのは、
「熱せられた空気は上に上がる」という極めて基本的な原理を利用したもので、
ケトル下部のファイアーベースで燃料が燃え、
熱せられた空気はケトルの内壁を熱しながら上昇します。
この煙突効果は絶大で下の炉に火を入れると煙道の周りの水が沸き、
また同時に火柱が上がることで上部に別のケトル(鍋等)を載せることもできます。
それらチムニー効果によって高燃焼効率と熱交換面積を増やす事で
総合的な効率化を実現しているのです。
ただ欠点もいくつかあり、
まず構造上、水を入れられる容量が大きさの割に少ないこと。
水を入れすぎると沸騰したときに盛大に吹き零れること。
煙突部分から炎が吹き上がる為取っ手を地面に対し水平状態を保って持ち上げないと火傷必至
また、注ぐときも取っ手を持ちつつお尻に付いている蓋がつながった鎖を
もう片方の手で持ち上げながら注ぐ構造である。
100年以上の歴史があり特許が無いようで、亜種がたくさんある。
もとはアイルランドのジプシーや漁師が使っていた有名なケリーケトルなどからはじまり、
その後ニュージーランドの軍隊が第二次大戦でアフリカに駐留する際に
使っていたサーメッテなど長い歴史があります。
これら歴史あるチムニーケトルは非常に短時間でお湯を沸かせ、
燃料も現地で調達でき、耐候性にも優れていましたし、
さらには水筒としても使えるという利点があったのです。
もっとも小枝を燃やしたりエスビットを燃やすと煤の掃除が大変ですが。
しかしこれらの初期型ケトルはとても大きく重かったのが欠点でした。
たしかに釣り船の上や軍隊のキャラバンでは
その大きさは問題にはならなかったでしょうが、
現代のアウトドアギアとしてはやや重すぎます。
あえて弱点をあげるとすれば湯を沸かすことしかできないこと。
食事は鍋のように調理をしたりするのは難しいのでした。
現代なら基本的にカップラーメンかアルファ米などに限定されます。
鍋をそのまま食器にすることもできません。
しかしながら、沢に降りて水を汲み薪を拾って一生懸命燃したあげく
袋に湯もどししたインスタント食品を食べて満足できるような
サバイバル志向なハイカーにはぜひともおすすめです。
その後、実践的な軽量チムニーストーブが開発され
これはとても軽量であるうえに
小枝や葉っぱなど燃やせるものがあればなんでも燃焼可能で
アルコールやガスなどの燃料を別に持ち運ぶ必要がなく
森林限界下を歩くのであればいくらでも使用できました。
そしてその構造から燃焼効率が非常に高く、
扱う人の技量にもよりますが5分で2杯分の湯を沸かすことができるそうです。
耐候性も優れておりむしろ適度な風があるほうが燃焼がさらに早まるそうです。
さらに中央部チムニーから上部に出る熱が結構熱く、
此処に五徳を設置しケトルを安定させればそこにクッカーを置き
そこでクッキングが出来るようになりました。
チムニーケトル、ボルケーノケトル、ファイヤーケトル、
ケリーケトル、ストームケトル、ギリーケトル、エムケトル、ネイチャーストーブ、
など呼び名は様々で、メーカーと名前は違えど形はほぼ同じ物が多数存在します。
▼ファイヤーケトル:アイルランドの農夫が使用
松ぼっくりやら小枝やらでお湯が沸かせるタイプの調理器具やヤカンをそう呼ぶ。
独特な形はアイルランドの農夫たちが使っていた伝統なものらしい。
……が、やはり他の製品とまるで区別がつかない。
本体は二重構造で水を貯めて、ボトルの中央は筒になっており、
枯れ枝などを燃料に炎がケトルの中を燃え上がりお湯が沸く。
上部に五徳をセットすれば吹き上げる炎を利用し調理もでき、更に暖もとれる優れもの。
▼ケリーケトル:アイルランドの農夫且つ漁師兼釣りガイド、パトリック・ケリー氏が開発
近代的な見た目ですが、ケリーケトルの歴史は非常に長い。
100年以上の歴史を誇るアイルランド出身のアウトドア用のケトル。
アイルランドにある湖のほとりで農夫として生活するかたわら、
サケやニジマスなどを釣っていた漁師兼釣りガイドをしていたパトリック・ケリー氏によって
漁師たちが作業の合間にお茶を飲むため愛用されていた伝統的に用いてきたヤカンを原型に
釣り客に出すスープやコーヒー用のお湯を沸かす道具として考案され、
そのかまどを作る必要もなく無数にある小枝や枯葉を燃料として
繰り返し素早くお湯を沸かす様子が釣り客や仲間の漁師たちの間で評判となり、
ケリーケトルの製造が次第にケリー家のファミリービジネスとして成長していきました。
本体が二重構造になっており、沸かすための水は外壁と内壁の間に入れます。
煙突効果で上昇気流が起こり、内壁全体で水を熱するため湯沸しの待ち時間が数分と
他の鍋やケトル等に比べてとても短いのが特徴。
上部のやかんと下部のファイヤーベースに分かれていて
ガスや薪などがなくとも、枯れ葉や小枝、松ぼっくりなどの自然燃料だけで
お湯を沸かすことができるのもうれしいポイントです。
いつでもどこでも温かい飲み物、食べ物を作ることができるケリーケトルは
風に強く、火が消えにくくて少しの雨にも負けません。
着火も簡単で、下部のカマド(燃焼室)に新聞紙と松ぼっくり等の燃えやすい木質燃料を入れ、
ケトルを乗せて空気口から点火するだけ。煙突効果ですぐに炎が上がります。
ケトルの中央が空洞の煙突状で炎が火山のように見えることから
