「ねねさん、犬を買う」の巻
(温泉旅行の当日。うきうきしながらねねさんを迎えに行ったまささんのガラケーに、突如予期せぬ連絡が飛び込んできたのでした)
「(心の声:おや、ねねさんからだ)もしもし」
「もしもし、まさちゃん? しばらくお時間あります?」
「ええまあ。チェックインまでには全然余裕ありますんで。何かあったんですか?」
「まさちゃん、その場所から右側を見てください。公園のほうです」
「はいはい」
クルマの中から視線を向けると、百メートルほど離れた公園の駐車場で、ねねさんらしき女性が大きくその手を振っています。どうやら「こっちに来い」という意思表示のよう。電話でその旨を確かめると、まささんは彼女のもとへと向かうのでした。
見ると、ねねさんの服装は、これから旅行に行くぞって感じではない、上下ともラフなジャージ。
さらにその両手には、茶色のトイプードルが大人しく抱かれています。
何かを察したまささんが、第一声を放ちます。
「お呼びにあずかり参上しましたけど……ねねさん、そのワンコはいったい?」
「まさちゃん! わたし、犬買たんです。お出かけする前に散歩させてウンコさせないと駄目だから、一時間ほどいいですか?」
「はァ。全然OKですよ。(心の声:でも一応、ホテルのほうには連絡しとこ)」
「このコ、名前は『テバ』ていいます! めっちゃ賢いよ!」
「『テバ』?」
「『手羽先』のテバです!」
「さ……さようですか」
日本人離れしたネーミングセンスに唖然とするまささんなのですが、そんな彼には見向きもせずに、ねねさんはテバと一緒に歩き出します。
「子犬ですよね」
「まだ生まれて半年しか経てないです。だから、全然落ち着いてないね。部屋の中でも、悪戯ばかりするよ」
「そりゃそうでしょうね」
「でもわたし、犬躾けるの上手。叔父さんの家に『ペク』て大きな犬飼てるけど、あのコもわたしが躾けたよ。良かたら、まさちゃんのことも躾けてあげるよ!」
「その時になったらお願いします」
「おけい!」




