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前編

俺はどこにいて、何を目指して、どんな早さで進むのか…。

もしかしたら進んでないのかもしれない、それでも、今はひたすら前に進む。彼女と生きていくために。



6year ago

「こら伊座凪!お前また遅刻しやがって!」

「いった…すんません杉田さん…」

ここはカイム養成所第八支部、ユニット8の直属にあたる養成所だ。この人は杉田さん、現カイムユニット8の部隊長だ。

「お前本当に朝弱いのなぁ」

「うっす、朝は嫌いっす!」

「嫌いっす!じゃねえ!!」

「いってぇ?!」

俺は伊座凪由貴、21歳。まだまだ少年の心忘れぬ男の子だ!

俺は今バイトをしながらカイムの養成所に所属している。

将来の夢っていうのはこのカイムのユニットのリーダーになって、世界のテロを無くすこと。

俺は高校を卒業してから大学に入学したが、すぐに大学で爆破テロの事件が起きた。

知り合い程度の顔見知りはいたが、特に親しい人間がいたわけでもなかったけど、未来の入り口にあたる部分を潰されてしまっているわけで、それが許せなくて大学をすぐにやめてカイム養成所に入所した。

もうすぐ入隊検定の時期で、これで認められたら晴れてカイムのユニット(部隊)に所属することになる。ちなみに、対テロ任務なんてのがもらえるのは、もっと熟練しないとダメなんだけど…。

「由貴くん、また遅刻…でも、今日はなんかいいことありそうだね」

「さや…」

この子は小峰サヤカ・レインエイジ。訳アリでカイムの所有する施設にいる子だ。そして、俺の彼女でもある。

「いや、昨日急に欠勤でてさぁ、残業で結局帰ったの夜中の3時だったんだよ?」

「うわ…それはおつかれさま…」

「でも、さやに会ったからなんとか生きてる…それに、さやの占いはあたるからな」

そういってさやの肩に手を回そうとして

「教室内」

そういってぺしっと手をはたかれた。

俺は、この子のために、一緒にあるく未来のためにこの道を進むと決めたんだ。


そして三日後、試験を前日に控えた日の夕方、杉田さんに呼び出された。

「なんですか杉田さん」

「明日の試験なんだけど、お前受けなくていいぞ」

「…え?!なんでですか!俺には…才能はないですか?確かに遅刻ばっかしてますけど…」

「あー、そういや常習犯だよな、忘れてた…でも、そうじゃない。お前には違う試験を受けてもらう」

「違う試験…すか?」

「あぁ、これで合格すればユニット8のサブリーダーに迎えてやる、落ちたらどっちにしてもうちで新米として入隊してもらうがな」

「え…え?!まじっすか?!」

「あぁ、これはお前の頭の回転の早さと白兵戦技術を買っての特別な措置だ。俺は、お前に早く実践慣れしてほしくてな」

「了解っす!試験はどこで受けりゃいいですか?」

「明日、ユニット7のサブリーダー試験に該当される任務がある、お前はその任務にあたってもらう…ちょうどあちら側で欠員がでてな、その補充だ」

「では、現地のデータだけ、お願いします!」

こうして、俺は唐突にサブリーダー試験を受けることになった。

夜、そのことをさやに話すと

「ん…なんだか、うまく行く気がするよ」

そう言ってもらえた、俄然やる気もでるってもんだ。俺は、なんとしても彼女と二人で生きていくために、この試験を突破して見せる、そう決意した。


試験当日、俺はあらかじめ指定されたポイントに指定された系統の武装、もっとも使い慣れたものを用意して挑んだ。

「これで全部だな、俺はユニット7サブリーダーの安岡だ、訳あって俺は現場から去ることになったため、サブリーダーの任命にふさわしいやつを選出するために今回の場を用意した、お前たちの検討を祈る。それで、任務内容だが…」

内容はいたって簡単、テロ容疑のかかった二人組の男を生かしたまま捕獲するというものだった。

安岡さんを別にして組まれた四人一組だったが、他二人は手柄に走り重症を負いながらも一人捕獲、俺は残りの一人と協力し、無傷で目標の捕獲に成功した。

そしてベースキャンプに戻ったとき、そこにいる人物に驚愕した。

「おぅ、お帰り伊座凪、なかなかうまく出来たみたいだな」

「杉田さん?!なんでここに…ところで、とらえたもう一人は…」

「捕獲対象は変装した俺と、そこのユニット7のリーダー、ルイン・オットーだよ」

「え?」

俺は焦り後ろを振り替える、すると、繋がれた手錠と鎖は切られ、男が被っていたフードが剥ぎ取られ…。

「そうだよ、僕はルインだ、任務成功ご苦労様、伊座凪君と武田くん」

「な…どーゆうこったぁ!!」

俺は訳がわからず叫んだが、声は澄んだ青空に飲まれて消えていった。


…今回の任務は、実地での危機意識と、実践の感覚をつかんでもらうためのレクリエーションだと、あとから教えてもらった。ちなみに今回の件で俺と、共闘した武田は晴れて各ユニットのサブリーダーに任命された。


