01-b1
優しく甘い匂いが鼻孔をくすぐる
「あ〜ん」
女の子がスプーンを差し出してくる
あれ?誰だっけこの子?
何か、大切なことを忘れているような・・・
「あ〜ん(はぁと)」
戸惑っていると、女の子が再びスプーンを差し出してくる
「あ〜ん」
俺はそのスプーンを口に含むと・・・
"ガリッ"
「ギャアアアアアアアァァァァァ!!!!!」
絶叫と共に俺は飛び起きた
痛い!尻尾が痛い!
まるで誰かにかじられた様に!
ん?尻尾!?
ハッとして自分の体を確認する
ぷにぷにとした肉球
すべすべでつやつやの毛並
そして、ちょっと血の滲んだふわっふわでもこもこの尻尾
「うん、完璧などうぶつだ!」
俺はその場で突伏したorz
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「コレは夢、コレは夢、コレは夢、コレは夢、コレは夢、コレは夢、コレは夢」
何度も自分に言い聞かせるが、しっぽの痛みが俺を現実に引き戻す
「何でだ・・・一体どうしてこんなことに・・・」
よろよろと立ち上があると、あたりを見回す
「なんじゃこりゃ・・・」
そこには、信じられない光景が広がっていた
そこは、まるで子供部屋だった
今俺がいるのは、ベッドの上に置かれた箱の中
下にはハンカチのようなものが敷かれている
周りには、クローゼットや本棚、学習机などがあり
ご丁寧なことに机の上には、赤いランドセルまで乗っていた
だが、問題はその大きさだ
その全てが、どう考えても通常の5倍から6倍はあるのだ
子供の頃に読んだ、ある物語が頭をよぎった
巨人の国迷い込んだ男の物語だ
「いや…まさかな…」
そんなことを考えていると、どんどんと振動が近づいてきた
そして不意に部屋のドアが開く
全身の毛が逆立つ
そこから現れたのは・・・
数メートルはあろうかという、巨大な"女の子"だった