別名ボルケーノ(volcano=火山)ケトルとも呼ばれています。
なお燃料は上部煙突からも足せます。
オプションでケリーケトル上部の煙突部分に差し込んで
調理器具を乗せるアタッチメントである五徳などをセットすることで、
その上に置く鍋を使えば湯を沸かしながら火元としてお湯沸かすついでに
ちょっとした調理として煮込み調理もまた簡単にできてしまう。
さらにケリーケトルの使用の幅を広げるためクックキットについている網を
ストームケトルと差し替え下部のファイアーベースの上に直接敷けば
ケトルが更に火力の強いクッキングストーブに変身しグリル台に早変わりし、
湯沸しや簡単な煮込み以外の料理にも利用可能に。
またファイアーベースにケリーケトルの代わりにホーボーストーブ台をのせ
ホーボー(19世紀末~20世紀初めの世界恐慌時代の米国の渡り鳥労働者)、
放浪者、ホームレス、およびバックパッカーが使用していた簡易焜炉である
ボーボーストーブとして使えば炎の熱を効率的に使えるのでフライパンでの調理も簡単。
その他、地面からケトルを離すことができ、転倒防止にもなるスタンド
(直火禁止に対応したファイアーベースごと持ち上げる足)も。
しかし、いくつか注意点があります。
一つは水の量です。
注ぎ口ぎりぎりまで水を入れてしまうと沸騰時に注ぎ口から
お湯が漏れてしまう可能性があるので、余裕を持った容量にしましょう。
お湯がこぼれると下部の焚き火が消えてしまう恐れがあります。
そして、もう1点。空焚きはNGです。
素材にもよりますが、アルミなどは空焚きをすることで変形などが生じる恐れがあります。
最後に移動時は気をつけましょう。
ケリーケトルの注ぎ口は大きめに確保してある製品が多いので、
移動時に沸騰したお湯がこぼれる危険があります。
火傷や焚き火を消してしまうことがないように、移動させる時は細心の注意を払いましょう。
▼ストームケトル:英国
雨天時や朝食など、焚き火が面倒な時にとても便利な
英国からやってきたお洒落な筒ヤカンです。
ケリーケトル( Kelly kettle)にはない安定感のある丸みを帯びた形状が売りです。
アイルランドの漁師が伝統的に用いてきたボルケーノケトル(火山ヤカン)が
ストームケトルの原型です。
煙突上部から出た火で調理も可能なので、
お湯+調理という利用価値は、この製品ならではの機能。
ケトル自体が、燃焼筒(あるいは煙突)になっていて、
ロケットストーブを連想させます。
厳しく長い夜を漫然と過ごす西アイルランドのクラフトマンが
効率的に湯を沸かす銅製のボイラーを開発したことに始まります。
1970年代前半にストームケトルの原型が出来上がり、
今もなおイギリスで製造されています。
英国Eydon Kettle Company社は1960年の初頭に
この伝統的なボケーノケトルに着目し、
デザインを一新、近代技術で改良を加えました。
水入れ容器としても利用でき、底に枯れ枝や新聞紙などを入れて燃やすと
ケトルが煙突の役目をして、水が効率よくすぐにお湯になります。
その他利点、使用法、注意点もケリーケトルと同様。
▼パーコーレーター:
ケトルの真ん中にお湯の通り道のパイプがあり
熱湯は上部の篭にあるコーヒー豆に降りかかり
そこが繰り返しコーヒー液の通り道となることで抽出される。
余談だが、旅情を高めるアイテムとして最適なのが
その場でコーヒーを抽出する器具パーコーレーターです。
もともとフランスで考案されたもので、西部開拓時代のアメリカで普及しました。
(一見すると普通のポットのようであるが蓋を開けると
中には運動会の玉入れに使うような篭が入った構造を持つ。)
*なお英語のCoffee percolatorは日本語のパーコレータとは意味のずれがあることに注意。
Coffee percolatorはエスプレッソ用の加圧抽出器も含む用語である。
この煮だす方式のパーコレーターですが、
通常のポットとは違い直火でお湯を沸かしそのままコーヒーを作れる構造で
(中央を貫く支柱部分は足の長い漏斗を逆さまにしたような形をし、
水が沸騰し蒸発すると篭の下の空間の圧力が上がり水面を押し下げ、
支柱の中に貯まっている湯を押し上げる。
支柱の中を押し上げられた湯は間欠泉のように上部から噴き出す。
その熱湯が篭にあるコーヒー豆に降りかかり抽出が行われる。)
粉を通過して抽出されたコーヒー液は下に落ちて、再び下の湯に混ざり、
そして再度支柱から吹き上がり篭内の豆にかかる事を繰り返すことで抽出が進む。
このようにお湯(コーヒー液)が中にあるパイプを伝って循環することによって、
次第に濃いコーヒーになる抽出方法であるため、
高温で抽出するため味わいは強めになり、また香りが飛びやすく、
抽出中蓋のガラス部分から中を覗き色合いを見て濃さを判断するため
どうしてもドリップ式に比べて味の調整が難しいのですが、
そこがこだわりたい方におすすめのアイテムで、
コーヒーフィルターを使わないこと、
構造が簡単なため丈夫で故障も少なくアウトドアに最適です。
むろんお湯を沸かすケトルとしてももちろん使えるので、
ドリップコーヒーを淹れるのにも便利。
ただステンレスの網でコーヒーの粉を漉すためどうしても粉が残りますので、
気になる方は茶漉しを使いましょう。