俺がサブリーダーに任命されてから三ヶ月ほど過ぎた。


「感応力者?」

「あぁ、小峰サヤカの能力、近い未来を感じることができる能力だ」

「それは俺にも思い当たる節はありますけど……それがどうかしたんですか?」

「一言でいうと、狙われているんだ」

「え?誰にですか」

「無名のマフィアだ。だが、首謀者の顔は割れた」

そういって、杉田さんが俺に写真を見せてくれた。

「名前はアンダグ、最近立ち上がったばかりで名前のないチームを率いている。なぜ小峰の能力が割れて狙われているかはわからないが」

「だったら、俺が絶対護ってやります」

「ま、お前の事だからそういうと思ってたよ、リンドウさんも、今回の案件については、俺たちはできるだけサポートにまわってやってくれって言われてるしな。自分の女一人守れずに、民間人を守れるものかってね」

「さっすがリンドウさん!男の心わかってる!」

俺自身、戦闘力には自信がある、それはリーダー採用をされていることから、より確実な自信になっている。

その慢心が、すべてをダメにしてしまうなんて思いもしなかった。


「って、ことだからさや。しばらくは気を付けてな」

「う、うん。なんだか最近変な感じがしてたのはそういうことなんだ」

「……やっぱなんか感じてたんだ」

「うん、不安にさせたくないから黙ってた」

「ばっか」

俺はそういってさやの頭を撫でる。

「心配すんな、絶対、何があっても俺が護ってやるから」

そして三日後、事件は起きる。



影に包まれて顔のわからない男……声は普通に聞こえるので性別はわかったが……から依頼を受ける。

「それで、その女と、もしいたらこっちのガキも殺せばいいんだな?」

「そうだ、確実に女を仕留めるのだ、報酬は先ほどの額面、現金で用意しよう」

「くっくっ…こりゃ楽な仕事だ、ただの女一人殺すだけでこんな大金が…しかしまぁ」

送られてきた依頼書、その写真に写ってる女を見ながら男は一言。

「ちょっと遊んでからでも遅くはないよなぁ…ひっひっ」




俺は朝突然かかってきた電話で目を覚ました。

「もしもし…さや?どうかした?」

「…由貴くん、今から来て欲しい…んだけど…」

さやから呼び出されるなんて、珍しい。俺は気になってすぐに家をでて、さやに会いにいった。


ユニット8の指令所近くの寮、そこにさやは住んでいる。俺の家からはだいたい徒歩で10分ほど、かなり近い。


「さや、来たけど…どうかした?」

最早さやの部屋に上がる際はノックもなにも無し、合鍵で鍵を開けて上がり込む。部屋の真ん中の小さな机のところにすわるさやは、いつも以上に小さく見えた。

「なんだか、すごく嫌な予感がして」

「それで、不安になったんだ」

「うん」

「大丈夫だから」

一言いって近くまでいって、俺は優しくさやを抱き寄せる。

そのまま、短い時間がすぎた。

「……?!」

複数の足音、しかも、聞き覚えのある特殊ブーツ、いわゆる俺たちの作業着用の靴の音だ。これをはいてるのは同業者あるいは。

近くまで来て足音がとまる。

「……ん?由貴くん?」

「は……伏せろさや!!!」

俺はさやを突き放し、持ち歩いてる仕事鞄に手をつけ、武器を引き抜く。

それと同時に、さやの部屋の扉がぶち破られる。

「時間はかけるな、女はできる限り生かせよ」

「うぃーっす」

「はいはい、うまくいったら後でまわしてくださいよ?」

三人組が乗り込んでくる、ひとりは見たことある顔だ、先日杉田さんに見せてもらった、アンダグだ。

「くそが……!!」

俺は油断してる男二人の頭を手にした武器、USPで撃ち抜く。

「うぉ……なんだあのガキもいたのか……!」

「やらせない、ぜってぇ殺す!!」

俺は珍しく物騒な言葉を吐き捨てながら、横っ面に蹴りを浴びせる。

「うぉ……」

「終わりだ」

俺はそういいながらよろける奴の体に銃弾を打ち込む。すぐには殺さない、俺の女に手を出そうとする愚か者には相応の苦痛を与えてやる。急所は特に狙わず胴に3発、足にのこりの2発を打ち込む。

