「ねねさん、ぶりかまを注文する」の巻
(ひとり受付に行ったまささんは、ホテルのスタッフから、いろいろと細かい説明を受けるのでした)
「夕食のメニューは、『鍋』と『ぶりしゃぶ』のどちらかを選んでいただくことになっておりますが、どちらになさいますか?」
「(肩越しに振り向きながら)ねねさ~ん、『鍋』と『ぶりしゃぶ』だって。どっちがいいですか~?」
「『ぶりしゃぶ』てなんですか~?」
「え~とですね、『ぶり』という魚の切り身を煮立ったお湯にささっと浸けて、軽く熱の入ったそれをタレに漬けて食べるんです。『しゃぶしゃぶ』をご存じなら、あのイメージでお願いします」
「わかた! じゃあ、『ぶりしゃぶ!』」
「(スタッフに向けて)だそうです」
「かしこまりました。では、お部屋の説明等については、あちらの席でお話しさせていただきます」
そう言われてまささんたちが誘導されたのは、ホールの休憩スペースみたいなところ。そこで淹れたてのコーヒーと小さな干し柿をセットで出されたまささんたちは、別のホテルのスタッフから、施設の説明を受けることになるのでした。
「夕食のお時間は十九時から。場所は、当ホテルのレストランになっております。ご予約のテーブルには、レストランの者が案内致しますので、よろしくお願い致します」
「了解しました」
「ちなみに、夕食時の追加メニューとして、本日はこちらの品が用意されております。ご希望のものがございましたら、いまこの場にて承りますが?」
「ほー、『お刺身の盛り合わせ』に『ぶりかま』ですか」
「まさちゃん、『ぶりかま』てなんですか?」
「『ぶりかま』というのはですね、さっき言ってた『ぶり』という魚のエラ、つまり、この顔のヨコチョでパクパク動いてる部分のことです。その部分を火に通して出してくれるってわけです」
「! それ、半端なくオイシソー!」
「美味しそうじゃなくって、実際に美味しいですよ。注文します?」
「するする!」
「じゃあ、『ぶりかま』を二人前、追加でお願いします」
「かしこまりました。お刺身のほうはいかがなさいます?」
「そちらもお願いします」
「『ぶりかま』二人前と、『刺身の盛り合わせ』がひとつ、ですね?」
「そうです」
「承りました」
スタッフの方が、さらに話を継続します。
「なお当ホテルでは、女性の方にのみ、使っていただく浴衣の柄を選べるサービスをやっております。対象となる浴衣はあちらにそろっておりますので、よろしければどうぞご自由にお持ちください」
「あー、わたし、この桃色の浴衣がいいです!」




