「まささん仰天する」の巻
「デートの申し込みって……なんでいま時分、ねねさんが日本にいるんだ!?」
「おや、愛しのハングル彼女のご帰宅ですか? なんともこりゃまた、おめでたい話ですな(パチパチ)」
「一緒に住んでねーから帰宅じゃねーし……つーか、あの娘、あっちに行ってからまだ二ヶ月も経ってねーんだぞ。いったい何があったんだ!?」
「突然気が変わったんじゃねーですか? あっちの人間は気紛れで有名でしょ?」
「気が変わったじゃすまねーだろ? こっちにだって都合ってものがあるんだよ」
「ほう。ではその都合というのを詳しく聞かせてもらおーじゃねーですか」
「テメー、いよいよ口調が怪しくなってきやがったな。里帰りした時ぐらい探偵モードから脱出しやがれ!」
「それはそれ。これはこれ。友人の困った姿を見ていると、心の底から助けてあげたくなっちゃうのが、このワタクシの気性なのです。ささ、遠慮なく言うてみそみそ」
「ぐぬぬ……実は、デートに使うカネがないのだ……」
「ハァ???」
「つまりだな、デート資金をまったく用意してないのだ!」
「まささん氏……あの、まささん氏ともあろう者が、たかがデートごときに使うカネがないとは、こりゃまた随分と落ちぶれたもんですなァ」
「やかましい! これでも一応、あの娘がこっちにいる間は、最低でも月二万の予算は計上してたんだぞ!」
「大人のデートで月二万とは、えらく安上がりなカノジョですこと。日本人相手なら、軽くその倍以上は要りますぞ。身なりに食事にプレゼント。学生レベルじゃあるまいし、月二万なんて、ほとんど子供の小遣いじゃないですか。まァ、安く付くという点では、なんとも羨ましくありますが……で、あなたはその貴重な予算をつい油断して使い込んでしまった、と」
「……(頷くまささん)」
「まったく。計算外の事態にパニック起こすのは相変わらずですな。それにしてもその予算、いったいなんに使っちまったんです?」
「クルマのパーツに化けちゃった」
「ああ、言ってましたねェ。確か、足回りの強化パーツでしたっけ?」
「スタビライザーの強化パーツと前後のメンバーカラー……八万以上飛ばしたからなァ……」
「『今後の生涯、女はいらねェ! その分俺は、夢に向かって自由に生きる!』で郵政辞めたら女が出来た、って、そういう星の巡り合わせとしか言いようがないですな。日頃の行いがよほど良かったんでしょう。神仏に感謝してみてはいかがでしょう?」
「もし、その神仏とやらに出会う機会があったら、精魂込めて鉄拳制裁だな」