そして、そのまま倒れこんだところで腕をつかみ、へし折った。

「が……っ?!」

アンダグは驚いた表情を見せた。

俺は次に部屋のベランダを開いて、奴をそこまで引きずっていく。

「え?由貴くん……それは」

「大丈夫、すぐ終わる、それに、下は川だから溺れて死ぬだろう」

だから、俺が殺すんじゃない、大丈夫。

そんな言葉にならない言葉を口のなかで転がしながら俺はその物体を投げ捨てた。

あぁ、俺は何をしてるんだろう?と自問自答をしながら懐のたばこを取り出す。そのままベランダで火をつけて一服しながら、これでしばらくは大丈夫、そう思っていた。


その日俺は、特に言葉も交わさずさやの部屋から出ていった。

その二日後、またさやから電話がかかってきた、時間は深夜2時、そろそろ寝ようと思っている時だった。

「はぁ……はっ…助けて…追われてる…由貴くん」

電話に出た開口一番がそれだった。それも、切迫した様子で、俺は微睡みかけていた頭に氷水を流し込んだかのように冷たく冷えていく。

「さや…どこ?」

「私…今、二丁目の公え…」

そこまでいって電話が突如切れた。

「二丁目の…公園!」

家からだとどう頑張っても20分かかる、もちろんそれは自分の足の場合だが。

俺はとりあえず仕事用のジャケットだけはおり、家を出た。

「伊座凪!小峰サヤカがいなくなったの聞いたか?!」

ちょうど家をでたところで杉田さんに遭遇した、俺は上官の問いかけを無視して叫んだ。

「バイク、貸してください!!」

そこからは一瞬だった、杉田さんに乗せてもらい、最強を謳っていいのではないかくらいのライディングで目的地の公園まで送ってもらった。

「何かあると不味い、俺は応援を呼んでくる、五分くらい一人で持ちこたえろ!」

「了解っす」

俺はそのまま夜の公園に突入する。

「由貴くん!」

すぐにさやに出会えた。俺は安堵して一気に緊張を緩めてしまった。もちろんそれを見逃す敵でもなかっただろう。

銃声が響く、本当に、ほんの一瞬、反応が遅れてしまい。

「うあっ…」

俺は奇跡的に体を少しそらせたため、致命傷は回避できたが右肩を撃たれてしまった。

「由雪くん…とんで!!!」

めったに大きな声を出さないさやが叫んだ。からだが条件反射で地を蹴る、その刹那に、俺のいた場所はサブマシンガンで掃射された。

「ぐ…おらぁぁああああっ!!」

普段めったに使わない重火器、カイム特性のパレットマシンガン(薄く折り畳めるマシンガン)を弾の限り放つ。

「ぐぉ!」

「ぬぁあっ」

どうやら茂みに潜んでいた何人かには命中したようだ。

「後ろ!まだいる!」

さやがまた叫ぶ、俺はそれに反応して後ろを撃つ。

茂みから小さく呻き声が聞こえて、公園の中の殺気は消えた。

「さや…」

「ゆきくん…」

「大丈夫か」

「うん」

俺は嬉しくなってさやを抱き寄せようと肩に手を置いたとき、視界の隅で光るものを見つける、その光は一瞬だった、ビルの窓が月明かりに反射したのかと思ったが、ちがう。俺は知ってる、狙撃兵対処の訓練の時に味わったあの、何処からともなく見られている嫌な感覚。

「………さやっ!!!」

俺は肩に置いた手をそのまましっかりつかみ、そして体をしっかり抱き寄せ横に跳ねた。

タンッ!と、銃弾が後ろの地面を擦る。

だが、少し無理をしたようで、右肩に激痛が走る。

「ぅ……おおおぉぉぉぉぉぉぉっっ!!!」

俺は雄叫びをあげながら、光の元へ銃弾を打ち込む。

マシンガンが、狙撃のレンジに届くはずがない、それは間違いだ。これは特別製、レンジは並みの狙撃銃のレンジにとどく。

少しの間をおいてから遠いビルの窓ガラスが割れだす。

俺はその時しっかりと見えた、ターゲットがガラス片の雨に飲まれるのを。

ここまで、なんとかラッキーで対処できている。

このまま逃げ切れる、そう確信できた。そんな刹那のさやの表情は、今まで以上に曇っていた。

「さや、早く逃げよう……」

「ごめん……なさい……」

「さや?」

「……まったく、熱いところを見せつけてくれるな」

ふいに後ろから声をかけられて反応できなかった。

ライフルを握った手を撃たれてしまい、俺は武装を解除されてしまう。

「まったく、全身がお前のお陰でぼろくず同然だったよ」

「アンダグ……!!」

「あのときのお前の狂気、今は感じられないが……どちらにしてもお前たちの存在は厄介だ。ここで死んでもらう」

ぱすっ、ぱすっ、ぱすっ……ぱすっ…。

四発、放たれた。

「ぐぁ…」

生身の体に3発、しっかり俺の体を穿つ。

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