「まささん、目的地に向かう」の巻
(ねねさんを助手席に乗せたまささんのインプレッサは、一路、目的地の温泉ホテルめがけて走るのでした)
「まさちゃん」
「なんですか、ねねさん」
「あんまり山奥には向かってないね。こんなところに、ホントに温泉なんてあるの?」
「前にも言いましたけど、富山は掘ればお湯が湧く土地です。市街地のど真ん中でも、天然温泉に入れるんですよ」
「ああ、そー言えば、そんなことも言てたよね」
「ねねさんがよく行く、『満○の湯』もそうですし、高岡には天然温泉と岩盤浴の楽しめるラブホまであるんですよ。そんなわけですからご安心ください」
「そうなんですか。納得したね。ところで、まさちゃん。これ見てください(と言って、スマホの画面を提示する)」
「なんですか、これは?」
「わたしの甥子が軍隊のイベントに行た時の写真ね」
そこには、小学生ぐらいの男の子たちが軍服姿の男たちと一緒にご飯を食べている様子が映っていました。
「甥子の学校、こういうイベント、たまにやてるね」
「ああ。そういえば、韓国は徴兵制の国でしたっけ」
運転中にスマホを見ろ、というねねさんの非常識にもなんとかかんとか対応し、まささんはクルマの少ない市街地を、法定速度で流します。
「わたしの甥子、半端じゃなくかわいいね。妹と妹の旦那さんと甥子と、わたし、富山に呼ぶことあるよ」
「ほう」
「食べるもの美味しいし、冬はスキーに連れてくの。まさちゃんは、スノボとかやる?」
「残念ながら、ウインタースポーツはさっぱりやりません」
「そーなの?」
「冬のシーズンにやるスポーツといったら、せいぜい雪ドリぐらいですかね」
「雪ドリ?」
「八尾にあるサーキットで、雪の積もった真夜中に、クルマを横滑りさせて遊ぶんです。もちろん、正式なイベントですよ」
「寒そうですね~」
「いや、マジで寒いです。だから、ここ数年は行ってません」
「そのほうがいいよ。まさちゃんの大事なクルマぶつけても駄目だし」
「ははは」
「でも、冬の温泉は楽しそう。いま向かてる温泉がいいところだたら、わたし、家族をそこに連れててあげようと思う」
「冬のシーズンにですか?」
「ううん。今年の五月」
そうこうしているうちに、まささんのインプレッサは目的地が見える場所まで辿り着いたのでありました。




