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へべれけ!  作者: へべれけ
第1話
3/72

01-a2

風が頬を撫でる

気がつくと俺は森の中にいた


「こ、ここは?」


よろよろと起き上がり、辺りを見回す

数十メートルはあろうかという大木がたち並び

背丈ほどもある草がそこら中に生い茂っている


「おいおいおいおい・・・どうなってるんだよ、これ・・・」

しばらく呆然としてその場に立ち尽くす


まだ意識が朦朧とする中、妙に鋭くなった嗅覚がそれを捉えた

"水の匂いがする?"


取り敢えず水の確保はサバイバルでは最優先だ

おぼつかない足取りで歩きだす


草を掻き分けて匂いのする方向に進むと

大きな水たまりの様な水深の浅い池があった


"飲める…かな?"

よろよろと水辺に近寄り、水面を覗いた瞬間、そこには化け物のようなモノの影が映っていた


「ギャアアアアアアアァァァァァ!!!!!」

俺は慌ててその場から逃げ出した!


しばらく走ったあと、息が切れて一本の大木のそばで立ち止まり、息を荒らげながらも周囲を見回して警戒する

幸いあの化け物が追って来る様子はない


「なんだっていうんだ・・・本当になんだっていうんだよ・・・」


呼吸が整ってくると、安堵とともに涙が込み上げてくる

俺は頭を抱えてその場にうずくまった


頭に感じるぷにぷにとした感触が、少しだけ心を落ち着けてくれた


"こんな右も左もわからない場所で・・・

あぁ、俺はこれからいったいどうした───"






「・・・ん?ぷにぷに?」


恐る恐る自分の手を見る

そこには、ちょっと指の長い猫の手のようなものがあった

手のひらの部分には"ぷにっ"とした肉球が付いている

とりあえず、反対側の手の指で肉球を押してみると、ぷにぷにとした感触が心をなごませる


ぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷに


「あぁ…癒されるぅ〜って、現実逃避しとる場合か!」

改めて自分の体を見回すと、全身がふわふわの毛に覆われていた

特にしっぽはふわっふわのもこもこで、こんな状況でなければ、1日中撫で回していたい程だ


とてつもなく嫌な予感がして、俺は水の匂いを探した

そしてソレを見つけると、俺は一目散にその場へと向かった



















俺は今、池のそばにいる、ついさっき化物の様なモノの影を見た場所だ

意を決して一歩踏み出し、水面を覗き込むと・・・

ソレはやっぱりそこにいた


大きさを除けば、まるでフェレットのように見えるソレは

俺が手を上げると、手を上げ

俺が足を上げると、足を上げた

軽く尾を振ってみると、当然ソレも尾を振った


うん、判ってた

判ってたよ・・・



2、3回深呼吸をした後、思いっきり息を吸い込む


「なんじゃこりゃあああああぁ!!!!!」

俺の絶叫が森の中にこだました




━━━━━━━━




状況を整理してみよう


1.泥酔した俺は事故にあったらしい


2.その後、光る羽虫にこのフェレットみたいな体にされて


3.森の中で絶賛放置プレイ中…



「ヤベェ…状況以前に意味が判らねぇ」

とりあえず責任者を呼び出してみる事にする


「羽虫さ〜ん、お客様の中に羽虫さんはいらっしゃいませんか〜?」

「羽虫さ〜ん、怒らないから出ておいで〜」





へんじがない、せきにんしゃはふざいのようだ



判ってた、うん判ってた


"フンフン"



大体、呼んだらすぐに出てくるなんて、そんな都合よく行くわけないよな


"フンフン"



ダメだ…心が折れて考えがまとまらねぇ


"ハッハッハッハッ"



「ってか、さっきから何なんだよ!」

そういって振り向くとそこには、巨大な犬のような化物がいた




━━━━━━━━━




「だあああああぁぁぁぁぁ!!!!!」

絶叫と共に森の中を駆け抜ける!

背後から迫る気配は確実に距離を詰めてきている


「ちくしょう!ちくしょう!ちくしょう!!!俺が一体何をしたっていうんだ!?」

草をかき分け茂みの中に飛び込む


「俺なんか食ったってうまかねーぞ!!!」

地面と茂みの間をくぐり抜けその先へ飛び出す


茂みの先にあったのは広い草原だった

だが何かおかしい、違和感がある

その違和感の正体にすぐに気づいた、人工物としか思えない構造物があったのだ


走りながら見渡すと、細く高い塔のような構造物が草原の周りに幾つか見えた

そして今、俺が走っている先には四角く巨大な、まるでビルのような構造物があった


"あの中に入れば、助かるかもしれない"

俺は、残っている力を振り絞り、全力でそのビルのような構造物へと向かった




そこに待っていたのは絶望だった

その四角い構造物には入り口がなかったのだ

必死であたりを見まわすと、四角い構造物と地面の間に隙間があった

俺は迷わずそこに飛び込む


中はうだるように熱く、騒音が響き渡っていたが、幸いなことに化け物は大きすぎて、隙間には入ってこれないようだった


だが、そいつは唸り声を上げ、俺をここから引きずり出そうと、手足や鼻先を隙間の中に突っ込んでくる


"もうダメだ"そう思ったとき


「こら〜!君は一体何をしているのかな!?」

あたりに場違いな声が響いた


するとその化け物は、慌てたようにどこかへと逃げ去っていった


だがそれは、俺を安心させるものではなかった

なぜならもっと大きな何かが近づいてきたからだ


「まったくもう!この下に何かいるの?」

かがみこむようにして、隙間を覗いてくるソレと目があった

その瞳はとても深く澄み切っていて、俺はその中に吸い込まれるように意識を手放した


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