「まささん、ケーキを買う」の巻
(とうとうやってきたイブ当日。まささんは、ねねさんにあげるケーキを買うべく、お気に入りのケーキ屋さんへ足を運ぶのでした)
この日、まささんがやってきたのは、まささんの古巣(郵便局)の真ん前にあるとあるケーキ屋さんでした。
個人経営の小さなお店ですが、美味しいことで評判の知る人ぞ知る名店です。
人気のあるのはシュークリーム。
しかし今日は、それが目的ではありません。
「(心の声:さて、あまり大袈裟なのもあれだし、今日はバージョン多くするためにもショートケーキを数多く買っていこう──って、アレ?)」
ふと見ると、陳列台に並んでいるケーキはどれもこれもがリング型の物ばかり。
まささんが求めているショートケーキの類は、ひとつたりとも並んでいません。
「(心の声:はて? いつもはこんな感じじゃないんだけどな)すいません、店員さん。ショートケーキは置いてないんでしょうか?」
「もうしわけございません。本日は、ショートケーキを置いてないんですよ」
「なんですと!」
まあ、言われることはごもっとも。
なんと言っても、今日はケーキの消費が一年のうちで最大量となる日です。
個人経営のお店としては、売れ線のリングケーキに全力投入するのもやむを得ないというわけです。
「(心の声:ちッ、仕方ないなァ)じゃ、じゃあ、このミドルサイズの白いの下さい」
「お買い上げありがとうございます! 痛みやすいので、早めにお召し上がり下さい」
「ああ、たぶん今日中に食べちゃうと思うのでご心配なく」
保冷剤と一緒にケーキを箱に入れてもらって、それを片手に退出するまささん。
気のせいか、その足取りは軽いです。
ですがこの時のまささんは、自分の買った白いケーキが予期せぬギャグを演じることになろうとは、まったく思ってすらいなかったのです。




