「ねねさん、カミングアウトする」の巻
(さて、いつものごとく食事の前に宿泊施設にしけこんだまささんとねねさん。まささんは、持ってきたリングケーキを、ここぞとばかりにねねさんの前で披露します)
「(大きく目を見開きながら)うわァ、おっきなケーキですねェ! いくらぐらいしたんですか?」
「三千円とちょっとです。まあ、せっかくのクリスマスなんですから、こういうのもありでしょう(心の声:初めはショートケーキで済まそうとしていたってことは伏せておこう)美味しいって評判のお店で買ってきたんですよ。ささ、遠慮なくがばっとやってください。あえて切り分けはしません」
そう言ってまささんは、プラスチック製のスプーンを取り出しねねさんに渡します。
「ねえ、まさちゃん。白いの、これ、全部生クリムだよね?」
「もちろんです。いったいなんだと思ってたんですか?」
「ムッ! 生クリムだてことぐらいは、わたしだてわかりますよ!」
「?」
「問題はそこじゃなくて、これが生クリムだてことです!」
「はァ」
「まさちゃん、実はわたし、甘い物食べられないです」
「なんですとッ!」
「だから、お砂糖いぱい入った甘いケーキは食べられないです」
「(心の声:そ、それを早く言って欲しかった!)」
「というわけなので、このケーキ、まさちゃんひとりで食べて下さい」
「ファッ!」
「ささ、わたしに遠慮なく食べて下さい! その代わり、わたし、熱いコーヒー入れてあげますね。わたしの入れたコーヒー、めっちゃ美味しいですよ~」
「で、ではお言葉に甘えて……」
ケーキにスプーンを突っ込みつつ、「柄にもないことしなければよかった」と後悔に嘖まれるまささんなのでありました。
「(心の声:でも美味しい。ぱくぱく)」




